永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(20) 光の中から現れた3人 永瀬正敏が撮ったセントラルパーク

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回はニューヨークのセントラルパークです。光の中から現れたこの3人の写真で、写しとったものとは。

(20) 光の中から現れた3人 永瀬正敏が撮ったセントラルパーク

© Masatoshi Nagase

ニューヨークのセントラルパークは、穏やかな晴天だった。公園に満ちた光の中から、次々に人が現れてくる。思い思いの服装をして、それぞれの目的で。その雰囲気がすごくよくて、僕自身もその暖かさにひたりながら、足の向くまま気の向くまま、シャッターを切り続けた。

ジム・ジャームッシュ監督の映画「パターソン」の撮影で、米国入りした日のことだった。日曜日だったと記憶している。僕が撮影前の準備に参加するのは翌日からだったので、ホテルに荷物を置いて、近くにあるセントラルパークに、散歩がてら、カメラを手に出かけてみた。長時間のフライトの後で、少し開放感を味わいたい気持ちもあった。

そんな中、向こうから登場したのが、この3人の女性だった。友達同士だろうか、ウォーキングを楽しんでいる。少し逆光気味の状態で撮った、まさに歩いているところ、という彼女らの姿からは、気分や関係性まで伝わってくる。伸びてくる3人の影と木の影がとけあい、光といいコントラストをなしていた。

セントラルパークは広いので、この人たちが僕のところに近づいてくるまで、かなり時間があった。ジョギングではなくウォーキングだから、と言えばそれまでだけれど、彼女らと僕がともにいた、光に包まれた緩やかな時間をも写しだしている気がする。

PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に石井岳龍監督「パンク侍、斬られて候」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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