あの街の素顔

C・ロナウドの故郷・マデイラ島でトレッキング 絶景巡り

フランス・パリ在住のジャーナリスト藤原かすみさんは、ヨーロッパ各地をめぐりトレッキングを続けています。今回の目的地は大西洋のポルトガル領マデイラ諸島。ヨーロッパのトレッカーに人気がある、「大西洋の真珠」とも呼ばれる亜熱帯の島です。サッカーのC・ロナウド選手の故郷で、藤原さんが次々に目にした絶景とは。

ワインとロナウドで知られる島

大西洋に浮かぶマデイラは花の島である。花を見るなら春が最高らしいが、夏に行ってみたら、夏もまた花の島であった。

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ジンジャーリリーがいたるところに自生している

お酒の好きな人にとってはマデイラワインの島、サッカー好きにとっては、クリスティアノ・ロナウドが生まれた島。水が豊かな山に恵まれ、トレッカーが集まる島でもあるが、トレッキングガイドを見ると、北半分の山岳地帯に20もあるトレッキングコースのうち、公共交通を使って歩けるのはわずか5カ所。そこで私は、移動の便を考えて、フランスからの8日間ツアーに参加した。

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州都フンシャルの空港から、すぐにバスで島北部の街セイシャルへ向かう。小さな島なので2時間もかからない

州都フンシャルよりずっと東にある、その名もC・ロナウド空港に着くと、青いタイル「アズレージョ」はまぎれもなくポルトガルだ。1000キロ離れた首都リスボンよりモロッコに近いが、15世紀にポルトガル人が漂着、植民し、今はポルトガルの自治州となっている。

空港からまずバスで、バナナが鬱蒼(うっそう)と茂る棚田やロナウドの生地サント・アントニオを右手にみて、フンシャルを素通りし、島を南北に縦断する山あいの道路を島北西の町セイシャルまで移動する。道路脇は紫や白のアガパンサス、アジサイの花盛りだ。右手奥には、苔(こけ)むしたような緑に煙る険しい山が見えた。これが最終日に歩く予定の、島一番の高山地帯だ。険しいとはいえ2000メートル以下なので、どこもかも緑の木に覆われている。ちなみに、マデイラはポルトガル語で「木」を意味するという。

黒いビーチのあるセイシャルを拠点に3日間

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セイシャルは黒い崖の上にできた町

マデイラは何千年も前に火山が造った島で、岩もビーチも黒い。セイシャルは黒い崖の上にできた、黒砂のビーチがある海辺の町で、ここに3泊して毎日違ったトレイルを歩く、という趣向だった。

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セイシャルの民家の入り口に、ブドウの収穫を描いたポルトガルの青タイル「アズレージョ」が

緑の山のてっぺんは雲で覆われて見えず、幾筋かの細い滝が雲から流れる涙のように、山肌を伝って落下していた。初日はゆったりと、バナナやブドウの棚田がある町周辺を散策したが、黒いペブルビーチは小さく、岩礁のビーチはコンクリートにびっしり日光浴の人が寝そべっていて、なんだか晴れ晴れしないところに来てしまったな、が第一印象だった。外国からわざわざこんなビーチに来る人がいるのだろうか。

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セイシャルのビーチ。火山島なので砂は黒い


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セイシャルのもう一つの岩浜。コンクリ・ビーチとでもいおうか

ようやく雲の上へ 野生ミントの香り

翌朝、ミニバスでトレッキングの出発点へ。トレイルを縁取るアジサイやアガパンサス、名前も知らない花々の間を縫う登りは、初日としてはきつかった。標高800メートルあたりに白煙のようにたちこめる雲を突き抜けると、青空が見え、巨大なシダの森の間を歩くと、踏みしめた野生ミントからかぐわしい匂いが立ちのぼる。この島はビーチよりやっぱり山だ。

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ファナル山。標高800メートルくらいまで雲に覆われているこの島で、初めて雲の上に出た


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下の村ファジョ・デ・カルハウに行く道はない。村は無人で、畑仕事にはケーブルカーで行く

ブドウの段々畑を刻むように上下 険しい道

翌日は、海に落ち込むブドウの段々畑を切り刻むように、トレイルを下ったり登ったり。最後はポルト・モニスの大きなビーチに行って泳ぐ、というので楽しみにしていたが、これもまた、海辺の岩礁をコンクリートでつないで有料の海水プールにしたものだった。歩いた後の汗流し、と思えば満足ではあったが。

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段々畑を縫ってトレイルを歩く


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山を刻むトレイル。いま歩いたところが、こんなに険しいとは


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ポルト・モニスのビーチ。岩礁をコンクリでつなぎ、波を防いだプール

クライマックスは「25の泉」と滝巡り

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マデイラ島トレッキングのハイライト、25の泉へのトレイル。水源の泉から水をとる水路沿いに歩く

3日目は、島のトレッキングで一番人気が高い「25の泉」と滝巡りだ。源泉から水をひくためにうがたれたトンネルを通って、ユネスコの世界自然遺産となっている原生林の水路沿いに、だいたい標高1000メートルくらいのところを歩く。

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25の泉。標高1500メートルのパウル・ダ・セラを源とする水が25以上の口から湧き出ている

木がトレイルを覆って日光をふさいでくれるので、涼しくて気持ちが良い。源泉からの水はこの山地を取り巻く農地の灌漑(かんがい)用水になっており、農道やトレイルのそこここに、ひねれば水が出る水場があるのもうれしい。

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25の泉を巡ってから、2段の滝へ

垂直に落ち込む滝からは、涼やかな水けむりがたち、体が冷やされる。この亜熱帯の島では、タンポポもスズランもブルーベリーも、2メートルほどの木に成長するのが愉快である。

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島では何でも大きく茂る。中でも圧巻の巨大なタンポポ

「海の庭」は猫の天国

翌日は、セイシャルを離れ、島の南沿岸にある小さな村、ジャルディン・ド・マール(海の庭)へ。ここにも3泊して、3日間違うコースを歩く。

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ジャルディン・ド・マールの道は白と黒の小石で舗装されている


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漁村だったジャルディン・ド・マールの魚料理

車は村内に入れず、歩道や階段は白黒の石できれいに舗装され、どの家にも花盛りの庭があった。パッションフルーツの実る庭、チョウが飛び回る庭、アジサイの咲き乱れる真ん中にバナナが実る庭……。観光立村のお手本のような村である。野良猫も居心地が良いのか、争うこともなく舗道のあちこちにたむろしていた。

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いたるところでアジサイを見るが、バナナと一緒なのはちょっと不思議な気がする。ジャルディン・ド・マールで


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ジャルディン・ド・マールは猫天国

最終日は、出荷待ちの青いバナナが集まる村の中心にある教会前広場からミニバスに乗り、初日にバスから見た高山地帯まで移動する。

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ジャルディン・ド・マールの教会前広場はバナナの出荷場だ。マデイラはブドウとバナナと花の島

島の最高峰は1862メートルのピコ・ルイボだが、なぜかこれはプログラムに入っておらず、ピコ・グランという1657メートルの山が今回の旅の最高地点だった。

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ピコ・グラン頂上へは岩場のロープを伝ってよじ登る

森を出てかんかん照りの中を歩くので、きつい1日だったが、ロープを伝ってピコ・グランの頂上に登ると、白い雲がクリームのように稜線から流れ落ちるさまが眼下に見え、苦労も報われるようだった。

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ピコ・グランからの眺め。雲が稜線から流れ落ちる


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アガパンサスやジンジャーリリー、シダが茂るトレイル

州都フンシャルの魅力発見

トレッキングの後はバスで州都フンシャルへ。翌朝には帰国するので、滞在は大変短く、ケーブルカーで行けるツーリストスポット、植物園に行く時間はなかった。

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フンシャルの旧市街サンタマリア地区は夜になるとレストラン街に変身


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フンシャルの花売り。ここで初めて民族衣装を見た

夕方と朝方、チラっと散策したフンシャルはなかなか魅力的な町で、知っていれば2、3泊滞在を伸ばしたのに、と後ろ髪を引かれる思いで空港行きのバスに乗った。

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フンシャルの大聖堂

(文・写真 藤原かすみ)

PROFILE

「あの街の素顔」ライター陣

こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

工場もぐるぐる見比べて 「旭川デザインウィーク」(後編)

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