あの街の素顔

日本にはない水上交通のメリットを堪能「ザ・ペニンシュラ・バンコク」

ライフスタイルジャーナリスト・小川フミオさんが家族でタイの「ザ・ペニンシュラ・バンコク」に宿泊してきました。どうやら推しホテルのようです。

(メイン写真=小川フミオ。チャオプラヤー川対岸から全室リバービューのザ・ペニンシュラ・バンコクを望む)

「ザ・ペニンシュラ・バンコク」を推す理由

いまのタイ・バンコクを楽しむなら、「ザ・ペニンシュラ・バンコク」が推しである。開業は1998年だからすでに開業20周年と、それなりの歴史を持つホテルだが、新しいバンコクを知るのに最適なロケーションだ。

そもそもザ・ペニンシュラ・バンコクは、とてもいい場所に建つ。バンコクを流れる大きなチャオプラヤー川沿い。対岸(東岸)には、名だたる名ホテルがずらりと並ぶ。

開業当初の写真を見ると、ペニンシュラは悪いときに投資したんじゃないかと思うほど、周囲にはなにもない。でもいまは、夜になると川面にオレンジの照明を投げかけるレストランに囲まれている。

いい町には川がある。チャオプラヤー川とバンコクのひとの生活の密接なつながりを見ていると、心がなごむ。河岸に高級ホテルが並ぶのも、地元がこの川を誇りに思っているからだろう。

ザ・ペニンシュラ・バンコクのよさは、品格というか、なにからなにまできちんとしていることだ。スタッフが多くて、ゲストの一挙手一投足を見ていてくれる。これは高級ホテルにもっとも重要なことだと私は思う。

もうひとつのよさは、上でも触れたように、チャオプラヤー川を“楽しめる”ことだ。地上37階建て、すべての客室がリバー・ビューなので、眺めがすばらしい。水は波紋のおかげもあり、どんなに見ていても見飽きることがない(私だけ?)。そのためザ・ペニンシュラ・バンコクにいる時間は至福なのだ。

日本にはない水上交通のメリットを堪能「ザ・ペニンシュラ・バンコク」

こちらはデラックススイート。写真=HSH

川に面しているメリットはそれだけでない。水上交通のメリットを堪能できる。ホテルには船着き場がある。水上シャトルがあって、高架鉄道BTSの駅、対岸のレセプション(ホテルには渋滞を回避するため二つのレセプションがある)、それに「アイコンサイアム (Icon Siam)」という最新の巨大ショッピングモールへ簡単にアプローチできるのだ。

日本にはない水上交通のメリットを堪能「ザ・ペニンシュラ・バンコク」

ザ・ペニンシュラ・バンコクの水上シャトル。写真=小川フミオ

朝から深夜まで運行している水上シャトルを利用していると、川の風がじつに気持ちよい。8月の気温は東京が38度なんていうときも、30度に届かないぐらいで、タイは私が好きな避暑地になっている。日が沈むと、両岸にあるカフェやレストランの明かりが美しく、川をうまく使っている町のよさを感じる。

日本、たとえば東京にも多摩川、墨田川、江戸川、それにそれぞれの支流があるのに、川と生活が密着している場面は少ない。台風の影響を考慮に入れてのことかもしれないが(タイでも水路の町アユタヤなどは2011年の大洪水で被害が甚大だった)、川は橋をかけるだけの場所ではない、と発想が転換できたらいいのにと思う。

ひまさえあれば、家族でアイコンサイアム

日本にはない水上交通のメリットを堪能「ザ・ペニンシュラ・バンコク」

アイコンサイアムにはさまざまなホテルの水上シャトルでやってくるひとが多い。写真=小川フミオ

私たち家族は、ひまさえあれば、ホテルの水上シャトルを使ってアイコンサイアムを訪れていた。なにしろ、なんでもあるところである。南東京に住んでいるひとだったら、玉川髙島屋を数倍巨大にしたような、といえばわかるだろうか。

日本にはない水上交通のメリットを堪能「ザ・ペニンシュラ・バンコク」

2018年11月オープンのアイコンサイアムは巨大な商業空間だ。写真=小川フミオ

ポルシェからドリアンまで、売っていないものはない、という感じである。エビペーストの香り漂うローカル感まるだしのフードコートから、欧米の高級ブランドのショップの数かずまで。いまのバンコクのディスティネーションストアである。

「“タイには高級ブランドのショップがあまりなく、バッグなど、おみやげに頼まれても無理”とこれまで妻に言ってきたが、その言い訳がきかなくなった」と嘆く、バンコク出張が多い知人もいるぐらいだ(笑)。

子どもも喜んだ「アーティスト・イン・レジデンス」のプログラム

日本にはない水上交通のメリットを堪能「ザ・ペニンシュラ・バンコク」

ザ・ペニンシュラ・バンコクが実施している「アーティスト・イン・レジデンス」参加のピチャヤ・オーの作品はスマートフォンをかざすと絵のなかのキャラクターが動き出す。写真=HSH

ザ・ペニンシュラ・バンコクにも、楽しみは多い。最たるものはタイの技術を採り入れたスパだ(私は行っていないが)。たとえば、「ザ・ペニンシュラ・ロイヤルタイ・マッサージ」が、90分で4000バーツ(約1万4000円)といったぐあいである。個室数も多く、カップル用も。色気がちゃんとあるではないか。

アート好きのひとには、ホテルが2019年に開始した「アーティスト・イン・レジデンス」のプログラムがおもしろいはずだ。「都市の文化を宿泊ゲストに届けたい」として、新進気鋭のタイ人アーティストに2カ月間スタジオを提供して、作品を制作してもらうのである。

私が訪れたときは、ちょうど、5月から7月まで”仕事”をしていたタイ人アーティスト、Pichaya Osothcharoenpol(ピチャヤ・オーと呼んだりもするらしい)が手がけた作品の数かずがホテル各所を飾っていた。

動物や植物の伝統的なモチーフを使って、ワンオフのファブリック(刺繡〈ししゅう〉や縫製などの製作はホテル内のスタッフが行ったそうだ)や壁紙などが作られていた。ただしどれにも現代的なひねりが加えられている。

スマートフォンに専用アプリをダウンロードすれば、カメラをかざすと絵のなかのモチーフが動き出すのだ。壁紙のなかからサルやちょうちょが飛び出してきたりするのを見ていると、タイの自然信仰を連想させて興味ぶかい。子どもも喜んでいる。

ホテルの食事もかなり得点が高く、周辺も楽しい

日本にはない水上交通のメリットを堪能「ザ・ペニンシュラ・バンコク」

ザ・ペニンシュラ・バンコク内「ティプタラ」のマトンを使ったマッサマンカレーは辛さひかえめでした。写真=小川フミオ

そうそう、食事も、ザ・ペニンシュラ・バンコク内のタイ料理レストラン「ティプタラ」はかなり得点が高い。提供されるのは「タイ家庭料理」だそうだ。おなじみの料理名がメニューに並ぶが、味つけは上品だ。

町場で食べる料理との違いは、暴力的な味付けがないことと、ハーブがふんだんに使われていることである。日本で注文したら会計は一体いくらかと震え上がりそうなぐらい、山盛りの高級(日本基準)ハーブである。複雑な芳香が口中から鼻孔に抜けるときが、タイ料理の神髄なんだろうなあとしみじみ思った。

照明はほとんど真っ暗というのも、私の好みだ。タイのよさはそもそも照明をあまり使わないところである。お店に入ってもぼんやり暗い。あれがいい。で、高級レストランは夜、ほとんど真っ暗だったりする。何を食べたか、あとで画像を明るくしてみて初めて分かるぐらいだ。極端なことをいえば。

日本にはない水上交通のメリットを堪能「ザ・ペニンシュラ・バンコク」

アイコンサイアムのフードコートでは写真の麺料理のようにあらゆるメニューが並ぶ(味付けは自分で、というのがタイふう)。写真=小川フミオ

ホテル近くには地元のひとが通う食堂が並ぶ。屋台でドリアンを切って売っている。そういうところでは一食、50バーツ(約170円)ぐらいだ。アイコンサイアムには高級レストランも入っているが、90バーツ(約300円)も出せばガパオライスが食べられるフードコートがあるのだ。これも楽しい。

過ごし方を割り切れるなら、利便性は高い

日本にはない水上交通のメリットを堪能「ザ・ペニンシュラ・バンコク」

チャオプラヤー川ぞいにはハイライズ(高層ビル)が立ち並ぶようになってきた。写真=小川フミオ

スクンビットのような繁華街へ行くにはやや遠い(混む)が、買い物はアイコンサイアムで、町の雰囲気は周辺の散策(寺院もある)で、と割り切ってしまえるなら、ザ・ペニンシュラ・バンコクの利便性は高く感じられるだろう。

タイの経済成長率は、ご多分に漏れず、すごくよくはない。大国間の緊張関係も大きく影響している。でもチャオプラヤー河岸は、さらに新しいホテルの建設計画が進行しているし、大きなホテルが高級分譲レジデンスを販売して、中国を中心に顧客を意欲的に集めているようだ。

いい意味で田舎っぽいバンコクを懐かしみつつ、ダイナミックな新しさを味わった旅だった。

■ザ・ペニンシュラ・バンコク

https://www.peninsula.com/ja/bangkok/5-star-luxury-hotel-riverside

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 小川フミオ

    クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。「&M」ではクルマの試乗記をおもに手がけていますが、グルメ、旅、ホテル、プロダクト、建築、インタビューなど仕事の分野は多岐にわたっています。クルマの仕事で海外も多いけれど高速と山道ばかり記憶に残るのが残念です……。

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