楽園ビーチ探訪

マティスのあのブルーはファカラバの海がきっかけ?

連載「楽園ビーチ探訪」は、リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信するビーチライターの古関千恵子さんが訪れた、世界各地の美しいビーチや、海のある街や島を紹介いたします。

今回訪れたのはタヒチにあるファカラバ環礁。かつてここを訪れたという画家アンリ・マティスに思いを馳せながら巡りました。

網膜や心までも、深いブルーに染まる


“色彩の魔術師”と称される画家アンリ・マティスが、晩年に描いた作品『ブルー・ヌード』。明るく鮮やか、そして深いブルーが印象的です。このブルーが生み出されたのは、かつて旅したモロッコの空と海が影響しているとの説もありますが、タヒチのファカラバ環礁もきっとマティスの心の深部に作用しただろうと思えるのです。なぜならファカラバの光を放つラグーンや突き抜けるような空は、網膜や心までも、真っ青に染めるような力のある色なのです。

タヒチ島から北東へ約450キロ、本島から直行便で約1時間。全長約60キロのファカラバは、ユネスコ生物圏保護区にして、フレンチポリネシアで2番目に大きな環礁です。エリアは、北ファカラバと、南ファカラバの二つに分かれます。人口は800人ほどで、そのほとんどが暮らす中心地・ロトアバがあるのが北ファカラバ。タヒチアンののどかな暮らしぶりに触れられます。

マティスのあのブルーはファカラバの海がきっかけ?

北ファカラバでは島民によるヤシの葉の帽子作り教室も

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ヤシの葉を揺らす風が心地よい午後。こちらはゴーギャンの絵画を思い起こさせました

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魚捕りが得意なワンちゃん。気配を消して、狙う瞬間を待っていました

もう一方の南ファカラバは「テタマヌ・ヴィレッジ&ソバージュ」という宿兼ダイビングサービスがあるのみで、道路が途切れているためにボートでしか行くことができません。その分、手付かずの自然が残っています。

ドラマチックな水中世界が広がるラグーンは、“マティス・ブルー”と呼びたくなるほどの色彩に圧倒されます。

サメ、サメ、サメ、でもご安心を

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ファカラバはサメが多い

北ファカラバでは、魚影の濃さにびっくりしました。水面近くから海底を見下ろした時、「何かうごめいているな」と思い、目を凝らしたら、海底が魚たちでびっしり。まるで集団でおしくらまんじゅうをしているよう。サメやマンタ、バラクーダも続出し、ハードコーラルの美しさも圧巻です。

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明るいブルーをたたえた南ファカラバの海

一方の南ファカラバはダイバー憧れのポイント「トゥマコフア・パス」に入りました。潜降した途端、サメ、サメ、サメ。ファカラバは北ファカラバも含めサメが多く、“ウォール・オブ・シャーク”と呼ばれるほど。とある動画では1ダイブ中に700匹もサメが出現したとか。トゥマコフア・パスでも、最初の数分は1匹2匹と数えていたものの、すぐに混乱してしまい、数えるのをあきらめました。ちなみに、ここに生息しているサメは危害を加えないかぎり、襲ってこないタイプなので、ご安心を。

マティスのあのブルーはファカラバの海がきっかけ?

視界いっぱいに魚、魚、魚。変幻自在に形を変える、巨大なひとつの生物のよう

あえて不自由を楽しみたいネイチャーリゾート

マティスのあのブルーはファカラバの海がきっかけ?

テタマヌ・ヴィレッジ&ソバージュの敷地内には、かつての首都の遺構が残る

南ファカラバのお宿「テタマヌ・ヴィレッジ&ソバージュ」は、かつてツアモツ諸島の首都だった廃村を、ネイチャーリゾートにしたものです。ヤシや熱帯の植物であふれかえる敷地には、1870年代に建造されたこの諸島で最初の教会や、朽ちかけた市役所、サンゴを積み重ねて造った牢獄など、遺構がそのまま残されています。そのせいか、ひと昔前の島へタイムトリップしたような気分にもなります。

マティスのあのブルーはファカラバの海がきっかけ?

南ファカラバのテタマヌ・ヴィレッジ&ソバージュは素朴なネイチャーリゾート

客室は橋で結ばれた小島にビーチバンガロー5棟とガーデンバンガロー1棟。エアコンやテレビはもちろんなく、ベッドとトイレ、真水シャワーのみのシンプルな設備です。自然の中で、あえて不自由を楽しみたいセレブにもファンはいて、俳優ランベール・ウィルソンも泊まりに訪れたそうです。

マティスのあのブルーはファカラバの海がきっかけ?

干潮時にはもっと長くピンクの砂州が伸びるピンクサンドアイランド

南ファカラバのハイライトはリゾートから船で約10分のところにある、ピンクサンドアイランド。ピンク色の砂州がアイスブルーの浅瀬に大きな弧を描いて伸びています。濃淡の絶妙な色使いは、まるで一幅の絵画を眺めているよう。潮の満ち引きで砂州は現れたり消えたりして、まるで自由気ままに模様を描いているようです。

濃密な島の自然が待っているファカラバ。あの突き抜けた空と海のブルーは今も心の中に鮮やかに残っています。

【取材協力】
・タヒチ観光局
https://tahititourisme.jp/ja-jp/

・エア タヒチ ヌイ
https://www.airtahitinui.com/jp-ja

PROFILE

古関千恵子

ビーチライター。リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰りかえすこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。ブログも配信中。

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