あの街の素顔

オーストラリア・ケアンズ、森の世界遺産モスマン渓谷で太古の息吹を

オーストラリア北東部に位置するクイーンズランド州の中心都市ケアンズ。目の前の海は世界最大のサンゴ礁「グレートバリアリーフ」を望み、街の背後には「クイーンズランドの湿潤熱帯地域」で世界最古級といわれる熱帯雨林が広がる。どちらも世界遺産に登録されている貴重な自然だ。

ケアンズから車で北に1時間30分ほどのところにあるデインツリー国立公園の熱帯雨林は、太古にあったとされる巨大大陸のゴンドワナ大陸に起源を持つといわれる。その一部を形成するモスマン渓谷は先住民族であるクク・ヤランジ族が所有する特別な地域。一部は一般開放されているが、そのほとんどは彼らの案内なしでは立ち入ることが出来ない。クク・ヤランジ族の伝統的な生活や文化を体験できる施設「モスマン・ゴージ・センター」のアクティビティー「ドリームタイムウォーク」に参加した。

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(文・写真・動画/鈴木博美)

全てが美しい森で、先住民の英知に触れる

オーストラリア・ケアンズ、森の世界遺産モスマン渓谷で太古の息吹を

ビジターセンターで手続きをすませると、ちょっぴりこわもてのガイドのクク・ヤランジ族のロイさんとともに出発。ここから先は一般車両の進入は不可。専用シャトルバスに乗って散策路の入り口まで行くと、体長20センチほどのボイドモリドラゴンという大きなトカゲが木につかまったまま微動だにせずに出迎えてくれた。ここでクク・ヤランジ族の伝統的な悪霊を取り払うという煙の儀式が行われ、彼らの聖地である森の中へと入る。

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モスマン渓谷の森と共存してきたクク・ヤランジ族は、木の皮や葉っぱ、草花など何百種類もの植物を薬効によって使い分けてきたとガイドのロイさんは話す。そしてけがや体の痛みに効くという植物の伝統的な使用法、食べられるかどうかなどサバイバル術を伝授してくれる。石で板根(ばんこん)をたたいて音を出し、自分がいる位置を知らせる、遠方にいる仲間への連絡方法も実演。森で迷子になったときの術だ。

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文字を持たなかったクク・ヤランジ族を始めとするオーストラリアの先住民族は、洞窟の壁や岩に絵を描き、厳しい自然環境を生き抜くために必要不可欠なことなどを伝承してきた。その際に使用された「オーカー」と呼ばれる染料は、岩や粘土から採取され、壁画の他に踊りや儀式に使われたそうだ。赤い色は一族を表し、黄色は太陽、白は魂。この色素を採取する場所は決まっていて、ほかの部族ともしばしば交換された。腕に描かれたドットは雨を表している。

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ロイさんが「ソープリーフ」と呼ばれる葉を水につけてゴシゴシもむとあっという間に泡が立つ。ボディーペイントの色素を落とすせっけんだ。こうした生活の知恵は「ドリーミング」と呼ばれ、先祖代々受け継がれてきた。

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そんなモスマン渓谷は熱帯雨林地帯だけに一年の大半が雨。湿度は平均80%を超える。しかし、植物の匂い、雨粒が葉に落ちる音、時折差し込む太陽の光、全てが美しい。

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「ドリームタイムウォーク」は1時間30分ほどのガイドツアーだったが熱帯雨林の森を十分に満喫できる。クク・ヤランジ族の人々は現在でも祖先から受け継いだ狩猟採集の知恵を使いながら生活している。彼らの英知を、現代を生きる私たちの視点で見つめることは、とても意味のあることだと思う。

オーストラリア・ケアンズ、森の世界遺産モスマン渓谷で太古の息吹を

モスマン渓谷にはガイドを付けず各自で散策出来るトレイルコースもある。ケアンズから少し足を伸ばして太古の森の息吹を感じに訪れてみてはいかがだろう。

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モスマン・ゴージ・センター

住所:212r Mossman Gorge Rd, Mossman Gorge QLD 4873 Australia
営業時間:8:00~18:00(ビジターセンター)
入場料(シャトルバス利用代含む):大人11.8ドル、5-15才5.90ドル、
ファミリーパス29.50ドル(大人2+子供2)
シャトルバス運行時間:8:00~17:30

 

「ドリームタイムウォーク」
所要時間:1時間30分
出発時間:毎日 10:00, 11:00, 12:00, 13,00, 15:00
料金:大人78ドル、5~15才38.5ドル
ファミリーパス:194.5ドル(大人2+子供2)
歩きやすい服装での参加が望ましい。
■取材協力
ポートダグラス コネクションズ
クイーンズランド州政府観光局
ケアンズ観光局

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 鈴木博美

    旅行業界で15年間の勤務を経てフリーの旅行家に。旅を通じて食や文化、風土を執筆。日本航空機内誌のほか、新聞雑誌等に海外各地の旅の記事を寄稿。著書に一人旅に役立つ電子書籍「OL一人旅レシピ」インド編、カンボジア・ベトナム編、エジプト編、世界中のおいしい料理をおうちで作る「いつもの食材で作る世界の料理レシピ」。ブログ「空想地球旅行」で旅のあれこれを発信中。

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