永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(26)街に増殖するハートマークは? 永瀬正敏が撮ったブルックリン

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回はニューヨーク・ブルックリンの街角に「増殖」していたハートマーク。いったい、何?

(26)街に増殖するハートマークは? 永瀬正敏が撮ったブルックリン

© Masatoshi Nagase

「信じられない」を連発しながら、ずっと歩いていた。ここはニューヨークのブルックリン。久しぶりにたずねてみたら、すてきなホテルやカフェが並ぶ、すごくおしゃれな街に変わっていた。僕が若い頃によく行ったブルックリンは、地元の人と一緒に歩かないと怖い場所だった。

もちろん、僕が行っていた場所はブルックリンの中でも危なかった、というだけかもしれない。映画監督スパイク・リーの弟、サンキ・リーがブルックリンに住んでいて、彼によく、古着屋さんに連れていってもらった。めちゃめちゃ安かったから。その頃は、ちょっとした空きスペースに、いっぱい注射器が落ちているのをよく見かけた。

今は、赤ちゃんをベビーカーに乗せた方が普通に歩いている。あの頃には想像できなかった光景だ。マンハッタンに住んでいた人が、家賃が上がったからとブルックリンに来たけれど、ブルックリンもおしゃれな街になって家賃が高くなった、という話も聞いた。

単なる落書きだと思うけれど、ブルックリンのあちこちで、こういうハートマークを見つけた。地面に描いてあるものもあり、見つけるたびに写真を撮った。これは、その中の1枚だ。見ていると、街が幸せになっているんだな、という感じがしてきた。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に石井岳龍監督「パンク侍、斬られて候」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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