にっぽんの逸品を訪ねて

映画のロケも多数 ノスタルジックな海軍の街「東舞鶴」

日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介する連載「にっぽんの逸品を訪ねて」。

今回は、旧海軍ゆかりの赤れんが倉庫群などノスタルジックな風景が残る、京都府舞鶴市の東地区「東舞鶴」です。近年、『アルキメデスの大戦』『海賊とよばれた男』、リメイク版の『日本のいちばん長い日』など、数々の映画のロケ地にもなり見どころが満載。また、シミュレーションゲーム『艦隊これくしょん-艦これ-』ファンの若者の訪問も増えています。

「東舞鶴」、凛とした街並み、そして思いやり深いといわれる気質

「“ここでしか見られない”ものにたくさん出会える街です」と聞いて訪れたのが京都府舞鶴市東地区。「東舞鶴」とよばれるエリアです。リアス式海岸が続く舞鶴市は古くから天然の良港として栄え、明治時代に旧海軍の鎮守府が置かれると、日本海側唯一の軍港として発展。現在は、海上自衛隊と海上保安庁の拠点が置かれています。

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かつて海軍の鎮守府が置かれた

旧海軍が使用した壮麗な赤れんが倉庫群や間近に迫る海上自衛隊の護衛艦の風景は、まるで映画やアニメの世界にいるよう。「初瀬」「敷島」など旧海軍の戦艦の名前が付いた碁盤目状の通りを、セーラー姿の海上自衛隊員が歩く町並みは、どこか凛(りん)とした風情です。

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戦艦の名前が付いた通り

そして、舞鶴をよく訪れる人たちが口をそろえるのが地元の人たちの思いやりのある気質。それは戦後、13年間も引き揚げ港だった歴史が関係しているのかもしれません。シベリア抑留からの帰還者、そして全国から集まる出迎えの家族たちを受け入れ続け、自分たちが空腹を我慢してでも少ない食料を分け合ってもてなしたそうです。

そんな東舞鶴の歴史を感じる、絶対に訪れたい5カ所をご紹介します。

1.一番人気はここ「舞鶴赤れんがパーク」

舞鶴港のウォーターフロントで、ひと際目を引くのが壮麗な赤れんが倉庫群です。ここに1901年(明治34年)に旧海軍舞鶴鎮守府が置かれると、一帯に海軍の倉庫が建設され、今も12棟が残っています。そのうち国の重要文化財に指定された8棟が「舞鶴赤れんがパーク」としてオープン。100年余りの歴史を刻んだ建物は博物館やカフェ、レストラン、イベントスペースなどに生まれ変わっています。

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「舞鶴赤れんがパーク」

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レトロな風景が残り、数多くのロケが行われています。焼成時に押されたれんがの刻印は☆印でモダン

「赤れんが1号棟(赤れんが博物館)」は、れんがを専門とする世界で唯一の博物館。メソポタミア文明の楔(くさび)形文字が刻まれたれんがや、動物の足跡が付いた日干しれんが、万里の長城、古代インドや織部焼のれんがなど貴重な品が並びます。

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「赤れんが博物館」内ではかつてのれんが焼成窯を再現

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楔形文字が刻まれた紀元前のれんが

「赤れんが2号棟」(舞鶴市政記念館)では、2階に展示された「友情のメダル」が必見。1936年開催のベルリンオリンピックに、棒高跳びの選手として出場した舞鶴市出身の大江季雄さんのメダルのレプリカです。この競技で2位と3位になった日本人2人がお互いの健闘をたたえ、銀と銅のメダルを半分ずつにしようと作ったもの。2人の心温まるエピソードが詳しく紹介されています。

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来年のオリンピックイヤーに向けて注目度大です

1階の「Café jazz」は、海軍グルメのメニューが充実。旧海軍で用いられていた調理隊員育成の教科書「海軍割烹(かっぽう)術参考書」などに登場するレシピをもとに、海軍カレー、肉じゃが丼、海軍ロールケーキなどが食べられます。

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ふっくらとおいしい海軍ロールケーキ。「海軍割烹術参考書」もパーク内のおみやげコーナーで販売しています

海軍グルメと並んで、舞鶴で味わいたい名物が「まいづる海自カレー」です。市内の11店舗で、海上自衛隊の艦艇や施設、部隊で実際に作っている11種類のオリジナルカレーが食べられます。「赤れんが5号棟」の「5号棟カフェ」で出されるのは護衛艦「ふゆづき」特製カレー。揚げた野菜の甘みとコクがすっきりとした辛さのルーによく合います。

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護衛艦「ふゆづき」特製カレー

「1棟に約47万個のれんがを使用しています」と、解説してくださったのはガイドの古橋ふみ子さん。「舞鶴赤れんがパーク」を訪れるなら、ぜひ利用したいのが「限定公開!舞鶴赤れんがガイドツアー」です。ガイドさんの解説付きで、普段は入ることができない建物やロケ地も見学できます。通常では気づかない「れんがの☆型の刻印」が何かなども教えてもらえて何倍も楽しめます。

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写真なども使用して分かりやすく説明してくれます

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赤れんが3~5号棟は日没から22時までライトアップされて幻想的

「舞鶴赤れんがパーク」など旧海軍の施設は、「鎮守府 横須賀・呉・佐世保・舞鶴~日本近代化の躍動を体感できるまち~」として日本遺産に認定されています。

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赤れんが倉庫群から少し離れたかつての軍港引き込み線のトンネル「北吸トンネル」も日本遺産です

2.大迫力の護衛艦に感激!「海軍ゆかりの港めぐり遊覧船」

「これほど護衛艦が近くで見られるのは舞鶴ならでは」といわれて人気なのが、「海軍ゆかりの港めぐり遊覧船」です。海上自衛隊の護衛艦が停泊する舞鶴湾を約30分でクルーズ。例年3月中旬から11月末までの土・日曜と祝日に運航し、1日4便のうち2便は舞鶴水交会会員(海上自衛隊OB)によるガイド付きというぜいたくなコースです。

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間近に護衛艦が見られます

「赤れんが博物館」近くの桟橋から出航した船は、波穏やかな湾内を進み、地下に旧海軍の特設防空指揮所がある東山や東舞鶴の街並みを見ながら、やがて造船所のドック前を通ります。この日は海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」が修理中。巨大なタンカーも見られました。

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ドックに入った「ひゅうが」

やがて海上自衛隊の船が現れました。護衛艦「まつゆき」やミサイル艇「うみたか」など、間近で見る迫力に船内から歓声が上がります。ほかの艦船に燃料などを補給する補給艦「ましゅう」は、カメラに収まりきらないほどの大きさでした。

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補給艦「ましゅう」に手が届きそう

3.歴史上の大きな役割。「舞鶴引揚記念館」は必見!

舞鶴の歴史で特筆すべきなのが、13年間もの長きに渡って「引き揚げ港」だったことです。第2次世界大戦の終結後、海外に残った日本人は660万人で、当時の人口の約9%。それを帰国させる「引き揚げ」は国家の一大プロジェクトでした。

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「舞鶴引揚記念館」は、シベリアの広大さがひと目でわかる地図など、工夫された展示

舞鶴港は、ほかの港が役割を終えた後も唯一の引き揚げ港として引き揚げ者を迎え続けましたが、それはシベリア抑留者の帰国が難航したからでした。

「舞鶴引揚記念館」では、極寒のシベリアでの壮絶な抑留生活や、帰国を待ち続けた家族、引き揚げ者を支えた人たちなどを、豊富な資料で紹介しています。収蔵資料のうち570点が、特に希少性が高く世界的にも重要だとしてユネスコの世界記憶遺産に登録されました。

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シベリア抑留中に紙の代わりにシラカバの皮に記された和歌「白樺日誌」はユネスコ世界記憶遺産登録資料

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千人針」やシベリア収容施設の内部、昭和期の歌謡曲「岸壁の母」のモデル、端野いせのエピソードなども紹介。見学後は平和への思いを強くする

当時、引き揚げ船が着くと、舞鶴の人たちは仕事や授業を中断して港で引き揚げ者を出迎えたそうです。「『生きて帰ってよかったのだろうか』と思っていた元兵士の方々も、舞鶴の人たちが『お帰りなさい』と笑顔で手を振ってくれるのを見て、初めて喜びで涙があふれたと語っています」と館長の山下美晴さんが話してくださいました。

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今は穏やかな風景が広がる「平引揚桟橋」

記念館の近くには「平引揚桟橋」が復元されています。周りに広がるのは舞鶴の穏やかな風景。氷に覆われたシベリアから帰国した人たちが、青い海と輝く緑をどれほどの喜びをもって目にしたかを考えると、自然の美しさがいっそう胸に迫ります。

4.絶景のパノラマビュー「五老スカイタワー」

360度開けた爽快な大パノラマが広がるのが、「五老スカイタワー」です。舞鶴市のほぼ中央にある五老ヶ岳山頂にあり、“鶴が羽を広げたような形”と例えられる舞鶴湾や舞鶴市内の街並みを一望。青い海と入り組んだリアス式海岸を覆う緑の木々、島々や行き交う船の眺めは壮大な絵画のようです。

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「五老スカイタワー」(画像提供:舞鶴市)

眺望を楽しみながら食事ができるのが展望カフェ「GORO SKY CAFE nanako」。「まいづる海自カレー」の一つである“護衛艦『みょうこう』ビーフカレー”は、丁寧に煮込んだ牛ロースのブイヨンをベースにアメ色になるまで炒めた玉ネギの甘みが加わった手のかかった一品。肉じゃがコロッケも付いてボリュームたっぷり。

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護衛艦『みょうこう』ビーフカレー。プレートにも戦艦の名前が入っています

肉じゃがを使った「まいづる肉じゃがコロッケバーガー」は、サクサクとした衣と甘みのあるコロッケがパンによく合います。五老ヶ岳にちなんだ5色のソーダ「GORO SODA」との相性も抜群。

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「まいづる肉じゃがコロッケバーガー」と「GORO SODA」

5.新鮮な魚介や特産品「万願寺甘とう」も味わおう

舞鶴港は魚の水揚げも行われるので、鮮度の良い魚介が食べられる店も多くあります。この日立ち寄ったのは東舞鶴の「進肴(しいざかな)」。ほぼ100%、地元で揚がった魚を使用するそうです。手づくりのへしこは絶品。舞鶴市万願寺地区発祥の辛くない大型とうがらし「万願寺甘(あま)とう」も味わえます。

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鮮度抜群のお造りの盛り合わせ

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店名の「進肴」は懐石料理にちなんだもの。手づくりのへしこ(左下)は大根と一緒に

【問い合わせ】
舞鶴観光ネット
http://www.maizuru-kanko.net/

舞鶴赤れんがパーク
https://www.akarenga-park.com/

限定公開!舞鶴赤れんがガイドツアー
http://www.maizuru-kanko.net/spot/sightseeing/akarengatour.php

海軍ゆかりの港めぐり遊覧船
http://www.maizuru-kanko.net/recommend/cruise/

舞鶴引揚記念館
https://m-hikiage-museum.jp

五老スカイタワー
https://goro-sky.jp/

進肴
電話:0773-64-1011
舞鶴市宇浜773
17:00~22:00(L.O.)/月曜休

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PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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