永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(25)摩天楼のはざまの光と影 永瀬正敏が撮ったニューヨーク

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回はニューヨークの摩天楼のはざまでふと目にした風景。思わぬものが写り込んでいました。

(25)摩天楼のはざまの光と影 永瀬正敏が撮ったニューヨーク

© Masatoshi Nagase

ジョン・F・ケネディ国際空港からニューヨーク市内のホテルへタクシーで向かう途中、車が信号待ちをした。ふと外を見ると、周囲の光と影のコントラストが美しかったので、カメラを構えた。

日中の強い太陽光に照らされたビルの輝く壁面がまずあって、その手前、中央には街灯がシルエットで写っている。周囲のビル、隣の車線に停車中の車と、ほかは影の中に沈んでいる。道路に反射したビルの窓枠と横断歩道が交差して模様を作る。右端には星条旗も写っていて、それらすべてのものが織りなす不思議な雰囲気がいい。

車内からガラス越しに撮ったので、よく見ると、車の窓ガラスにタクシーの中が写り込んでいる。右側には、僕自身だろうか、人の影のようなものも写っている。光と影のコントラストに、内と外の重なりが、アクセントを加えている。

何げない気持ちで撮った1枚だけれど、改めて見直してみると、おもしろい写真だと思う。ただ、僕があれこれ説明するよりも、ご覧になった方がどんな印象を持ったか、それをぜひ聞いてみたいと思う。僕が写真に切り取った瞬間が、どう受け止められたかを教えていただくことは、僕の喜びだから。

PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に石井岳龍監督「パンク侍、斬られて候」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

(24)立っているだけで絵になる男 永瀬正敏が切り取ったニューヨーク 

一覧へ戻る

(26)街に増殖するハートマークは? 永瀬正敏が撮ったブルックリン

RECOMMENDおすすめの記事