宇賀なつみ わたしには旅をさせよ

会社を辞めると決めた、ベトナムの夏 宇賀なつみがつづる旅(1)

テレビ朝日でアナウンサーとして活躍してきた宇賀なつみさんがこの春、フリーに転身。テレビという枠を超えて幅広く活動しています。じつは、旅が大好きな宇賀さん。見知らぬ街に身を置いて移ろう心を、ありのままにつづる連載「私には旅をさせよ」がスタートしました。

(文・写真:宇賀なつみ)

なんとかなるさ ハノイ

この気だるさ、嫌いじゃない。

空港の外に出た瞬間に、湿っぽい空気が肌をなでる。
バイクや自転車が行き交う大通りを横切り、
少し細い道に入ると、人は皆地面に座り込んで、
お茶を飲んだりスマホをいじったり、時間を持て余していた。

まるで時間が止まっているよう。
ずっとここにいたら、
私なんて全部溶けて、なくなってしまいそうだ。

とにかく動かないと。
ハノイ市内をぐるぐる歩き回った。

会社を辞めると決めた、ベトナムの夏 宇賀なつみがつづる旅(1)

のどが渇けば100円ほどのビールを飲み、
おなかがすけば200円ほどのフォーやブンチャーを食べた。

何も不自由はない。
むしろ、とんでもなく自由だった。

ホテルに戻れば、また異世界。
フランス植民地時代のコロニアル建築はとてもしゃれていて、
プールサイドに寝転べば、
ここがどこなのか、わからなくなる。

会社を辞めると決めた、ベトナムの夏 宇賀なつみがつづる旅(1)

さて、これからどう生きるか。
旅先ではいつもそんなことばかり考える。

非日常的な世界に足を踏み入れて、
考えずにはいられない。

世界はこんなに広いのに。
わたしの人生はわたしだけのものなのに。

会社を辞めると決めた、ベトナムの夏 宇賀なつみがつづる旅(1)

2018年夏。
私は、私に飽きていた。

いつまでもここにいていいの?

もちろん誇りを持って仕事をしていたつもりだが、
その頃は、頑張りかたもわからなくなってしまって、
ずっと同じ場所で、足踏みしているような感覚だった。

恵まれていることはわかっていたけど、
何かを変えたかった。
変えなければいけないと思っていた。

そんな時、混沌(こんとん)とした街の喧騒(けんそう)のすぐそばで、
あくまでマイペースに暮らしている人たちに出会い、
私にも、できそうな気がしてきた。

会社を辞めると決めた、ベトナムの夏 宇賀なつみがつづる旅(1)

世界はこんなに広いのに。
わたしの人生は、わたしだけのものなのに。

何を気にしていたんだろう。
何を悩んでいたんだろう。

10年前、想像もできなかった場所に立っているのだから、
10年後、想像もできない自分になっていたい。

市場の隅で、小さな椅子に腰掛けてカゴを編んでいた女性が、
ふと顔をあげて、ほほ笑んでくれた。
心の奥を見透かされているようだった。

なんとかなるさ。
そして、なるようにしかならないよ。

2018年夏。
私はベトナムで、会社を辞めることを決めた。

PROFILE

宇賀なつみ

東京都出身。テレビ朝日「報道ステーション」の気象キャスターとしてデビュー。同番組スポーツキャスターとして、トップアスリートへのインタビューやスポーツ中継等を務めた後、「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」など、情報・バラエティー番組を幅広く担当。2019年にフリーランスとなり、現在はテレビ朝日「池上彰のニュースそうだったのか!!」や、自身初の冠番組「川柳居酒屋なつみ」を担当。TBSラジオ「テンカイズ」やTOKYO FM「SUNDAYʼS POST」など、ラジオパーソナリティーにも挑戦している。

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