楽しいひとり温泉

温泉+湯治 夏の疲れに栃尾又温泉「自在館」、朝食は絶品「ラジウム納豆」

ひとりでも温泉を楽しみたい! 連載「楽しいひとり温泉」は、全国各地の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する、温泉ビューティー研究家の石井宏子さんが、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。

今回ご紹介する温泉とお宿は、約400年続くという湯治の名湯、新潟県・栃尾又温泉「自在館」。ぬるい温泉に長くつかる栃尾又流入浴法で、心も体もゆるゆる解放されて、夜もぐっすり眠れます。ゆっくり休んで、自分を癒やす、おひとり様にもやさしい温泉です。

疲れがとれない、眠れない。夏の疲れを温泉で癒やしたい

ようやく秋の気配を感じられるようになってきました。でも、いまだに夏の疲れがたまっているようで、なんだか調子がでません。温泉の力を借りて不調を吹き飛ばしたいと、新潟県・栃尾又温泉へひとり湯治にでかけました。

上越新幹線・浦佐駅から宿の無料送迎バスで楽々到着。400年続く湯治場の面影を残す風情がすてきです。TOP写真左にあるのは、築100年の大正棟で、こちらにも泊まれる部屋があります。本館とつながる渡り廊下も木造で趣があります。

温泉+湯治 夏の疲れに栃尾又温泉「自在館」、朝食は絶品「ラジウム納豆」

トイレ付和室ベッドルーム。ひとり宿泊の時はベッドをひとつにして広く使える

今回泊まったのは、トイレ付和室ベッドルーム。湯治には上質な眠りが大切と考えて採用したという布団「ムアツ スリーブスパ」がこだわりだそうです。ベッドの仕組みも機能的、手作りの木製のベッド台は人数にあわせて押し入れへしまえるようになっているので、ひとり宿泊の時には、ベッドを1台にして部屋が広く使えるようになっています。窓辺にソファとテーブルもあるし、テレビの横には、書斎机と椅子、Wi-Fiも使えて、とても快適。

これなら、パソコンを持ち込んで湯治しながら仕事もできちゃう。と、思ったのですが……。それは、1泊では無理でした。理由は後ほど語ります。

不自由のない自由さが魅力、ノンストレスで過ごせます

温泉+湯治 夏の疲れに栃尾又温泉「自在館」、朝食は絶品「ラジウム納豆」

館内の貸し切り風呂や送迎バスの予約も自分の好きなペースで自由に

湯治宿ならではの自由さを大切にしています。たとえば、館内にある三つの貸し切り温泉に入るには、ロビーの壁にある予約票に名前を記入すればOK。時間になったら、しゃもじのついた鍵を持って貸し切り風呂に入り、出たら鍵をここへ戻します。送迎バスの予約も自分で記入、連泊滞在の場合は、駅へ行く送迎バスに乗って途中下車し、道の駅や地域の食堂で買い物やランチをし、戻りのバスで宿へ帰るということも可能です。

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無料で好きな時に飲めるドリンクが豊富でうれしい

この温泉は飲むことができるので、冷やした温泉水、ミントレモン温泉水、お茶や紅茶、豆からひくコーヒーマシンなどがロビーにあって、いつでも自由に飲めます。部屋に持っていくためのお盆もあるし、エコボトルを持参したら湯治生活は完璧です。

栃尾又温泉の神髄を知る大浴場「霊泉の湯」

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大浴場「霊泉の湯」のしたの湯。36度のぬる湯に1時間くらい入る

栃尾又温泉の始まりは奈良時代といわれ、古い文献にも湯治のことが書かれています。泉質はラドンを含む単純放射能温泉で、細胞を活性化して免疫力を刺激し、自律神経を整える温泉です。pH8.6のアルカリ性、源泉温度は約36度で、体温とほぼ同じ温度のままかけ流しにした湯船に入ります。ぬる湯の温泉に長時間つかるのが栃尾又流の伝統的入浴法で、この癒やしを求めて、何度も湯治に訪れる人が多いのです。

大浴場「霊泉の湯」は共同湯にもなっていて、栃尾又温泉にある3軒の宿のゲストが皆、入りに来ます。したの湯、うえの湯、おくの湯と三つあり、男女日替わりで利用します。今日は幸せなことに、最も歴史あるしたの湯が女湯でした。階段を何段も下って渓流の源泉に近い、したの湯に向かいます。

湯船の縁に並ぶ不ぞろいの石からお気に入りを探して頭をのせ、ぼーッと脱力。魅惑のぬる湯に入っていると、次第にお湯と自分の体の境目がわからなくなって、無重力の宇宙空間にいるような気持ちに。気が付くと、うとうととしていました。いったい、どれだけの時間が過ぎていったのか、時空を超えたかのように、心も体も無の境地といった感じ。「これは、温泉の座禅だ」と、思いました。周りを見ると、外の緑をぼんやり眺める人、本を読む人、湯の中で居眠りする人など、みんな、静かに自由にくつろいでいます。加温した熱めの温泉もあるので、寒くなったらさっと入って温まります。

温泉+湯治 夏の疲れに栃尾又温泉「自在館」、朝食は絶品「ラジウム納豆」

宿のロビー奥のラウンジ。本を読んだり、ぼーッとしたりして休憩

栃尾又温泉に来ると、とにかく、眠くなります。眠くて眠くて何もできないくらいぼーッとします。理由は温泉です。体温と同じくらいのぬる湯に長湯することで副交感神経優位になり、心身の緊張がゆるんで、体が休眠モードになるのです。「そうだった。この温泉に入ると1泊目は眠すぎて仕事どころではなかった」と、思い出しました。

ゆっくりと宿へ戻り、ロビー奥の椅子に腰かけて、ぼんやりしながらしばし休憩。このようにしている“ぼんやり仲間”はけっこう多くて、みんなここで癒やされているんだなあと、幸せな気持ちになりました。

毎日食べてもおいしくて優しいのが湯治食

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夕食は、一汁四菜が基本。一汁六菜にするとイワナの炭火焼きなどが付く

湯治宿は、何日も連泊する人もいます。この宿も2泊か3泊で来る人が多いそうです。自炊で湯治をする人はほとんどいなくなった今、湯治宿としてどんな食事を出すべきかとあらためて考えたという湯治食は、毎日食べてもおいしくて心と体にやさしいものを意識しているとのこと。

野菜をたっぷり、肉や魚もバランスよくの一汁四菜を基本として、好みに合わせて一汁六菜、一汁七菜とカスタマイズできます。今回はイワナの炭火焼きとニジマスのお造りがつく一汁六菜にしてみました。汁物と魚沼・湯之谷産コシヒカリ米のごはんは、自分で好きなだけよそってくることができます。

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本日のメインはズッキーニとひき肉の重ね焼き

この日は珍しいユウガオのくじら汁(具だくさんで元気がつく一品でした)、ピーマンとしらすのカツオあえ、春雨の酢の物、後から熱々の揚げ出し豆腐も運ばれます。メインは後から登場。ズッキーニのひき肉重ね焼き、きくらげ佃煮(つくだに)、ふかしナス、ミニトマトと、ボリュームたっぷり。一汁六菜にしましたが、一汁四菜でも十分でした。おひとり様のゲストも多くて、このエリアでないと飲めない地酒の緑川を楽しんでいる人もいます。食事もマイペースで自由に。これも自在館の魅力です。

ぐっすり眠った翌朝はひとり貸し切り温泉へ

温泉+湯治 夏の疲れに栃尾又温泉「自在館」、朝食は絶品「ラジウム納豆」

自在館の貸し切り露天風呂。予約票に名前を書いて無料で入れます

宿にある貸し切り露天風呂「うけづの湯」で朝温泉。到着した時に、予約票に書いておいたのです。こちらは、自在館独自の自家源泉。泉質は同じですが、39度~42度くらいに加温してかけ流しにしています。熱めの温泉ですっきり爽やかに体が目覚めていきます。

おいしいおいしい朝ごはん、名物「ラジウム納豆」

温泉+湯治 夏の疲れに栃尾又温泉「自在館」、朝食は絶品「ラジウム納豆」

朝ごはんも魚沼産コシヒカリ米。ヨーグルトも自家製です

お待ちかねの朝ごはん。野菜サラダは好きなだけ。湯治食は何日も滞在する人もいるので海のものも出てきます。アジの開きがついて、なんだかうれしい。豆乳をぐびッと飲んで、いただきまーす!

温泉+湯治 夏の疲れに栃尾又温泉「自在館」、朝食は絶品「ラジウム納豆」

宿オリジナルの「ラジウム納豆」が絶品

宿の名物でもある「ラジウム納豆」は、新潟県内の契約農家の大豆に栃尾又のラジウム温泉をたっぷりすわせて、小出にある大力納豆で作られた、ここだけのオリジナル。ごろごろと大粒で豆のうまみがすごい。

送迎バスは12時出発でゆっくりなので、食休みしたら、もう1度、ぬる湯で長湯をしてから帰ります。

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1.ひとりに優しい宿
2.心身を癒やすぬる湯
3.毎日食べたい優しい湯治食

新潟県・栃尾又温泉「自在館」
http://www.jizaikan.jp/

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PROFILE

石井宏子

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)ほか。新著「感動の温泉宿100」(文春新書)が10月に発売された。

温泉+絶景ざんまい 8月にオープンしたばかり「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」

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