太公望のわくわく 釣ってきました

グロテスクな私……「照りゴチ」です マダコ爆湧きの東京湾で

西へ東へ、海へ川へと旅して釣りする太公望たちの奮闘記です。魚との知恵比べ、釣った魚で一杯……。目的は人それぞれながら、闘いの後の心地よい疲労と旅情は格別。今回は、朝日新聞の西田健作記者が、東京湾の夏の狙い物・マゴチに挑みました。グロテスクな、でもどこか愛敬のある、高級魚なのです。

「爆釣」の書き込みにそわそわ

まだまだ暑い日が続いています。でも、「強い日差しに焼かれても、魚を!」と思うのが釣り人というもの。江戸前の真夏の釣りものといえば、「照りゴチ」です。狙う魚はマゴチ。英語ではフラットヘッド(平たい頭)と呼ばれる扁平(へんぺい)の大型魚です。日照りが続くこのころに産卵期が終わり、海に濁りが入ると警戒心も薄れて、ごく短期間、荒食いをするようになるんです。いつもなら、おでこ(0匹)覚悟の釣りものですが、この時ばかりは1匹釣れる可能性が高いかも。

グロテスクな私……「照りゴチ」です マダコ爆湧きの東京湾で

横浜・新子安駅のすぐ近くから出船する「だてまき丸」

爆釣の開始はいつなのか。8月に入って、横浜にあるマゴチ専門の船宿「だてまき丸」さんのウェブサイトを毎日毎日眺めていると、ついに「全員GET~! 爆りましたよ~」の書き込みが。時合いを逃してなるものか、とお盆休みに急いで行ってきました。

マゴチは、「冬のヒラメに夏のコチ」と呼ばれる白身の高級魚です。漁獲が少なく、鮮度落ちも早いので、スーパーに並ぶことはめったにありません。特に、ヒラメの味が落ちる夏場には、寿司屋さんや料理屋さんが競って買い求める魚でもあります。こんな魚が食べられるのだから、釣り人はやめられない。釣れれば、ですが……。

朝日を浴びて、さあ出船

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朝の日差しを受けるベイブリッジをくぐって釣り場へ

始発の電車に飛び乗って、横浜・新子安駅近くの乗船場に着くと、それほど大きくない釣り船に既に約30人が乗り込んでいました。お盆休み、恐るべし。午前6時30分の定刻を前に、満船の船はいざ出船。朝日を浴びた横浜ベイブリッジの下をくぐって、横浜港近くの釣り場に向かいます。

グロテスクな私……「照りゴチ」です マダコ爆湧きの東京湾で

餌のハゼ。口に針を刺し、生きたまま泳がせる

「照りゴチ」は、生きているハゼを餌にして狙います。ハゼの上あごに針を刺し、マゴチが潜む底近くを泳がせるのです。釣り場の水深は7メートル。岸壁もすぐ近く。大きなマゴチが餌を求めて、こんな浅場にまで入ってきているなんて。ハゼに針を刺してさっそく釣りの開始です。

底を取っては巻き、マゴチの食い気を誘う

釣り方はとても簡単。仕掛けを底まで落としたら、1メートルほど巻くだけ。針を結んだハリスは1.5メートルの長さなので、ハゼは底を泳ぐことになります。30秒ぐらい待って当たりがなければ、また底を取り直すのがコツ。一連の動作でハリスが引っ張られるとハゼが動き、これがマゴチの食い気を誘うんです。

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竿先をゆっくり上下させてマゴチを誘う

釣り開始から30分ほど。根気よく待っていると、ググ、ググ。竿(さお)先がお辞儀する当たりがありました。でも、ここであわてて竿を立てて合わせてはだめ。マゴチがハゼの頭まで口の中に入れないと、上あごに刺した針がマゴチに刺さりません。

ちょっとだけ糸を緩めて、マゴチがハゼを食べるのを促します。5秒ぐらいでハゼの頭まで「完食」するときもあるし、飲み込むまで1分かかる時もある。それまではじっと我慢。この日はマゴチの食欲も旺盛で、すぐに、グググググ、グググググとなりました。竿が中ほどから大きく曲がるのは、マゴチがハゼを丸ごと口に入れたから。

グロテスクな私……「照りゴチ」です マダコ爆湧きの東京湾で

タモ入れは隣同士で協力し合う

「それ!」。勢いよく竿を立てると、ハゼに刺さっていた針がマゴチに刺さったみたい。浅場なのでマゴチはすぐに海面に姿を現しました。タモですくってもらって、1匹ゲット。40センチほどのまあまあのサイズ。開始早々に1匹釣り上げることに成功です!

グロテスクな私……「照りゴチ」です マダコ爆湧きの東京湾で

早朝のチャンスタイムにマゴチをゲット

どのタイミングで合わせたら針にかかるのか。マゴチ釣りの面白さは、この駆け引きにあります。「早すぎた!」「へたくそ!」「よし、乗った!」。グググ、がある度に、びっしりと並んだ釣り人から歓声が上がります。合わせが早過ぎると針にかからず、遅すぎるとマゴチがハゼをはき出してしまう。海底のマゴチの様子を想像しながら、ベストのタイミングを探ります。

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照りゴチは真夏が本番。みなとみらいに分厚い夏雲がかかる

この日は好釣で、2時間ほどで3匹を釣り上げることに成功。大きいのは45センチ。なかなかの迫力です。

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水深7メートルの海底にこんな大物が潜んでいる

東京湾のマダコ、爆湧きが続く

グロテスクな私……「照りゴチ」です マダコ爆湧きの東京湾で

川崎の東扇島の護岸を狙う

今夏の東京湾の話題と言えば、なんと言ってもマダコが爆湧きしたことです。マゴチとタコが釣れるのはだいたい同じ場所。川崎沖に移動すると、マゴチ以上にタコが釣れる展開になりました。グググ、ではなく、グデーンと重くなったらタコ。私はマゴチよりタコに好かれてしまったようで、300グラム~500グラムを3匹ゲットしました。

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今年東京湾で爆湧きのマダコ。マゴチの仕掛けでも釣れた

結局この日は、マゴチ3匹、マダコ3匹で午後1時過ぎに納竿。船長さんが用意したハゼが足りなくなるほど当たりは多く、満船にもかかわらず、ほとんどの人がマゴチをゲットできました。1匹釣れれば御の字の魚ですから、どうやらいい日に当たったようです。

マゴチは釣る度に活(い)き締めにして、氷で冷やしたクーラーに。鮮度落ちが早い魚なので、十分に血抜きをすることがおいしく食べるコツ。エアポンプで空気を送り、生かして持ち帰る人もいます。

マゴチとマダコ、刺し身の供宴

グロテスクな私……「照りゴチ」です マダコ爆湧きの東京湾で

薄く切ったマゴチと半生にゆでたタコはお刺し身に

家に帰って5枚におろすと、白身は弾力があっていかにもおいしそう。マダコも短時間ゆでて半生にし、どちらも刺し身でいただきました。マゴチの味はフグやヒラメに似ていて、しかも甘みが加わります。食感はプリプリしていて、レモン汁をかけて食べれば、夏にぴったりの味。炎天下で釣り続けた疲れも一気に吹き飛ぶうまさでした。

「照りゴチ」は一時ですが、マゴチ釣りは秋に入ってもまだまだ続きます。浅場のグググググはやみつきになりますよ。

■だてまき丸
http://www.datemakimaru.com/html/

PROFILE

  • 釣り大好きライター陣

    安田明彦、猪俣博史、西田健作、石田知之、木村俊一

  • 西田健作

    朝日新聞記者
    1971年、神奈川県茅ケ崎市生まれ。15年ほど前に千葉県浦安市に引っ越し、ディズニーランドのすぐ近くで魚が釣れることを知り、釣りにはまる。朝日新聞社では文化くらし報道部で美術担当、映画担当などを務め、現在は同部次長(デスク)。外に出られない平日のモヤモヤから、ますます週末の釣りにのめり込んでいる。

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マダイ狙いでマハタやヒラメ 千葉県いすみ市・大原港

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