あの街の素顔

風鈴回廊を歩き、鯛を釣り、渦を食べる  川越氷川神社で過ごす夏

暑い都心を抜け出して、人気の“小江戸”川越へバカンスに。と思いきや、現地の気温も35度。でも大丈夫、川越氷川神社にスペシャルな涼があると聞いたから。なんと2000個もの江戸風鈴が、ひんやり涼しい音色をチリンチリンと響かせているのであります。軽い気持ちで訪ねましたが、見どころは盛りだくさん。気がつけば神社で丸一日を過ごしたのでした。
(文・写真 矢口あやは)

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風鈴回廊を歩き、鯛を釣り、渦を食べる  川越氷川神社で過ごす夏

東武東上線「川越駅」東口から東武バスに乗って約10分の「川越氷川神社」。朝9時の境内は静かです

約1500年前に創建され、出雲大社にもゆかりのある“縁結びの神社”として名高いこの「川越氷川神社」では、毎年、夏の祭事として「縁むすび風鈴」(9月8日まで)を開催しています。

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境内は、足元から水が湧いているかのような涼しさ。ひんやりミストがまるで光の雨

シャワシャワと大合唱のセミの声に混じって、チリリン、チリンとあちこちから澄んだ音色が。境内のいたるところには色とりどりの風鈴。その数、なんと2000個以上とか。すごいぞ。ここで一生分の風鈴を見ることになるのでしょうか。

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境内に入って真っ先に目を引くのがこれ。社殿の右隣にある、鮮やかな風鈴が飾られたゲートです


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見上げれば風鈴のオンパレード。さらに奥へ歩みを進めると……


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もう、風鈴、風鈴、風鈴! これぞ今Instagramで大人気の「風鈴回廊」。強い風が吹くと、シャラランと風情ある音に包まれます

ちなみに、ここにあるのはすべて「江戸風鈴」と呼ばれるもの。江戸風鈴とは、江戸時代から作られているガラス製の風鈴で、現在は東京にある二つの工房が、昔ながらの手法で作り続けているのだそうです。

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丸く吹いたガラスの球を手作業でパリンと割るから、鳴り口はギザギザ。この形こそ澄んだ音色が鳴るヒミツだそうです。300年前と変わらぬ音色にうっとり


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回廊を抜けた先には透明な風鈴が並ぶ「風鈴小路」。夕方以降はライティングによって色が変わります


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わっ、今度は絵馬のトンネルが出現。聞けばなんと数万枚はあるとか。さすがは人気の神社です

社殿の右から入って、左から出ました。1周し終えたら、あらら、なんだか憑(つ)き物が落ちたような気分。昔から、鈴の清らかな音色には、清める力、祓(はら)う力があると考えられていたそうで。「昔の人は、風が鳴らす鈴の音にも神さまの気配を感じていたようですね」とうなずくのは、権禰宜(ごんねぎ)の荒川裕也さん。

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電話やSNSがなかった時代、神社で手を合わせた時に願いを届けてくれるのは“風”だと信じられていました。「それが、いわゆる“風の便り”ですね」と荒川さん

「風鈴はまさに、目に見えない神さまの力を感じさせてくれるものでした。この古来の感覚を自然な形で皆さんにお届けしたくて、2014年から始めたのがこの『縁むすび風鈴』の祭事です」と、荒川さんは語ります。

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「縁むすび風鈴」の期間中は願いを書いた木の短冊を風鈴の下に結ぶことができます

6年目になり、「今年はいつから?」「待ってました!」とのお声も増えてきたそうです。「1500年という神社の歴史に比べたらまだまだですが、これから10年、30年という歳月を経て、恒例のお祭りにしていけたらと思います」と荒川さん。チリンと鳴った風鈴は、お願いが届いた合図なのだそう。「ぜひ風鈴の下にお願い事の短冊を結びにいらしてくださいね」

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おやつとのご縁を願うカワイイ短冊も


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祭事が終われば、風鈴は職人の元に里帰りして清められ、再びお目見えする翌年まで神社で大切に保管されるのだそうです

縁結びのお守りなども充実

川越氷川神社には、2組の夫婦の神様と、出雲大社の神さまとして知られる大己貴命(おおなむちのみこと)が祀られています。「人と人はもちろん、人とモノ、人とコトなど、いろんなご縁を引き寄せてくれます」(権禰宜・荒川さん)

だから縁結びで有名だったんですね。その縁結びにちなんだ授与品の種類もいろいろ。たとえば、おみくじは釣りザオを握って……エイッ。

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やった! お目当ての鯛(たい)を釣り上げました。しっぽにおみくじが入っています(初穂料300円)


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写真は「一年安鯛みくじ」(赤)と「あい鯛みくじ」(青)。私もステキな殿方とむすばれ鯛……


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これは社務所で見つけたお守り「赤縁筆」(初穂料300円)。使うたび、削るたび、キャップに描かれた男の子と鉛筆に描かれた女の子の赤い糸が縮まっていくステキなデザイン


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「縁むすび風鈴」の期間限定で1日100本のみ授与がある「恋はなび」(初穂料300円)。2人でともせるように持ち手が2本あるのです


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広がる水紋が涼しげ。夏限定の「であいこい守り」(初穂料500円)

この「であいこい守り」を見ていたら、「氷川会館のカフェには、おいしい渦まきもありますよ」と耳よりな情報が。さっそく巨大な鳥居を出て、氷川会館を訪ねました。

おいしいクルクル渦を訪ねて「むすびcafé」へ

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氷川会館1Fにある「むすびcafé」。折形デザイン研究所の山口信博さん、家具デザイナーの小泉誠さんらが手がけたといい、天井の白いフサフサは紙垂(しで)をイメージ。ホッとするお店です


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あった! 見つけました。「むすびロール」ケーキセット(税込1000円)

「“渦”は昔から、外側から内側へたどるほど幸せに近づくとされているデザインなんです。ロールケーキは、米粉入りのしっとりした生地の食感と、淡く甘い和三盆糖のクリームにこだわりました」(パティシエ・及川将史さん)

1歩、また1歩と、1口ごとに幸せ(渋皮栗)に近づいていくおいしい渦巻きです。一方、風鈴に見立てたガラスの器がコロンとかわいい夏限定の「彩り風鈴」(全7種)も人気だそう。

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桃の果実とそのムース、白ワインと赤すぐりのゼリー、ナタデココなどを素材にした「もも」(税込500円)。上に乗っているのは薄いチョコレートです


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ピンクグレープフルーツムース、塩ミルクゼリー、ナタデココなどを用いた「塩ミルク&グレープフルーツ」(税込500円)。夏の塩分補給もかねたい

むすびcaféのお料理やお菓子は、材料の一部を神前にお供えしてから作り始めるそう。結びの神さまのお力をいただきたい!

午後になると浴衣ガールで大にぎわい

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14時の境内は猛烈な日差し。スプリンクラーの水を浴びながら、木陰で涼む人々


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と思いきや、浴衣ガールは夏の暑さもなんのその。風鈴をバックに撮影にいそしむ女子やカップルで風鈴回廊は大にぎわい


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「むすびcafé」で買えるお水(300円)も風鈴スタイル。お土産にと思ったけど、暑さにたまらずグビッ

風情ある宵闇のライトアップ

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18時。まだいたのかって言わないで。黄昏(たそがれ)時の神社にあかりがともり、たまらない風情が漂いはじめました

「縁むすび風鈴」の期間中、毎日18時30分になると社殿にて「恋あかり特別良縁祈願祭」(8月31日まで・祈願初穂料1500円)が執り行われます。開催前の社殿を特別に見せてもらいました。

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川越氷川神社、コエドブルワリー、市内の印刷所の三者が協力している夏の行事「恋あかり」。神前には、ふわりと光るまんまるのおもち? いえいえ、実は…


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特製のぼんぼりでした。いくつになってもこうした「光りもの」にひかれてしまうのはなぜなのでしょう


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大切な人といつまでも仲良く過ごせるようにと縁結びの神様にお祈りしたのち、ぼんぼりの授与があります


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ぼんぼりを手に入れて、ホクホクしながら「風鈴回廊」へ。ぼんぼりの色はふわふわと絶え間なく変わり、異空間へ連れられていく心地


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神聖ながらもどこか妖(あや)しくて、昼の光景とは打って変わって幻想的

夕暮れとともに、風鈴のライトアップも始まっていました。実は、川越氷川神社は創建の昔から“光”と密接な関係があるとか。

というのも、文書に残された由緒をさかのぼると、入間川の川底に夜な夜な光る霊光があり、その光の源をたどってこの地に神社を祀ったのだそうですよ。

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19時、ご神水の流れる川があかりでポツポツと光り始めました。1500年前の伝説がよみがえったかのよう

小川がほんのりと光り、人の手元でぼんぼりが揺れて、風鈴の音が響く、やさしい夜がやってきました。

「蔵造りの町並み」も楽しい

ずっと神社にいるのもナンだったので、ちょっと足を伸ばして(といっても川越氷川神社からは徒歩20分ほど)、「蔵造りの町並み」を歩いてみました。

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毎年700万人もの観光客でにぎわう“小江戸”川越のここがメインストリート。「美しい日本の歴史的風土100選」にも選ばれています


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シアトル生まれのスターバックスも川越ではお江戸の風情


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「暑いね! 乗ってく!?」と声をかけてくれた人力車のお兄さん。初乗り(?)は1人2000円、2人で3000円からだそう。蔵造りの町並みで遊んでから人力車で氷川神社へというのも粋


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「川越日傘」の無料レンタルサービスを発見。蔵造りの町並みエリアを中心に、着物のレンタルショップなど37カ所で借りたり返したりできるそう

歩いていると、やけにサツマイモのお菓子が目に付くのです。「?」と思っていたら、実は江戸時代は「サツマイモといえば川越」と言われるほどの大産地だったんだとか。江戸っ子たちが大好きだったという川越芋を食べそびれたことが心残り。この町を訪れたら、ぜひともご賞味を。

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蔵造りの町並みではクラフトビール「COEDO(コエド)」も人気。恋あかり限定ビール「華束-Hanataba-」をお土産にしました

■川越氷川神社 縁むすび風鈴 特設サイト
http://www.hikawa-fuurin.jp/

■恋あかり 特設サイト
http://hikawa-koiakari.jp/

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 矢口 あやは

    ライター
    1983年大阪生まれ。旅行誌やカルチャー誌を中心に、国内外の歴史、文化、自然科学などのジャンルで活動。生物と山歩きが好きで2013年に狩猟免許を取得。今年の目標はヨットで相模湾横断。

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