あの街の素顔

星野リゾート「青森屋」、「青森ねぶたの間」の価値を味わう最善の方法

ライフスタイルジャーナリスト・小川フミオさんが「星野リゾート 青森屋」の「青森ねぶたの間」に宿泊してきました。“すばらしい体験だった”と、太鼓判を押す、旅のリポートをお届けします。

(メイン写真=小川フミオ)

予想以上の巨大さに驚いた「青森屋」

「星野リゾート 青森屋」が、2019年4月に完成させた「青森ねぶたの間」に泊まりに出かけた。青森ねぶた祭を主題にした客室を作りたいという同ホテルのスタッフが、構想8カ月、工事期間2カ月、ねぶた制作に2カ月半かけた、凝りに凝った部屋である。

「青森文化を丸ごと体験できる温泉宿」を謳(うた)う「青森屋」は、もともと古牧温泉といわれ、三沢駅から徒歩でも約10分という立地だ。私は訪れてみて、まず、予想以上の巨大さに驚いた。敷地面積22万坪というだけある。

星野リゾート「青森屋」、「青森ねぶたの間」の価値を味わう最善の方法

22万坪におよぶ敷地があり大きな池のまわりを散策できるようになっている(写真提供=星野リゾート)

■星野リゾート 青森屋

「ねぶた」と「ねぷた」の違い

ねぶたはご存じのとおり、青森を中心に夏に行われるお祭りに使われる山車灯籠(だしとうろう)のことを言う。Nebutaと表記されるのは青森ねぶたで、木材と針金による骨組みに奉書を張り、上に色づけをしていく。内部には電球が入れられ、台車に載せると高さ5メートルの光り輝く山車となる。

いっぽうNeputaというときは弘前ねぷたのように、平面的な絵を扇形の台紙に描くものを指すことが多いようだ。青森屋を案内してくれた青森出身の広報のひとは、そのように説明してくれた。でも諸説あるらしい。

1室だけの特別な客室「青森ねぶたの間」

星野リゾート「青森屋」、「青森ねぶたの間」の価値を味わう最善の方法

寝室でベッドに橫になると部屋の隅にねぶたが飾られているのが見える(写真=小川フミオ)

青森屋には200を超える客室があるが、「青森ねぶたの間」は1室だ。部屋のいたるところから立体的なねぶたが突きだしている。腰を抜かしそうな迫力だ。

「青森ねぶたの間」はスイートルームである。部屋の扉を開けると、廊下のつきあたり、「主室」といわれるリビングルームの壁が正面に見える。そこにあるのは、「出迎えねぶた」として制作された「田村麿(たむらまろ)と妙見宮の鬼面」を題材にした高さ約2メートルのねぶた絵である。

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「青森ねぶたの間」(写真提供=星野リゾート)

主室に入ると、「東北の雄 阿弖流為(アテルイ)」を表した立体ねぶたが、天井と壁の境から部屋にぐっと身を突き出すように設置されている。幅3.2メートル、高さ1.4メートルの大きさで、平安時代初期に大和朝廷と戦い続けた阿弖流為だけに、いかにも勇ましい。

2018年と2019年の青森ねぶた祭で「ねぶた大賞」を獲得した、ねぶた師の竹浪比呂央氏の協力で制作されたというだけあって、作りはみごと、のひと言。

美しく輝く伝説の英雄たちの迫力ある表情やからだのポーズに、みとれてしまう。内部には各所に電球が仕込まれているのだけれど、骨組みの影は映らない。それも技術的なこだわりだそうだ。

「青森ねぶたの間」の真の価値を味わう最善の方法

じつは青森屋を訪問中に、私が発見した楽しみかたがある。この「青森ねぶたの間」の真の価値を味わう最善の方法についてだ。それは、予約していても、ホテル到着後すぐに部屋に入らないことだ(ねぶた祭を体験したことがあるひとは除く)。

できれば、入室をうんと遅らせるのである。とくに勧めたいのは「みちのく祭りや」と名づけられたショーレストランでねぶた祭の概略を(踊り指南とともに)体験したのちに、初めての部屋に入るといい。

星野リゾート「青森屋」、「青森ねぶたの間」の価値を味わう最善の方法

「みちのく祭りや」でのねぶた祭のショーでは山車灯籠が現れる(写真=小川フミオ)

夕方に到着してもチェックインしないでいる方法はいくらでもある。館内の”探検”はおもしろい。津軽錦という金魚をモチーフにした金魚型の灯籠がずらりと並べられた回廊もあり、巨大な縁日感覚というか、光る無数の灯籠を眺めていると、おとなでも楽しくなってくる。

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青森屋の金魚ねぷたは尾びれが長いのが特長。夏のあいだは金魚型灯籠(背びれがない津軽錦)があらゆるところに飾られる(写真=小川フミオ)

屋外にも楽しみがある。「公園」と名づけられた大きな池を中心とした敷地内は散策に向いているからだ。きれいな緑の景色が楽しめる。アクティビティーも多くあるし、温泉に行くというのもとても勧めたい。

アクティビティーのなかで印象ぶかかったのは「南部裂織(なんぶさきおり)体験」だ。南部は旧藩時代の領土区分で、いまの青森県だと東部のあたりを指す。かつて綿布が貴重だったため、着古した衣服を細く裂き、それを糸にして織りこんで再利用する伝統が定着した。いまでいうならリサイクルクロースである。

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綿や麻を縦糸に、細く裂いた布を横糸にして、地機(じばた)と呼ばれるはた織り機で布地の再生産を行う伝統工芸「南部裂織」体験もできる(写真=小川フミオ)

自分で布地を裂き、色を選び、布を織っていく体験ができる。機織りは私にとって初めての体験だったので、最初はおっかなびっくりだったが、最後はおもしろくて、タイムアップになったのがじつに惜しいと思うまでになった。

機織りを指導してくれる地元の女性たちもていねいで、かつひと当たりがよく、一緒に作業してくれると楽しい。青森屋は地元の伝統をうまくアクティビティーに取り込んでいる。

そして夜、「ラッセー、ラッセー、ラッセーラ」とねぶたの踊りを習ってから、初めて「青森ねぶたの間」に足を踏み入れるとよい。部屋内の廊下の模様にはじまり、ねぶたが飾られた部屋のデザインのすべてに納得がいく。最高のエンターテインメントルームの真価が堪能できると思う。

星野リゾート「青森屋」、「青森ねぶたの間」の価値を味わう最善の方法

敷地内レストラン「南部曲屋」の朝食(の一部)には地元名物の「帆立味噌(ほたてみそ)焼き」(右端)をはじめ「長芋めかぶ和(あ)え」など楽しい品が並ぶ(写真=小川フミオ)

星野リゾート「青森屋」、「青森ねぶたの間」の価値を味わう最善の方法

「南部曲屋」の夕食で提供された八戸名物「いちご煮(ウニとアワビの吸い物)」(写真=小川フミオ)

食事は敷地内の一軒家型レストラン「南部曲屋(なんぶまがりや)」がいいだろう。炭火を使った料理が楽しめる。しかも地元の魚介を中心としていて、ホヤやフジツボなど、東京では高級料理店でないと出ない新鮮な食材がじつにうまい。酒はやはり日本酒が中心となる。

星野リゾート「青森屋」、「青森ねぶたの間」の価値を味わう最善の方法

一室しかない「青森ねぶたの間」とはおもむきが180度異なる「あずまし 半露天風呂付」にはヒバのいい香りをかぎながら外の景色が楽しめる(写真=小川フミオ)

青森の夏は本当に美しい。青い森という名のとおりで、森林と渓谷による景色が堪能できる。私が訪れたときは、曇りときどき雨だったので、それもまた、風情があった。時間があれば、青森屋から奥入瀬(おいらせ)渓流に足を延ばすのもいい。ゆたかな思い出になるだろう。

8月のねぶた祭が終わると、青森のひとたちは、もう夏は終わったと思うのだそうだ。気が早いと思わないでもないが、やはり北国なのだろう。夏もひんやりとして涼しい日が続く。

秋を迎える前に開催されるねぶた祭は生命の爆発のようなものだ。そのエネルギーを青森屋で垣間見ることが出来る。それはすばらしい体験だった。と、太鼓判を押します。

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PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 小川フミオ

    クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。「&M」ではクルマの試乗記をおもに手がけていますが、グルメ、旅、ホテル、プロダクト、建築、インタビューなど仕事の分野は多岐にわたっています。クルマの仕事で海外も多いけれど高速と山道ばかり記憶に残るのが残念です……。

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