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&編集長、週末ぶらり佐世保旅・前編 市場、横町、食べ物尽くし

「佐世保」という地名を聞いて、まず何を思い浮かべるだろうか? 軍港。佐世保バーガー。ハウステンボス……九州にゆかりのない筆者がぱっと思い浮かぶのは、正直なところ、それくらいだった。長崎県で2番目に人口が多く、全国的に見ても比較的に大きな都市だというのに、その街並みを知らない。ならば、ちょっと足をのばしてみようということで、佐世保を週末ぶらり旅してきた。
(文・写真:&編集長・辻川舞子)

台風接近、トホホな曇天

訪れたのは、7月19日・20日の土日。例年でいえば、ちょうど梅雨明けの頃だ。すかっとした夏空のもと旅ができるものと期待していたが、今年はまだまだグレーの分厚い雲に覆われていた。しかもその週末は、台風5号が長崎に接近。五島と対馬には大雨特別警報が発表されたときだった。

佐世保駅に着き、空を見上げると、どんより……トホホ。けれど、頑張って街を回ってみることに。

まず訪れたのは、駅から徒歩5分ほどのところにある、カトリック三浦町教会。日本式の瓦屋根とゴシック様式の建築の白く清楚なたたずまいに、心を引かれる。

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どよーんとしたグレーの空に溶け込む、カトリック三浦町教会。天気がよかったら、青い空に映えるんだろうな……

佐世保市は、軍港が開設されて発展するとともに、周辺地域からも人が流入するようになり、カトリック信徒も増えてきたこともあって、1931年にこの教会が建てられた。太平洋戦争中は軍の命令で、空襲を避けるために、なんと外壁にコールタールを塗らされ、黒い教会になったそうだ。

教会に入り、ステンドグラスを見上げ心を落ち着けたら、次は佐世保港にほど近い、「佐世保朝市」へと向かう。

佐世保朝市、豊富な魚種、安さにびっくり

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佐世保朝市。降りしきる雨で、カメラのレンズがぬれてしまった

屋根付きの駐車場を会場に、ほぼ毎日、朝3時から午前9時まで、鮮魚や水産加工品、野菜などの約40軒が並んでおり、地元の人はもちろん、プロの料理人もやってくるのだそうだが、到着したのが遅すぎた……。

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ガランとした薄暗い駐車場を進んでいくと、向こうのほうに明かりのついている店を数軒見つけた。「野田鮮魚店」の軒先におじゃますると、すべての魚介がピンピン! 鮮度のよさに、思わず目を見張る。佐世保は、大村湾や五島灘など、豊かな漁場がすぐ近くにあるのだそうだ。なるほどなるほどー、テンションが上がってきた。

平べったくて甲羅の先がギザギザしている、ちょっとグロテスクな甲殻類の生き物が。ま、まさかカブトガニじゃないし……。「これは、ウチワエビです。みそ汁に入れるとおいしいですよ」と、店員さん。

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右が、ウチワエビ

シジミも、シジミとは思えないほど大きく立派だ。そのほか、赤貝、サザエや、私が暮らす東京ではなかなか見かけないマテ貝、ヒオキガイ、ミナ貝など、種類の豊富さに驚く。

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貝の種類も、豊富で立派。カニもいる

朝市のすぐ横に建つ「朝市フードセンター」の広々とした店内にも、鮮魚がびっくりするような値段で並んでいた。早く閉まってしまう市場とは違い、こちらは夜6時までの営業なので、ゆったりと買い物ができる。

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佐世保朝市の横にある、「朝市フードセンター」

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タイは3匹で600円!

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高級魚コチは、3匹で300円……!!

昭和の哀感、戸尾市場で見つけた「アリマド」

佐世保朝市をあとにし、次も、佐世保市民の胃袋を支えてきたスポットへ。防空壕を利用した店が軒を連ねる「とんねる横町」と、そこからつながる商店街「戸尾(とのお)市場」へと向かう。鮮魚、水産加工品、肉、乾物、かまぼこ、みそ、花、履物、衣類……昭和感あふれる店がずらっと50~60軒ほど。お客さんとお店の人情味あるやりとりを眺めつつ歩くと、なんだかほっとする。

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とんねる横町。ひとつの防空壕がひとつの店舗になっている

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昭和感あふれる、戸尾市場

無類の練り物好きな私は、とんねる横町の「本田蒲鉾店」へと吸い込まれた。平天、ヤサイ天、トビウオ・アジすり身天――見るからに手作りで、どれもおいしそう。「アリマド」と書かれた、球状のものはいったい……?

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本田蒲鉾店

「赤く色を付けたゆで卵を、魚のすり身で包んで揚げているんです。割ると、きれいな断面が現れますよ」と、店先に立つご婦人。「昔、ポルトガルからやってきたアリマドという宣教師が、卵と魚のすり身でつくる栄養価の高い食べ物を考案したという説もあるようですよ」と説明してくれた。

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左上が「アリマド」

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アリマド

断面が竜の目のようにも見えるので、「竜眼(りゅうがん)」とも呼ばれるそう。縁起が良いものとして、お正月は「アリマド」を求めるお客が列を作るそうだ。佐世保・平戸など長崎県北部で食べられるという「アリマド」からは、鎖国の時代から海外と貿易をしていた長崎らしさを感じる。

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魚をすり身にして揚げている。手づくりが、おいしさの秘密だ

市民の意外なソウルフード、玉屋のサンドイッチ

まだまだ知らない食べ物ってあるんだな……。そんなことを思っていたら、「佐世保市民のソウルフードがあるんですよ。玉屋のサンドイッチ。知ってます?」と地元の人に言われた。サンドイッチがソウルフード? 佐世保バーガーじゃなくて?

確認しに、地元の百貨店「玉屋」へ。1階入ってすぐのパン屋「ラビアンローズ」にあった。箱からすると、一見なんの変哲もないサンドイッチ。開いても、レタス、トマト、キュウリ、ハム、卵がはさまったふつうのサンドイッチだ。だが食べてみると、口いっぱいに、まったりとしたマヨネーズが広がる。甘みが利いていて、なかなかボリュームがある。うーん、これは、なんとなくクセになるのかも……。50年以上の歴史があり、老若男女に愛され続けているのだとか。

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地元百貨店「玉屋」の1階にあるパン屋、「ラビアンローズ」

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佐世保名物ともいえるサンドイッチ

いつの間にか食べること一色に。佐世保の繁華街を離れたところにある老舗まんじゅう店「甘酒まんじゅう 毎日屋」は、その素朴な味わいが人気だと聞き、松浦鉄道で向かった。

素朴な味わい 「甘酒まんじゅう 毎日屋」

松浦鉄道は、佐世保、佐々、平戸、松浦、伊万里、有田を結ぶローカル線だが、地元の人たちの足であるだけでなく、車からは見られないような景色が味わえて、鉄道ファンからも人気が高いのだそう。

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1両編成の松浦鉄道

佐世保駅を発車すると、あっという間に緑が濃くなっていく。乗ることたったの6分で、北佐世保駅に到着。たったそれだけの時間でのどかな風景へと変わり、ちょっとした旅気分を味わえた。

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北佐世保駅。山あいで、夏の虫が静かに鳴いていた。真夏は、セミの大合唱になるんだろう……。そんなことを思いながら降り立った

無人改札を出て、畳店や理髪店などなつかしい雰囲気の店を通り過ぎつつ道を進んでいくと、「毎日屋」はあった。創業1965年で、いまの社長で3代目。昔から変わらぬ製法で、ていねいにあんを作り、まんじゅうへと仕上げている。

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甘酒まん頭 毎日屋

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甘酒まんじゅうは、素朴な味わい

甘酒まんじゅう(70円)は、皮がほんのり甘くて、あたたかくて、ふわふわ。混じりけのない素直な味で、いくつでも食べられそう。素材のよさをゆっくりとかみしめながら味わった。
<&編集長、週末ぶらり佐世保旅・後編 老舗は思いの交差点>へと続く)

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札幌で飲んだら「シメパフェ」を 新名物の店をハシゴした

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