京都ゆるり休日さんぽ

コーヒーの生産地を旅するように。カフェ「旅の音」で甘い一杯を

暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。

今回は、元美術学校の教室をリノベーションしたカフェ「珈琲焙煎所 旅の音(タビノネ)」へ。ひんやり、するりとのどをすべる、ほろ苦いコーヒーゼリーパフェで過ぎ行く夏を思うことにしましょう。

店主自ら農園へ。旅するコーヒー豆の魅力

コーヒーの生産地を旅するように。カフェ「旅の音」で甘い一杯を

元美術学校校舎の一室をリノベーションした空間

「THE SITE」と呼ばれる、1960年代に建てられた元美術学校をリノベーションした、クリエイターのアトリエや雑貨店、オーガニックの青果店などが入居する複合施設の一角に「旅の音」はあります。店に入るとすぐ、迎えてくれるのは大きな焙煎(ばいせん)機。古材のテーブルやアンティークの日用家具、あちこちに飾られたドライフラワーといった時の流れを感じさせるものたちが、しっとりと落ち着いた時間を紡ぎます。

コーヒーの生産地を旅するように。カフェ「旅の音」で甘い一杯を

カフェの入り口には2台の焙煎機。焙煎の教室なども行っている

店中に漂うのはコーヒーの“甘い”香り。苦みやコクよりも、不思議と甘く、柔らかな印象を受ける香りが空間を満たしています。壁に飾られた試験管の中には、ここで焙煎したコーヒー豆が。ベトナムやミャンマーなど、店主の北辺佑智(きたべ ゆうち)さんが自らの足で現地へ赴き、買い付けた豆がずらりと並びます。

「一番大切にしているのはコーヒーの“甘み”。産地に糖度計を持参し、農家さんとコミュニケーションをとりながら、基準値を満たす栽培に取り組んでいただいています。それでも生豆の状態では、風味や香りまではわかりません。自分自身がテスト焙煎し、試飲して味わいを確かめ、納得のいくものだけを厳選します」と北辺さん。

コーヒーの生産地を旅するように。カフェ「旅の音」で甘い一杯を

店主の北辺さん。焙煎やドリップはもちろん、メニューやギフトの開発にも精力的に取り組んでいる

焙煎家として卸しや焙煎教室も行うとはいえ、生産地にここまでコミットするのは焙煎所やカフェの域を超えた取り組み。手間と時間を惜しまず、生産地とコミュニケーションを取るのは、北辺さんの「生産地や作り手の魅力を伝えたい」というひたむきな思いに支えられています。

コーヒーの生産地を旅するように。カフェ「旅の音」で甘い一杯を

タバコの箱のようなデザインが秀逸な、コーヒー豆のパッケージ。取り外しできるラベルは産地ごとに色分けされ、裏には豆の特徴が

「22歳でタイを旅した時にコーヒーの実に出合って、フルーツと同じ果実としてのコーヒーの魅力に感動しました。帰国後、自宅のガレージで焙煎を始め、WEBで販売したのが『旅の音』のスタートです。それ以来、コーヒーに関わり続けたい、コーヒーに関わる人を増やしたいという思いがずっとあります」

コーヒーの新たな魅力に気づくスイーツ

世界中を旅して集めたコーヒー豆は、ドリンクとしてはもちろん、さまざまなおいしいものへと形を変えます。その一つが、看板メニューでもある「コーヒーゼリーパフェ」。果実感豊かな「エチオピア イルガチェフェ」のコーヒーをゼリーに仕立て、ミルクゼリーとラズベリーのピュレが三層を描く美しい一品です。

コーヒーの生産地を旅するように。カフェ「旅の音」で甘い一杯を

「コーヒーゼリーパフェ」(900円・税込み)。ビスケットと焼きマシュマロ抜きは50円引き

驚くほどスッキリとフルーティーなコーヒーゼリーは、コクや苦味の強いコーヒーゼリーのイメージとは一線を画す、さわやかな味わい。トップのビスケット&焼きマシュマロをくずし入れると、さっぱりとしたゼリーに心地よい甘さが加わります。

コーヒーの生産地を旅するように。カフェ「旅の音」で甘い一杯を

テクスチャーは硬めながら、口どけは驚くほどなめらか。「タビノネのプリン」(480円・税込み)

ほかにも、エッジの効いたフォルムに反してとろけるようになめらかな「タビノネのプリン」、マンゴーピューレとミルク、コーヒーが層になった新感覚のカフェオレ「カフェオレ・アイランド」、タルトやクグロフなど、すみずみまで工夫を凝らしたメニューが並びます。そのどれもが、コーヒーとの相性の良さやコーヒーの新しい味わいに気づかせてくれるものばかり。コーヒーを愛する人、コーヒーに関わる人を増やしたいという北辺さんの願いは、ここにも息づいています。

コーヒーの生産地を旅するように。カフェ「旅の音」で甘い一杯を

武骨な内装を生かしつつ、古材のテーブルやドライフラワーのしつらえに温かみが宿る

コーヒーの生産地を旅する店主が出合った、個性豊かなコーヒー豆。収穫されたチェリーからコーヒー豆が取り出され、海を越えて日本にたどり着き、丁寧に焙煎されてさまざまなおいしいものに形を変える……。その過程もまた、一つの旅のようです。心落ち着く空間でコーヒーを味わいながら、旅するコーヒー豆の物語に耳をすませてみてください。(撮影:津久井珠美)

コーヒーの生産地を旅するように。カフェ「旅の音」で甘い一杯を

「THE SITE」には他にもショップやクリエイターのアトリエ、事務所などが入居。中庭でマーケット等が開催されることも

旅の音
http://coffee.tabinone.net

BOOK

コーヒーの生産地を旅するように。カフェ「旅の音」で甘い一杯を

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が6月7日に出版されました。&TRAVELの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。

 

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PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告、家族写真など、多岐にわたり撮影に携わる。

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