クリックディープ旅

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。過去「12万円で世界を歩く」や「玄奘三蔵が歩いたルートをたどる旅」など過酷な?テーマのシリーズでお届けしてきました。

今回のテーマは「台湾の超秘湯旅」。6回目で、一度帰国した下川さん。7回目は、高雄国際空港からスタート。枋寮(ファンリヤオ)、土坂温泉、金崙(ジンルン)温泉郷、金峰温泉を経由して、知本温泉を目指します。

はたしてどんな秘湯や珍道中が待っているのでしょうか? もはや生き様ともいえる旅のスタイルや、ひょうひょうと、時にユーモラスに旅を続ける様子を温かいまなざしでお楽しみください。

【前回「嘎拉賀野渓温泉から台北へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅6」はこちら

(文:下川裕治、写真・動画:中田浩資)

台風の土石流が台湾南東部の超秘湯を消滅させていた。しかし……

台湾の超秘湯をめぐる旅の第2弾。台湾南東部、そして東部の秘湯を巡る。そのため、旅のスタートを高雄にした。今回も秘湯の案内人は、台湾の全温泉に入ることを目標とする廣橋(ひろはし)賢蔵さん。彼は台北から車で高雄へ。空港で落ち合った。

高雄から南下し、翌日に備えて、枋寮に1泊。そこから、まずは南東部の土坂温泉を目指す。

以前、ここには瀧渓という川にそって野渓温泉があったという。野渓温泉とは、河原を掘り、湧き出る温泉につかるスタイル。日本では野湯とか野天温泉と呼ばれるものだ。

今回の旅のデータ

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

高雄国際空港から枋寮、土坂温泉、金崙温泉郷、金峰温泉を経由して、知本温泉へ

台湾人気が後押ししているのか、高雄へは東京や関西から1日に複数の直行便が就航している。

東京からはタイガーエア台湾、バニラエアのLCC、日本航空、全日空、エバー航空、チャイナエアラインが就航。運賃は片道で1万円台から。

関西からはピーチアビエーション、スクート、タイガーエア台湾といったLCC、日本航空、全日空、エバー航空、チャイナエアラインが就航している。こちらも片道1万円台から。

長編動画

台湾南西部から南東部に抜ける車窓風景を。山道を抜け、太平洋が一気に広がる。そこから川に沿った山道に入っていく。

短編動画

台湾風おにぎり、飯糰(ファントゥアン)をつくる様子を。あっという間の早ワザ。具や味はScene04で。

高雄から知本温泉へ「旅のフォト物語」

Scene01

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

高雄国際空港。台湾南西部の主要空港で国際線の発着便は多い。今回の旅のスタートはここ。台湾在住の温泉案内人の廣橋さんと合流。空港から高速道路を南下。国道1号線を走り枋寮に着いた。今日はここまで。駅近くの民宿へ。遅いチェックインだからと1泊500元、約1850円にまけてもらった。

Scene02

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

夕食は駅近くの食堂へ。イカ炒め、海鮮焼きそば、海鮮チャーハンなど。焼きそばやチャーハンはひと皿70元、約259円。台北に比べるとやはり安い。枋寮は港町だから、なんでも海鮮になってしまう。奥さんがベトナム人で看板にもベトナムを示す越南の文字があったが、料理はまったくの台湾でした。

Scene03

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

料理を待っていると、どやどやと子どもたち。午後10時半だというのに……。すでに夏休みだからかと思っていると、なぜかケーキが届いた。聞くと近所の子どもたちで、写真左手前の女の子の3歳の誕生パーティーでした。それにしてもうるさい。店内は保育園のよう。でも、ケーキのお裾分け、もらっちゃいました。

Scene04

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

朝から暑い。朝食は飯糰という台湾風おにぎり。駅前に小型トラックの店が出ていた。1個25元、約93円。具は油条という揚げパン、デンブ、切り干し大根……。おにぎりの具にパン?と、一瞬引いたが、思いもよらず納得の味。枋寮の港で頰張りました。つくる様子は短編動画でも。

Scene05

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

枋寮から東に向かう。右手に海が見えてきた。広々とした太平洋。車を降りて深呼吸……、暑くてすぐに車に戻りました。そこから一気に山道に。くねくねと曲がる道を進み、東海岸に出た。目指したのは土坂温泉。瀧渓という川沿いの道を詰めていく。台湾の秘湯は道の行き止まりにあるという僕たちの不文律に沿って。

Scene06

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

「数年前まであったけど……」。台風で野渓温泉は流されてしまったという。しかし濁流が運んだ土砂をショベルカーで掘り起こすと、しばしば温泉が出るらしい。ここ一帯は、きっとそこかしこが温泉なのだ。村の先住民の青年が、バイクで先導してそれらしき場所に案内してくれた。

Scene07

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

河原に出る急な道を野犬を避けるようにくだった。河原は広いが、おとなしいときの瀧渓の川幅は狭い。ごろごろと石が積み重なる河原を進む。ここ? 温泉? 指を入れてみる。ほのかに温かいような……。掘ってみる? しかしここまで歩いてくるだけで汗みずく。気温34度。暑さに負けて諦めました。

Scene08

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

土坂村では、ボランティアの女性が、電柱のペインティングなど、村の美化に汗を流していた。彼女たちがさしていた日傘がこれ。背後からの日差しも遮断する強力日傘でした。背の日よけが風で舞わないように、腰とひもでつないでいるという徹底ぶり。これは優れ物なのか、煩わしいだけの日傘なのか……。

Scene09

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

次の秘湯をめざして金崙温泉郷へ。その入り口で「三和民宿」を経営している八幡敏(さとし)さんから話を聞いた。金崙温泉紅橋近くの河原では温泉が出るらしいという。八幡さんの民宿は1年前に150メートルほど穴を掘って、敷地内で温泉が出た。いまは温泉付き民宿。金崙渓の上流なら野渓温泉があるかも……。

Scene10

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

金崙渓に沿った道をのぼっていく。温泉郷というだけあって、途中には温泉宿が多く、ところどころから白い湯気が勢いよくたちのぼっている。金崙温泉紅橋に辿(たど)り着いた。近くの人に聞くと、「台風の土石流で川底が厚くなり、掘るのが難しくなった」という。もっと上流なら、と車を走らせる。

Scene11

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

魯拉克斯(ルラカス)吊橋に出た。この先にもう集落はない。河原に降りて温泉を探す。岩の下にほどよいよどみがあった。野渓温泉の予感がする。指を入れてみた。冷たい。温泉探しはなかなか難しい。河原からあがり、村の村長さんに聞いてみた。「あ、あそこ。あれは水」とにべもない言葉。うなだれ、川をくだった。

Scene12

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

土坂温泉は消滅し、金崙温泉郷では野渓温泉が見つからない。原因は台風の豪雨を集めた川が運んだ土石流だった。超秘湯をめぐる旅なのに目当ての温泉に出合えない。次の金峰温泉を目指して太麻里渓という川に沿った道を上流に向かう。と、行く手を遮断するバー。もう奥へはいけない? ……と思ったら、バーがあがった。先に進んでOK。胸が高鳴る。

Scene13

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

土砂崩れの跡。しかし仮の未舗装路がつくられていた。そこを進むと、金峰温泉の源泉にでた。河原にイオウのにおいが漂う。湯がぼこぼこ湧き出ている。しかし高温で近づくと危険という表示。実際、湯の熱で近づけない。見ると、湧き出た湯が、河原を流れている。ひょっとしたら……。その流れをたどってみた。

Scene14

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

流れを50メートルほどたどっていくと、太麻里渓に流れ落ちている。そこに人が掘ったようなくぼみが。野渓温泉だった。しかし指を入れると熱い。源泉の湯が50メートルほど流れる間にだいぶ温度をさげたが、まだ熱い。僕は足湯が限界。しかし温泉マニアの廣橋さんは体を入れる。すぐに川の水で体を冷やしていたが。

Scene15

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

その日は台東に近い知本温泉まで進んだ。秘湯でもなんでもない有名温泉だが、1回も湯につかれなかった帳尻合わせ? 台湾も夏休み。週末と重なって混みあっていた。やっと部屋があったのが「Y-Y旺温泉渡假村」という温泉施設。1泊ひとり1300元、約4810円と少し高かったが、ベランダに内湯。優雅な入浴。

【次号予告】次回は知本温泉から緑島への旅。

※取材期間:2019年7月26日~27日
※価格等はすべて取材時のものです。

■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら

■下川さんによるクラウドファンディング
「バングラデシュのこどもたちに安全な教育環境を コックス・バザールの校舎修繕プロジェクト

」はこちら

 

BOOK

高雄から知本温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅7

12万円で世界を歩くリターンズ [赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編] (朝日文庫)

実質デビュー作の『12万円で世界を歩く』から30年。あの過酷な旅、再び!!
インドネシアで赤道越え、ヒマラヤのトレッキング、バスでアメリカ一周……80年代に1回12万円の予算でビンボー旅行に出かけ、『12万円で世界を歩く』で鮮烈デビューした著者が、同じルートに再び挑戦する。

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編】」 (朝日文庫)。

  • 中田浩資

    1975年、徳島県徳島市生まれ。フォトグラファー。大学休学中の1997年に渡中。1999年までの北京滞在中、通信社にて報道写真に携わる。帰国後、会社員を経て2004年よりフリー。旅写真を中心に雑誌、書籍等で活動中。

嘎拉賀野渓温泉から台北へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅6

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