京都ゆるり休日さんぽ

季節の一汁三菜でもてなす、ふだん使いの和食店 京都「まつは」

暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。

今回ご紹介するのは、季節の食材をちりばめた美しい一汁三菜のごはんを提供する「まつは」。一品一品丁寧に作られた週替わりの献立は、色で、香りで、味わいで、一口ごとに季節の歩みを伝えてくれます。

奥ゆかしくて美しい。京都の文化に魅せられて

季節の一汁三菜でもてなす、ふだん使いの和食店 京都「まつは」

築100年を超える表具屋を自分たちでリノベーションした。端正な店構えに足を留める人も多い

骨董(こっとう)店や建具屋、茶舗などが並ぶ御所南界隈(かいわい)に、西村めぐみさん、由香さん姉妹が「まつは」を開いたのは2013年のこと。看板はなく、ショーウィンドーに生けられた季節の花、引き戸につつましく書かれた「まつは」の3文字、控えめに貼られた献立だけがこの店の手がかり。「最初は骨董屋さんとよく間違えられて」とめぐみさんは笑います。

季節の一汁三菜でもてなす、ふだん使いの和食店 京都「まつは」

姉妹で店を営む、姉のめぐみさん(奥)、妹の由香さん(手前)

一見何の店かわからないようなたたずまいにしたのは、京都の文化への憧れや敬意から。京都で学生生活を送りながらお茶屋さんなどでアルバイトを経験しためぐみさんは、看板を出さず、店構えもつつましく、淡々と商いを続ける京都の店の姿に感銘を受けたと話します。食事とならんで店の名物である「くちゃくちゃアイス」も、お茶屋さんで耳にした芸妓(げいこ)さんらの会話から名付けたもの。

「アイスやフルーツ、揚げ餅などをくちゃくちゃと混ぜて食べるから“くちゃくちゃアイス”。芸妓さんが、おそらくあんみつのようなデザートのことだと思うのですが『おやつに“くちゃくちゃ”食べにいこ』とお話しされていたことからヒントを得ました」

季節の一汁三菜でもてなす、ふだん使いの和食店 京都「まつは」

アイスクリームに自家製の酵素シロップ、フルーツやナッツ、揚げ餅などが層になった「くちゃくちゃアイス」(800円・税込み)

それぞれ大学で建築と陶芸を学びながら、京都の文化や風習、芸術にどんどん惹(ひ)かれていったという2人。食べることが大好きな姉妹が、お互いの得意分野を生かしながら、京都で店を構えることになったのは自然ななりゆきでした。

一日いつでも、季節を伝える一膳を

季節の一汁三菜でもてなす、ふだん使いの和食店 京都「まつは」

「一汁三菜」(800円・税込み)。この日は麦豚ごはん、新じゃがとごぼうのすり流しに、すもものサラダ他2品

朱塗りのお膳に彩りよく並ぶ「まつは」の献立は、その繊細な盛り付けときらめく素材の表情を見るだけで、丁寧に作られていることがうかがえます。うつわは、和洋、古今問わず気に入った作り手や工芸の品。旬の食材を生かし、ちょっと意外な組み合わせや、スパイスやハーブを取り入れることで「小味の効いた料理を楽しんでもらえたら」と由香さんは言います。

季節の一汁三菜でもてなす、ふだん使いの和食店 京都「まつは」

小上がりのほか、アンティークの家具などを配したテーブル席も。土間から奥の通り庭では、毎月最終土曜日に「おふく市」というマーケットを開催

一汁三菜を基本に、軽く食べたいときの一汁一菜(600円・税込み)、一汁三菜にデザートとドリンクが付く「本日のお食事」(1,500円・税込み)があり、昼夜問わずいただけます。

「季節を感じる和食がいただけて、料亭でもなく定食屋でもない。一日中どの時間でもごはんが食べられて、お酒を飲む人と飲めない人が一緒に食事することもできる。そういう店があまりないと感じたんです。私たち2人とも食べることが好きで、お酒も好きだったので『自分たちが行きたい店を作ろう』って」

季節の一汁三菜でもてなす、ふだん使いの和食店 京都「まつは」

店の一角には「おふく市」で扱う工芸品なども並ぶ

その“ありそうでなかったスタイル”が多くの人の心をつかみ、昼時には予約で満席になることもしばしば。常連客も多く、今では骨董店と間違われることも少なくなりました。暑い日、肌寒い日、季節の変わり目、旬の名残……。街で感じる季節の気配が、「まつは」に行けば美しい一膳となって味わえます。

季節の一汁三菜でもてなす、ふだん使いの和食店 京都「まつは」

店頭のショーケースは季節に合わせたしつらえが

道行く人に目配せするかのように、言葉ではなく花で、掛け軸で、献立の食材で、季節のあいさつをする京都の店。そのさりげなさと、扉を開けた人だけが味わえるしなやかで心を尽くしたもてなしは、姉妹の営む小さな和食店にも確かに息づいています。(撮影:津久井珠美)

まつは
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BOOK

季節の一汁三菜でもてなす、ふだん使いの和食店 京都「まつは」

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が6月7日に出版されました。&TRAVELの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。

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PROFILE

大橋知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

素朴でなつかしい和菓子のある日の幸せを。京都「おやつaoi」

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