魅せられて 必見のヨーロッパ

2ユーロで0ユーロを買う? 平和の象徴 ルクセンブルク・シェンゲン

ツアーの行き先としてはあまりメジャーではないけれど、足を運べばとりこになってしまう。そんなヨーロッパの街を、ヨーロッパを知り尽くした作家・写真家の相原恭子さんが訪ねました。今回はルクセンブルクのシェンゲン。加盟国域内は出入国審査なしで自由に国境を往来できるシェンゲン協定締結の地です。なんと、2ユーロ出して0ユーロを買う?という体験も。

欧州の金融センター、来春から公共交通機関が無料に

ルクセンブルクはフランス、ドイツ、ベルギーと国境を接し、国土面積は神奈川県より少し広い2,586平方キロという、小さな国。国家元首はルクセンブルク大公で、正式名称はルクセンブルク大公国です。

2ユーロで0ユーロを買う? 平和の象徴 ルクセンブルク・シェンゲン

ルクセンブルク市の風景。旧市街と要塞(ようさい)はユネスコ世界遺産に登録されています

古城のような左端の塔のある建物は「銀行博物館」、その右側の建物は銀行、堂々とした橋はアドルフ橋です。ルクセンブルクは、ヨーロッパの金融センターともいえる地位を確立しているリッチな国。

2019年1月21日付けのフランソワ・バウシュ交通・公共事業大臣の談話によれば、2020年3月1日から、国内の公共交通機関無料化が実施されます。1等車両は有料にするかなど検討中ですが、私たちツーリストとしても、バスなどのチケットの買い方や小銭の用意などを気にせずに、気軽にホップオン、ホップオフできますから非常に便利になります。

「シェンゲン協定」締結は船の上で

2ユーロで0ユーロを買う? 平和の象徴 ルクセンブルク・シェンゲン

ルクセンブルク市から約36km離れたシェンゲン。モーゼル河畔ののどかな村です

ドイツ、フランスと国境を接するシェンゲンを訪ねました。日本人にはなじみがないかもしれませんが、ヨーロッパ人の意識を知る上で重要な場所です。

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シェンゲンの対岸はドイツとフランス

街を案内してくれたのは、「シェンゲンasbl」(asblは非営利団体の意味)のディレクター、マルティーナ・クナイプさんです。「ドイツ語で話してもいいですか?」と聞くと、「もちろん。私はドイツ人ですよ!」とほほ笑みました。国境を越えて、シェンゲンへ通勤しています。

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クナイプさん

クナイプさんによれば、1985年6月14日に「シェンゲン協定」が目の前のモーゼル川のルクセンブルク領内で、ルクセンブルクの王女の名前を冠した観光船「プリンセス・マリー・アストリッド号」の船内で調印され、1995年から施行されました。フランス、ドイツ、ベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)の間で出入国管理を撤廃するという内容でした。

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1985年の「シェンゲン協定」調印の様子が展示されています

クナイプさんは「ミッテラン大統領もコール首相も、この調印式には参加していません」と、市民レベルの協定であることを誇らしげに強調。政府の計らいではなく、人々の意識が調印にこぎつけたと言います。現在、26カ国が加盟。「平和でなければこの協定は存続しません。根底にあるのは、私たちの平和への願いです」とクナイプさん。

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旧東西ベルリンの壁を展示

国境のコントロールの厳しさへの戒めとして、旧東西ベルリンの壁がここへ運ばれ展示されています。

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3本の柱はドイツ、フランス、ベネルクスを意味しています

この地域では20世紀初頭まで鉄鋼業が盛んだったことを象徴して、3本の柱は鋼鉄で造られています。

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ミュージアム

屋外展示のほか「ミュージアム」があり、過去の出入国管理の様子や「シェンゲン協定」について展示されています。

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平和を願い、記念に鍵を掛ける塔

ここには平和を願い、記念に鍵を掛ける塔があります。ドイツからの見学者たちが、自分の名前を書いた鍵を掛けていました。いつでも誰でも、気楽に行き来できる国境でありますようにと祈りながら、私も掛けさせてもらいました。

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私が掛けさせてもらった鍵

2ユーロ支払って、0ユーロを買う?!

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ドイツとフランスの国旗が描かれた小さな小屋

対岸のフランスとドイツの国境付近を車で走ると、不思議な小屋を発見。中へ入ってみると、ドイツ語、フランス語、英語の書籍が並んでいました。中にいた女性に「ここは書店ですか?」とドイツ語で聞くと、「ドイツ語わかりません。私はフランス人!」とフランス語で答えが返ってきました。このカラフルな小屋は、読まなくなった本を置いてゆくと、読みたい人が持って行くという合理的なリサイクル図書館です。

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お土産用の0ユーロ「紙幣」

記念にヨーロッパのミュージアム・シェンゲンと書いてある0ユーロ「紙幣」を買いました。価格は2ユーロ。隣にいたフランス人観光客が「2ユーロ払って、0ユーロを買うの?」と笑っていました。

歴史的に見ると、幾多の国境変遷や戦争が起こったヨーロッパ。少しでもうまく折り合いをつけながら、多国間で平和を保ちたいと願う人々の心を感じました。

「ルクセンブルク貿易投資事務所 」
https://www.investinluxembourg.jp/ja/

「VISIT LUXEMBOURG」
http://www.visitluxembourg.jpn.com/jp

「VISIT SCHENGEN」
https://www.visitschengen.lu/en/

「SAKURA VOYAGE」
https://sakura-voyages.eu/

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PROFILE

相原恭子(文・写真)

慶應大学卒業。ドイツ政府観光局勤務を経て、作家&写真家。「ドイツ地ビール夢の旅」(東京書籍)、「ドイツビールの愉しみ」(岩波書店)、「ベルギー美味しい旅」(小学館)、「京都 舞妓と芸妓の奥座敷」(文春新書)、「京都 花街ファッションの美と心」(淡交社)、英語の著書「Geisha – A living tradition」(フランス語、ハンガリー語、ポーランド語版も各国で刊行)など著書多数。国内はもちろん、国際交流基金・日本大使館の主催でスペイン、ハンガリー、エストニアで講演会や写真展多数。NHK「知る楽」「美の壺」、ラジオ深夜便「明日へのことば」「ないとエッセー」、ハンガリーTV2、エストニア国営放送など出演多数。
https://blog.goo.ne.jp/goethekyoko

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