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世界遺産・二条城の非公開施設で絶品ゆば粥 この夏限定のお楽しみ!

日本の城を知り尽くした城郭ライター萩原さちこさんが、各地の城をめぐり、見どころや最新情報、ときにはグルメ情報もお伝えする連載です。今回は京都市の世界遺産・二条城。非公開施設でゆば粥(がゆ)を食し、大政奉還の舞台となった大広間の一部開放など、この夏限定のレア体験ができます。

世界遺産・二条城の非公開施設で絶品ゆば粥 この夏限定のお楽しみ!

二条城の入り口となる東大手門。朝一番は観光客が少ない

「古都京都の文化財」のひとつとして世界文化遺産登録されている二条城(京都市)で、今夏だけの特別なイベントや限定公開が展開されている。これまでとは違う二条城を、存分に楽しめる絶好の機会だ。

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二条城二の丸御殿の正門にあたる唐門。切妻造、桧皮葺(ひわだぶき)の四脚門

早起きして、朝8時に二条城に向かう。盆地にある京都の夏は暑いため、朝や夕方の涼しい時間帯に城内を観覧できるよう、9月30日まで開城時間が拡大されている。通常は8時45分から17時(入城は16時)までのところ、8月は8時から18時(入場は17時)まで、9月は8時から17時(入場は16時)まで開城。国宝の二の丸御殿も、8月は17時10分、9月は16時10分まで観覧可能だ(8月の火曜日は観覧休止)。

連日の猛暑で8時でも涼しいとはいえないが、観光客が少ないのがうれしい。いつもは多くの人々が行き交う唐門や二の丸御殿の前も、訪れた日は誰ひとりいなかった。二の丸御殿に入れるのは8時45分からのため、それまではほとんど人が来ないのだ。唐門や二の丸御殿の美しい装飾をじっくりと眺められるのは、なんとも至福。特別名勝・二の丸庭園もゆっくりと散策できた。

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二の丸庭園。小堀遠州が改修したとされる。二の丸御殿の大広間、黒書院、行幸御殿の3方向から鑑賞できるように工夫されている

今回お目当てにしていた夏季の特別企画は三つ。ひとつは、非公開の「香雲亭」でいただく朝食、二つめは、二の丸御殿大広間四の間への特別入室。そして三つめは、障壁画展示収蔵館での、大広間四の間の「松鷹図」の原画公開だ。

まずは、清流園内にある香雲亭での朝食に向かう(要事前予約、1日40食限定)。非公開の香雲亭が特別に開放され、「京料理いそべ」の「季節の一品付 京のゆば粥(がゆ)御膳」がいただける。とろけるような自家製くみ上げゆばや、やさしい味付けの炊き合わせ。京料理らしい上品な味が寝起きの胃腸をやさしく起こしてくれ、彩りのよい料理が寝ぼけ眼を覚ましてくれる。クリーミーなゆば粥は絶品だった。

香雲亭は江戸時代の豪商・角倉家の屋敷の一部を移築した建物で、通常は非公開。和風庭園と洋風庭園が融合した清流園を眺めながら、ゆば粥をいただけるとは、なんともぜいたくな時間。「早起きは三文の徳」とはこのことだ、と感じずにいられない。

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非公開の香雲亭で、清流園や二条城本丸の石垣を眺めながら朝食がいただける(提供:京都市元離宮二条城事務所)


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「京料理いそべ」の「季節の一品付 京のゆば粥御膳」


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香雲亭から清流園を眺められるのは、この期間だけ

香雲亭を後にして、二つめの目的地である二の丸御殿へと向かう。<現存御殿の見どころと特徴 城の御殿(2)>でも述べた通り、二条城の二の丸御殿は、全国に残る4棟の城郭御殿のなかでもっとも豪華で、徳川幕府の威信をかけた美と様式美の極みだ。1626(寛永3)年に3代将軍の徳川家光が後水尾天皇の行幸のために城を大改築し、その際に二の丸御殿も大改修したとされる。

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国宝の二の丸御殿

通常、二の丸御殿は廊下からの見学に限られ、各部屋に立ち入ることはできないが、8月26日(月)までは、大広間四の間に特別入室できる(火曜日を除く)。一生の思い出になる特別な経験だ。御殿の中心である大広間は、1867(慶応3)年に15代将軍の徳川慶喜が大政奉還を諮問した部屋。将軍の座所となる一の間には入れないが、四の間でもこれほど絢爛(けんらん)豪華なのか、と驚愕(きょうがく)した。52畳半の広さを誇る四の間はかなりの迫力で、復元ながら障壁画や天井画、欄間彫刻を間近で鑑賞でき、荘厳な空間に感極まった。

廊下からのぞくだけでは見えない、格天井の中に描かれている天井画もすばらしく、見とれてしまった。唐草が囲み、四隅には蝶(ちょう)と唐花、上下左右に三つ葉葵があり、中央には孔雀(くじゃく)が描かれている。よく見ると孔雀の絵は複数のパターンがあり、その細やかな美に心を奪われる。辻金物の中心には三つ葉葵が輝き、花のし型の釘隠しも見事。欄間彫刻は、言葉にならないほどの美しさだ。

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二の丸御殿の大広間一の間と二の間。この部屋で大政奉還が諮問された。将軍や重臣の人形が置かれている(提供:京都市元離宮二条城事務所)


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期間限定で特別入室できる、大広間四の間。(提供:京都市元離宮二条城事務所)

大広間四の間を後にしたら、三つめの目的地、障壁画展示収蔵館へ。狩野派による大広間四の間の「松鷹図」が、9年ぶりに大広間四の間での西・南・東面の配置を再現して公開されている(9月8日まで)。

巨大な松に鷹(たか)や鷲(わし)が描かれた「松鷹図」は、二条城を代表する障壁画だ。二の丸御殿でもっとも多く描かれている樹木は松で、鷹は武人の象徴。鷹狩りを好んだ徳川家康にとっては、特別な存在だったのだろうか。描かれた鷹の、世の中を静かに見据えるような眼、毛先の跡にまで感じる生命力と躍動感。天下人の心をもとらえた狩野派による障壁画には、いつまでも鑑賞していたくなる引力がある。

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大広間四の間の「松鷹図(抜粋)」(提供:京都市元離宮二条城事務所)

大広間四の間は、一の間から三の間とは松や鷹の大きさや余白の使い方など描き方が異なる。松も鷹も鷲もダイナミックな印象だ。一の間から三の間を描いた狩野探幽が四の間だけは祖父の狩野永徳の描き方にならったという説と、四の間だけは狩野探幽ではなく狩野山楽によるものとする二説があったが、昨年度の調査研究によって、狩野山楽の筆とする説が有力になったという。

10月3日からは、展示収蔵館の原画公開は第3期となり、二の丸御殿では通常公開されていない、大広間と黒書院の帳台の間の障壁画が公開されるそうだ。秋には庭園の紅葉が色づき、夏とは違う二条城の風情が味わえるはずだ。また、訪れることにしよう。
(この項おわり。次回は8月26日に掲載予定です)

#交通・問い合わせ・参考サイト

■二条城
https://nijo-jocastle.city.kyoto.lg.jp/(世界遺産 元離宮二条城)

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PROFILE

萩原さちこ

小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などをこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。

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