あの街の素顔

養殖トラフグ日本一争い、元寇沈没船発見 長崎県松浦市を訪ねて

九州は観光地が多く、魚やお酒もおいしくて魅力たっぷり。なかでも長崎県は歴史的にも個性が際立っています。今回は県北部に位置し、佐賀県に隣接する松浦市を訪ねました。島々の夏景色を堪能したり、魚料理に舌鼓を打ったり、元寇(げんこう)船の遺物を見学したり。「ああ、行ってよかった」としみじみ思える旅でした。さあ、さっそくみなさんを松浦市にご案内しましょう。
(文・写真、宮﨑健二)

アジやカマスを手際よく選別 街の台所・魚市場

まずは新鮮な魚が毎朝せりにかけられる魚市場を紹介しましょう。ふだんは公開していないそうですが、許可を得て見学させていただきました。張り切って早起きし、朝6時前に着くと、ちょうどアジが船から陸揚げされているところでした。

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とれた魚は船からフォークリフトに移され、市場の中に運ばれます

市場の中では、手作業で魚の選別が行われていました。選別されたアジやカマスが次々とベルトコンベアで運ばれていきます。まさに松浦市の台所という雰囲気でした。

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魚の選別作業。アジは20センチくらいの大きさでした

ところで、長崎県には壱岐、対馬、五島など島がたくさんありますが、松浦市にも島がいくつかあります。ちょいとその島々に行ってみようではありませんか。まずは青島。

きらきらの海とぷりぷりの岩ガキ 青島

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青空と白い砂浜のコントラストが美しい宝の浜。水も澄んでいます

宝の浜(ほうのはま)という浜辺です。ここでは、島を訪れた修学旅行生らが漁の体験学習などをするのだそうです。そういえば、島の港には博多からやって来る中学生たちを歓迎する看板が出ていました。しっかり体験しんしゃいよ~。

その港では、島で養殖している岩ガキを女性2人がせっせと磨いていました。殻をあけて見せてもらうと、ほら、こんなに大きな身が。うひゃあ、よだれが出そうです。

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夏の味覚、岩ガキ。特大のものは人の頭ほどの大きさになるそうです

この青島は人口200人ほどの小さな島です。島の活性化のために一般社団法人「青島○(あおしままる)」を設立し、島ぐるみで水産物の加工品開発などに取り組んでいます。

火祭りと棚田の里 福島

次に紹介するのは福島です。海に面した斜面に稲が青々と茂った棚田がありました。

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土谷棚田。火祭りの時には絶好の撮影ポイントになります

土谷(どや)棚田といいます。毎年9月に開かれる火祭りでは、たくさんのろうそくが並べられて幻想的な風景が生み出されます。

トラフグ養殖日本一をめぐる激烈な争い

近くに浮かぶ鷹島では真夏の強烈な日差しの下、港に漁船が停泊していました。

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鷹島の漁港。磯の香りが風に運ばれて漂っていました

実は松浦市は養殖トラフグの全国有数の生産地で、日本一の座をめぐって佐世保市や長崎市と毎年争っています。農林水産省の統計によると、養殖の「ふぐ類」の生産量は2012~13年は佐世保市に次いで2位でしたが、14年からは3年連続で松浦市が日本一。しかし、17年は長崎市に1位の座を譲る――。女子ゴルフの渋野日向子選手が制したAIG全英女子オープン並みの激戦といえましょう。

昼食には、そのトラフグの刺し身とから揚げが出てきましたよ。

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トラフグの刺し身とから揚げ。ビールに合います

チキンラーメンのCMで新垣結衣が提唱している「一口目最強説」を踏まえて、神経を集中して刺し身の最初の1切れをパクリ。おおっ、ぷりぷりした歯ごたえがたまりません。夏にフグが食べられるなんて、養殖が盛んな土地ならではですね。ちなみに松浦市はアジの水揚げ量も全国有数で今年4月、「アジフライの聖地」を高らかに宣言しています。

【関連記事】刺し身用アジをぷりぷりのフライに 聖地・長崎県松浦市を訪ねて

鷹島は元寇にゆかり 沈没船見つかる

松浦市は日本の歴史に名をとどめる場所でもあります。まずは松浦党(まつらとう)。平安時代の終わりから室町時代末期にかけて君臨した武士集団です。支配地域は現在の佐賀県唐津市、伊万里市から長崎の島原、壱岐、五島まで及んだといいますから、かなりの勢力ですね。日本有数の水軍で、あの元寇にも立ち向かいました。

その元寇ですが、2011年に鷹島沖の海底から元軍の船が発見されました。いわゆる神風が原因と伝えられる元寇船沈没の現場であることが裏付けられたのです。鷹島にある市立埋蔵文化財センターではスタッフの方が元寇の紙芝居を特別に見せてくれました。

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元寇の紙芝居。臨場感がありました

元軍の攻勢に苦しむ武士たち。「このままでは全滅です!」。大熱演に見入ってしまいました。しかも、わかりやすかったです。

センターには海底から見つかった武器や石臼なども展示されています。

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碇(いかり)石や石臼などの遺物

水産物、島の風景、歴史……。旅の締めくくりは、北松浦半島をぐるりと回る第三セクター、松浦鉄道です。夜9時すぎ、松浦駅を訪ねると、最終列車が滑り込んできました。

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松浦鉄道の最終列車。夜の鉄道には独特の風情があります

数人の客を乗せて列車が走り去った後に残ったのは、闇の向こうから聞こえるリンリン、チュルルルという虫の音だけ。松浦市の夜はこうして更けていったのでした。

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 宮﨑健二

    旅ライター。1958年、福岡市生まれ。朝日新聞社入社後、主に学芸部、文化部で記者として働き、2016年に退社。その後はアウェイでのサッカー観戦と温泉の旅に明け暮れる。

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