クリックディープ旅

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。過去「12万円で世界を歩く」や「玄奘三蔵が歩いたルートをたどる旅」など過酷な?テーマのシリーズでお届けしてきました。

今回のテーマは「台湾の超秘湯旅」。8回目で緑島(りょくとう)の朝日温泉に入浴した下川さん。9回目は、台東の富岡港に戻り、紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ向かいます。

はたしてどんな秘湯や珍道中が待っているのでしょうか? もはや生き様ともいえる旅のスタイルや、ひょうひょうと、時にユーモラスに旅を続ける様子を温かいまなざしでお楽しみください。

【前回「緑島の朝日温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅8」はこちら

(文:下川裕治、写真・動画:中田浩資)

再び山のなかの秘湯へ。野渓温泉の深みにはまっていく

緑島から台東に戻り、再び台湾東部の超秘湯をめざして、深い山に分け入っていくことになる。土板温泉、金崙(ジンルン)温泉郷などをまわり、わかってきたことは、「八八水害」と呼ばれる豪雨で、多くの超秘湯が消えてしまったことだ。八八水害は、2009年、台風8号(モーラコット)がもたらしたもの。700人近い人々が犠牲になった。8月8日の被害が最も大きかったことから、こう呼ばれるようになった。ということは、もっと上流まで足をのばさないと秘湯はない?

ところが超秘湯はしぶとい。温泉施設は流されてしまったが、その近くの土砂が堆積(たいせき)した河原から、湯が湧出(ゆうしゅつ)しているところがあるという。新たな秘湯が生まれたってこと? 台東の山道をのぼることになる。

今回の旅のデータ

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

台東の富岡港に戻り、紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ

台湾のホテルは、台北を離れるとかなり安くなる。エリアを比べると、台中、台南、高雄が続く西側より、東側のほうが安くなる。

今回、僕らは3人でひと部屋というタイプを探していったが、最も安かったホテルは、3人で1000元、約3700円。台東の中心街から少し外れたところにあるビジネスホテルだった。台湾の東側は物価もやや安い気がする。台湾の旅を安くするなら、台湾の東側?

長編動画

緑島から戻ったのは夕暮れどき。ちょうど夜市がにぎわいはじめる頃だった。台東観光夜市をたっぷりと。おなかがすいてくる動画です。

短編動画1

台湾の東側を走る鉄道の名物駅弁といったら池上弁当と関山弁当。関山駅前を車で通り、弁当づくりの様子を見させてもらいました。

短編動画2

今回の終盤、栗松温泉への下り口への悪路を。途中、車のボディーがなにかにこすれた音、聞こえます。詳細はシーン14で。

富岡港に戻り、紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ「旅のフォト物語」

Scene01

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

出港した船は、しだいに緑島から遠のいていく。台湾のシニアにとって、緑島は監獄島のイメージが強いが、若者にしたらリゾートアイランド。そしていまは夏休み。おとなしく帰る男の子がふたり。深い意味はないのですが。台東まで小1時間。船は予定通りに富岡港に着いた。

Scene02

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

予約した宿は3人部屋で1000元、約3700円。ひとり約1233円。地図を見ると台東市のはずれ。安い宿とはそういうことだ。周囲に食堂もなさそうで、途中にあった台東観光夜市で夕飯の買い出し。台湾というと小籠包だが、値段が高い。日本でいうギョーザ類のほうが一般的。夜市のギョーザ屋は充実しています。その様子は動画でも。

Scene03

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

翌朝、紅葉谷温泉をめざす。ここはかつての紅葉温泉。八八水害で施設は流されてしまった。道路標識や看板は当時のまま。しかしうわさでは、そこを流れている川の河原には温泉が湧き出ているという。河原を掘れば露天風呂というわけだ。はたして温泉はあるのか。北絲鬮(ベイスージウ)渓沿いの道をのぼっていった。

Scene04

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

紅葉橋を越えると、河原に下りられそうな階段があった。くだっていくと、2メートルほどの崖。周囲にはイオウのにおいが漂っている。これは温泉がある……期待を胸に崖をずりずりと下り、河原に出た。暑い。日光を遮るものがなにもない河原は、体感温度40度超え? 見ると本流の手前に流れがあり、その向こうの中州に河原を掘った跡が……。

Scene05

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

「熱ッ」。水着に着替え、本流の手前の流れを渡ろうとした。写真手前の流れだ。そこに足を入れたとたん、あわてて足を引いた。流れが全部温泉だったのだ。湯温は40度を超えていると思うが、気温も猛暑で35度を超えている。湯気がでない。石に足をのせてなんとか中州に。掘った跡に足を入れると、またしても、「熱ッ」。

Scene06

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

せっかく河原の温泉に辿(たど)り着いたが、今度は熱くて入ることが難しい。温泉の流れは本流と平行に流れくだっている。ということは、流れに沿っていけば、温泉川の温度も少しはさがっていくはず。10分ほど河原を歩いた。ようやく体を湯に浸すことができる温度になった。写真の中央あたりです。小さすぎて見えませんが、僕らがつかっています。いい温泉でした。

Scene07

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

気温がどんどんあがっていく。熱めの温泉につかったが、空からも強い光にさらされ、顔の体感温度は湯の温度とほぼ同じ。野渓温泉は屋外だから水着を着る。ぬれた水着は、こうして干すと、30分ほどで乾いてしまう。東京の夏に比べると、台東は少し湿度が低い気がする。だからよく乾く。

Scene08

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

台湾の超秘湯を案内してくれる廣橋(ひろはし)賢蔵さんの車はよく走る。悪路をものともしないドイツ車だったが、ひとつだけ欠点があった。冷房がドイツ仕様。台湾の強烈な太陽の光に負けてしまうのだ。救い? コンビニでした。コンビニは台湾の暑さを知っていました。ありがたいことにイートインスペースのある店舗も多い。つい休憩。

Scene09

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

次にめざしたのは栗松温泉だった。だいぶ山深いところにあるという。その道に備えてガソリンを満タンに。ガソリンスタンドで働いていたのが、先住民、ブヌン族の女性でした。台湾の先住民は16民族が認定されている。

Scene10

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

台湾の東部幹線道を北上していく。途中にあったのが関山駅。ここで昼食用に名物の駅弁をゲット。この一帯は台湾の米どころでもあるという。台湾の駅弁は、どちらかというと、肉食がっつり系。最近は米の量は減ってきたが、具のボリュームは……。詰める様子は動画をどうぞ。これで75元、約278円。コストパフォーマンスがすごくいい。

Scene11

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

栗松温泉に向けて新武呂渓に沿った道をのぼっていく。と、上から大型バスが降りてきた。道幅は狭く、バスと一般車がすれ違うことができない。標高が高くなり、暑さは楽になってきた。でも、どうして大型バスが……。この先には団体客が宿泊するような温泉郷はないはず。理由は次の写真で。

Scene12

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

進んでいるのは南部横貫公路(なんぶおうかんこうろ)だった。台湾の南部、西側の台南県と東側の台東県を結んでいた。しかし道路脇の表示。この先に通行止めがあるようだ。これも八八水害によるものだった。土砂崩れなどが各所で起き、いまだ復旧していない。向かう栗松温泉はそこにあった。道は大丈夫なのか。不安が広がる。

Scene13

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

下馬の集落をすぎ、30分ほど南部横貫公路を進んだ。栗松温泉への道に入った。ここは以前、案内役の廣橋さんが訪ねていた。しかしそれは1月のこと。道脇の草木は枝や葉をのばし様相は一変していた。前が見えないほど生い茂っている。ここをくだる? 草をかき分けて車はのろのろ進む。

Scene14

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

すると、「ガガガーッ」という車のボディーが傷つく音。「なんだ?」。車を止めて点検すると、みごとに傷が入り、ドアが閉まる部分にはくぼみも。「嫁さんに怒られるーッ」。これが廣橋さんの第一声でした。彼の奥さんは台湾人。いや、日本人でも怒るはず。好きな温泉に行って、車を傷つけて……。くだっていく様子は動画でも。

Scene15

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

道路が鎖で閉鎖されたところまで進んだ。そこに車を止め、栗松温泉への道を歩きはじめる。すると温泉の表示。下の籠には軍手が用意されている。「嘎拉賀(ガラホ)野渓温泉みたいに、きつい山道?」。一度、この温泉を体験している廣橋さんは、「ずっと楽ですよ」。しかしそれは大うそだった。廣橋さんの記憶力って……。次回に。

【次号予告】次回は栗松温泉から下馬集落へ。

※取材期間:2019年7月28日~29日
※価格等はすべて取材時のものです。

■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら

■下川さんによるクラウドファンディング
「バングラデシュのこどもたちに安全な教育環境を コックス・バザールの校舎修繕プロジェクト

」はこちら

 

BOOK

紅葉谷温泉、栗松温泉の下り口へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅9

12万円で世界を歩くリターンズ [赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編] (朝日文庫)

実質デビュー作の『12万円で世界を歩く』から30年。あの過酷な旅、再び!!
インドネシアで赤道越え、ヒマラヤのトレッキング、バスでアメリカ一周……80年代に1回12万円の予算でビンボー旅行に出かけ、『12万円で世界を歩く』で鮮烈デビューした著者が、同じルートに再び挑戦する。

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編】」 (朝日文庫)。

  • 中田浩資

    1975年、徳島県徳島市生まれ。フォトグラファー。大学休学中の1997年に渡中。1999年までの北京滞在中、通信社にて報道写真に携わる。帰国後、会社員を経て2004年よりフリー。旅写真を中心に雑誌、書籍等で活動中。

緑島の朝日温泉へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅8

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