<2>ラグビーから見えてくる、フィジーが“ハッピー”であふれる理由/パウロ・ナワルPR

青い海と空、昔ながらの文化が息づく楽園、フィジー。“幸せ”があふれるこの国の魅力を4回にわたってお届けするシリーズ第2回は、第1回ラグビーW杯でフィジー代表副主将を務めたパウロ・ナワルさんのインタビューです。
母国のフィジーの素晴らしさと、9月20日より開幕するラグビーW杯への思いをうかがいました。

自然とともに育つ、フィジーのラグビースタイル

——フィジーでは、国民的スポーツと言われるほど、ラグビーが人気だとうかがいました。日本でいえば相撲のようなものでしょうか?

そうだと思います。違いは、相撲は日本発祥ですが、ラグビーはフィジーではなくイギリス発祥。初めてラグビーがフィジーに入ってきたのが1884年です。しかしそれ以前から、ビーチや原っぱを走り回ったり、ココナツの木に登ったりしていました。指や握力も強い。広大な自然の中で楽しく遊んできたフィジーの人たちに、ラグビーはフィットしたのだと思います。

——生活環境がそのまま、ラグビーの能力につながったのですね。

もともとの身体能力とも関係していると思います。オセアニアと呼ばれる太平洋地域には、多くの島々がありますが、ポリネシア、ミクロネシア、メラネシアの3つに分かれます。フィジーはメラネシアで、メラネシアは他にパプアニューギニアやソロモン諸島があります。トンガやサモアはポリネシアで、肌の色も違います。フィジーの人たちは、走るのが好きで、手足が長い。これがラグビーのスタイルにも関係しています。フィジーのラグビーは、ランニングラグビー。走ってパスをつなぐラグビーです。サモアやトンガは体格がよく激しいコンタクトプレーも多いんですが、フィジーの選手たちはコンタクトプレーよりも、サイドステップで相手を抜き去ったりパスしたりします。

<2>ラグビーから見えてくる、フィジーが“ハッピー”であふれる理由/パウロ・ナワル

©フィジー政府観光局

——フィジアン・マジックと呼ばれるフィジーのラグビーの特徴を教えてください。

とにかくシンプル、がすべて。フィジーの選手たちの才能を生かすには、シンプルでわかりやすい指導がいちばんだと思っています。試合中、ハッピーなときの彼らは、どんなチームにも止められない。リオ五輪の決勝がいい例ですね。7人制ラグビーで、フィジーがイギリスを下し、金メダルを獲得しました。入場トンネルから出てくるときの表情を見るとすごく対照的でした。イギリスは表情がかたかったけど、フィジーはみんな楽しそうでハッピーにしている。シリアスになるとペースが崩れ、戦術が複雑になりすぎると直感のまま動くことができなくなるんです。フィジー・フレア(ひらめき)とも言いますが、フィジーの独特なスタイルだと思います。

——ハッピーでいることが、いいプレーにつながっていく、ということですね。

これは私が日本でコーチするときも意識していました。特に7人制ラグビーの選手には、リラックスして試合を楽しむように呼びかけました。例えば多くの国では、両手でボールを持ってパスするように、と教わります。でもフィジーでは片手で持つこともありますし、それが武器でもある。だから私は日本の選手たちにも、タックルを受けながら片手でパスをする「オフロードパス」を紹介しました。選手に必要なのは、オープンマインドと柔軟な思考です。そして練習を重ねることでスキルが磨かれ、自信がつきます。

特別な試合の時だけ披露するウォークライ「ジンビ」

——パウロさんご自身はどのようにラグビーを始めたのでしょうか。

3歳ぐらいの時から外でおにごっこをして遊んでいて、6歳の頃にはタッチラグビー(タックルの代わりにタッチをするラグビー)をしていました。ボールもなかったので、ココナツの実や、新聞を丸めたものをボールの代わりにしていました。投げられればなんでもよかったのです。茶色いココナツは軽くて、投げやすいんですよ。当時、フィジーのラグビーチームがヨーロッパに遠征に行った頃、私はまだ6歳でした。祖父が月に1回、町まで年金をもらいに行くときに、新聞を買ってきていたんですが、その新聞に載っていたラグビーチームの写真を見て、「わー、すごい、僕もこういうふうになりたい」と思ったのを今でも覚えています。すべてはあの瞬間から始まったのだと思います。その後、13歳のときにナイリリリにあるカソリックのミッションスクールでラグビーをプレーするようになり、翌年には地区代表として小学生の全国大会に出場しキャプテンを務めました。

<2>ラグビーから見えてくる、フィジーが“ハッピー”であふれる理由/パウロ・ナワル

©フィジー政府観光局

——今ではフィジーから日本に来る選手も多いですが、91年当時、初めてフィジーからのラグビー選手として来日したのがパウロさんでしたね。

フィジーのラグビー仲間であったシリロ・ロボクロ氏と共に日野自動車に入りました。10年間、日野自動車に所属し、海外サービス部という部署でトラックのマニュアルの英語をチェックする仕事をしつつ、プレーをしました。私は日本に住んだ経験しかないので、他の国のことはわかりませんが、仕事をしながらプレーをするには、日本はとてもいい環境でしたよ。ラグビーのために来たのだから、とラグビーに集中できる環境を与えてくれて、手厚くサポートしてくれました。日本では、時間を厳守し、誠実で、規律を守ることを高く評価します。私はフィジーで教師をしていたので、そのシステムが理解できましたし、しっくり来ました。今は日本で活躍するフィジー出身の選手も多く、彼らが与える影響力を楽しみにしています。

<2>ラグビーから見えてくる、フィジーが“ハッピー”であふれる理由/パウロ・ナワル

現役当時のパウロ氏 ©GettyImages

——いよいよ日本でラグビーW杯が始まりますね。

日本にとっては大きなアドバンテージだと思います。ホームでプレーできるのはやはり、スポーツでは大きなプラスです。英語では”my turf”(「自分の芝」=縄張り)という表現があるほどですから。日本は予選プールもいい組み合わせにいますよ。アイルランド、スコットランド、ロシア、サモア。2勝はかたいんじゃないかな。決勝に進むにはもう1勝が必要。スコットランド戦にチャンスがあるかもしれません。フィジーチームにも良い選手がいます。フォワードも良いですよ。背が高く、体格が良く、走力のある選手がいる。俊足のバックスと交わることがあれば、かなり盛り上がると思います。活躍が楽しみですね。

——ニュージーランドの「ハカ」のように、フィジーにも試合前のウォークライがありますね。

フィジーでは「Cibi(ジンビ)」といいます。毎試合やるわけではなくて、ワールドカップや国際的な公式試合といった特別な試合の時だけ行っています。

<2>ラグビーから見えてくる、フィジーが“ハッピー”であふれる理由/パウロ・ナワル

 

喜びも悲しみも、みんなで“シェア”する、ピースフルな環境

——フィジーの魅力について教えてください。

ホスピタリティーと、人々のパーソナリティ、ピースフルな雰囲気。これに尽きると思います。フィジーの人たちは、穏やかで温かく、面倒見がいい。これは、伝統的に、複数の家族が一つのコミュニティーの中で暮らしていて、シェアしたり、助け合ったり、というのが当たり前だからです。ハッピーなことも、悲しいことも、みんなでシェアする。そういう文化があります。のんびりした「フィジータイム」で暮らしていて、時間を気にしてセカセカすることがありません。フィジー人はなにが起きていようとも、良い時間を過ごせているという自信を持っています。もしも世界がバラバラになっても、彼らはハッピーなままで「センガ・ナ・レンガ」(問題ないよ)と声を掛けあい、昼寝をするでしょう。それがストレスをためない秘訣なんです。

——日本と共通する部分もありますか?

伝統や慣習を大事にするところは日本と共通しているかもしれません。フィジーには「ヤコナ」または「カバ」と呼ばれるセレモニーがあり、日本の茶道と似ているところがあります。地元の人たちにとって伝統的な飲み物で、結婚式や誕生日などの集まりのときにも飲まれます。

<2>ラグビーから見えてくる、フィジーが“ハッピー”であふれる理由/パウロ・ナワル

©フィジー政府観光局

——フィジーを観光で訪れる際に、オススメがあれば教えてください。

アクティブに楽しみたければ、ビーチがたくさんあります。シンガトカの砂浜からは珊瑚礁が見渡せます。ヤサワ諸島は、伝説が残る水中の洞窟と、美しい青い海が有名です。ママヌザ諸島ではシュノーケリング、タベウニではサメとダイビングすることができます。私はまだやったことはありません(笑)。島から島へ、アイランドホッピングもいいですね。のんびりしたい人は、サンセットディナークルーズを楽しむのもステキだと思います。「メケ」と呼ばれる歌とダンスのショーもぜひ楽しんでください。

<2>ラグビーから見えてくる、フィジーが“ハッピー”であふれる理由/パウロ・ナワル

©フィジー政府観光局

フィジーに行ったら、ぜひ食事も楽しんでほしいですね。現地では輸入品は高いので、地元で採れた新鮮なものを食べています。キャッサバ、タロイモ、ヤムイモなど。日光量が豊富で、適度に雨が降るので、トロピカルフルーツも野菜も豊富にあります。日本もフィジーも海に囲まれた島国ですが、フィジーでは生の魚はあまり食べません。ココナツミルクで魚を煮たものや、デザートのキャッサバ(タピオカの原料)のケーキもぜひ試してほしいです。タピオカをつぶし、バナナとココナツミルクを混ぜたものを、バナナの葉で包んで蒸したり、アースオーブン(自然由来の素材で作った伝統的な窯)に入れたりして作るんですよ。

【動画】<2>ラグビーから見えてくる、フィジーの“ハッピー感”/パウロ・ナワル

パウロ・ナワル

フィジー出身。男子7人制ラグビー日本代表スポットコーチ。15人制ラグビーと7人制ラグビーともに、元フィジー代表。現役時代のポジションはSH(スクラムハーフ)。第1回ラグビーW杯でフィジー代表副主将を務め、難しいところへのパスを決めていく「フィジアン・マジック」でチームをベスト8に導く。長男のマヌエリ・ナワル選手は白鷗大学に留学し、2006年にラグビーU21のフィジー代表に選出されている。

(文・高橋有紀 写真・山田秀隆 撮影協力:つくば秀英高等学校)

>>フィジーの特集はこちら

■フィジー政府観光局
https://www.fiji.travel/jp

誰にも邪魔されない夕焼けスポットを目指せ! 新潟県・粟島(前編)

一覧へ戻る

ワルシャワで必ず訪れたい、ポーランドの文化がわかる博物館5選

RECOMMENDおすすめの記事