京都ゆるり休日さんぽ

京都・嵐山に新アートスポット。主役級の日本美術に出合う「福田美術館」

暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。

今回訪ねたのは、京都が誇る名勝・嵐山に誕生した、アートスポット「福田美術館」。10月にオープンを控えた嵐山の新名所には、一体どんなアートと体験が待ち受けているのでしょう。

嵐山の絶景をのぞむ「100年続く美術館」

京都・嵐山に新アートスポット。主役級の日本美術に出合う「福田美術館」

川沿いの道から1.5メートルほど高く土盛を造り建てられた。水害対策だけでなく美しい眺望にもかなう

四季折々の色に染まる嵐山と、桂川にゆるやかな弧を描く渡月橋が織りなす風景。そんな絶景を特等席から眺めるように、川べりの小高い地に「福田美術館」は誕生しました。コンセプトは「100年続く美術館」。伝統を意識しながらも日本建築の未来を見据えた同館は、最新の建築素材や技術を取り入れながらも、ずっと前からここにあったかのように嵐山の景色に溶け込んでいます。

京都・嵐山に新アートスポット。主役級の日本美術に出合う「福田美術館」

縁側をイメージした廊下は、内と外とをゆるやかに隔てる空間。網代模様のガラスに、伝統とモダンの融和が感じられる

エントランスから展示室へと向かう途中、思わず足を止めるのは、廊下から見渡す嵐山の借景と庭園との調和。庭園の大部分を占める階段状の「水盤」が、その向こうに広がる桂川とまるで一続きになっているかのように、光を受けてキラキラと輝きます。川を行き交う遊覧船も、観光客でにぎわう渡月橋も、目の前にありながらまるで別世界のように静謐(せいひつ)な光景。嵐山の地が、この美術館の持つかけがえのない財産の一つなのだと気付かされます。

京都・嵐山に新アートスポット。主役級の日本美術に出合う「福田美術館」

庭園の水盤が川面と一続きにつながる光景は、立ち止まって眺めずにはいられない

「嵯峨野で生まれ育ち、京都で事業を続けてきた福田吉孝氏(アイフル社長で福田美術館オーナー)の『地元に恩返しがしたい』という思いから、当美術館は設立されました。この庭は、嵐山の自然と一体になりながら、『一年中、花が絶えない場所に』というオーナーと建築家・安田幸一氏の思いを形にしたものです」

開発準備室・室長の竹本理子さんはそう話します。

京都・嵐山に新アートスポット。主役級の日本美術に出合う「福田美術館」

渡月橋をのぞむパノラマビューを堪能できるカフェ。人気のカフェ「パンとエスプレッソと」との共同開発メニューなどが登場予定

渡月橋が最も美しく見える位置に設けたカフェは、来館者だけの特権。ここでも、庭園と嵐山の自然が調和する絶景を眺めながら、美術鑑賞の余韻にひたったり、食事やスイーツを楽しんだりすることができます。

幻の名品や大作を含む、驚き満載のコレクション

京都・嵐山に新アートスポット。主役級の日本美術に出合う「福田美術館」

横山大観「富士図」(1945年ごろ)など大作が多い。ほの暗い明かりは日本美術をより美しく見せるため

約1500点から成るコレクションは、江戸時代の琳派円山四条派から明治時代以降の京都画壇への流れを辿(たど)ることができます。円山応挙与謝蕪村伊藤若冲ら江戸時代の絵師の作品から、横山大観をはじめとする近代名画、日本有数の竹久夢二のコレクションも含まれます。さらに、存在は知られていたものの行方不明だった作品や数十年ぶりの公開作、大作が多いことにも注目。日本美術への興味をグッと引きつける、インパクトのある作品が待ち受けています。

京都・嵐山に新アートスポット。主役級の日本美術に出合う「福田美術館」

葛飾北斎「端午の節句図」(1844年)。金箔(きんぱく)の貼られたかぶとや花入(はないれ)、緻密(ちみつ)なディテールまで間近に

京都・嵐山に新アートスポット。主役級の日本美術に出合う「福田美術館」

本邦初公開となる狩野探幽「雲龍図」(1666年)(左端)や、行方が分からなくなっていて78年ぶりに公開される木島櫻谷(このしまおうこく)「駅路之春(うまやじのはる)」(1913年)(右端)など。※いずれも開館記念展Ⅱ期(11月20日~来年1月13日)で展示予定

「日本美術になじみのない方でも楽しめて、詳しい方でも感動がある。鑑賞する人があっと驚けるような、大きくてわかりやすい作品が多いのが特長です。展示室のガラスケースは、世界最高水準の透過率で美術品のすみずみまで味わっていただけるよう特注しました。また、ケースの奥行きは30センチメートル~最大1メートル。30センチメートルだと、画家の筆致や細部の描き方まで間近に、くっきりと見えるので驚くはずです」と、同館の学芸課長である岡田秀之さんは語ります。

京都・嵐山に新アートスポット。主役級の日本美術に出合う「福田美術館」

作品が近いと微妙なグラデーションや立体感までリアルに感じられる。竹内栖鳳(せいほう)「猛虎」(1930年)

観光地のにぎわいから一歩遠のき、心静かに嵐山の眺望を楽しみながら、日本美術の新たな発見や感動に出合える美術館。アートと空間と風景を余すことなく味わったら、「もっと日本美術を知りたい」と早くも再び訪ねたくなるに違いありません。100年後も、その先も、嵐山に根ざす新名所となりそうです。(撮影:津久井珠美)

京都・嵐山に新アートスポット。主役級の日本美術に出合う「福田美術館」

川沿いの道からコーヒー専門店「アラビカ京都 嵐山」のある角を北に曲がると入り口が。10月1日(火)にオープンし、1月13日(月・祝)まで開館記念展

福田美術館
https://fukuda-art-museum.jp

BOOK

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京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が6月7日に出版されました。&TRAVELの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。

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PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告、家族写真など、多岐にわたり撮影に携わる。

古いもの好きの心くすぐる、京都のビンテージショップ「BROWN.」

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