クリックディープ旅

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

今回から、再び「12万円で世界を歩く」タイ編です。

(文:下川裕治、写真:阿部稔哉)

バンコクからラオス国境へ。そして越境

『12万円で世界を歩く』(朝日新聞社刊)は1990年に発刊された。総費用12万円。この金額でどこまで行って帰ることができるか。費用をどれだけ削ることができるか、という旅だった。

それから約30年──。

そのルートを辿(たど)ってみる旅が続いている。これまで赤道編ヒマラヤ編アメリカ編、そして新しく「12万円で暮らすシリーズ」としてバングラデシュ編を紹介した。今回からタイ編がはじまる。カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアと国境を接するタイ。30年前、タイの国境をぐるりとまわってみた。当時はまだ東西緊張のなかにいて、ほとんどは閉ざされていた。しかしその後、世界の枠組みは大きく変わった。体制が変わった国もある。再び国境ルートを歩いてみた。

今回の旅のデータ

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

東京からバンコク、陸路で国境を越えて、ラオス・タケクへ

東京からバンコクまでの便は多い。直行便が10便以上。途中の都市に寄る乗り継ぎ便などを数えると……収拾がつかなくなるほどだ。以前から就航していたレガシーキャリア、そしてLCCが競いあっている。そのおかげで、航空券の料金はずいぶん安くなった。最安値は、レガシーキャリアで往復3万円台、LCCで2万円台といったところだろうか。バンコク人気は、この安い航空券にも支えられている。便数が多いので、利用する時間帯の選択肢も多い。

長編動画

バンコクの北バスターミナルを夜行バスが発車する。そこから1時間の車窓風景を。タイの旅がはじまる。

短編動画

国王が変わっても、午後6時には国歌が流れ、皆、起立する習慣は変わらない。僕はどうしようか……。いまでも迷う。北バスターミナルの待合室の風景です。

バンコクからラオスへ国境越え「旅のフォト物語」

Scene01

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

東京とバンコクの間に直行便を就航させているLCCは、ノックスクート、タイ・ライオンエア、スクート、エアアジア、タイ・エアアジア、ハーンエアなど。そのなかから最安値を提示していたスクートを選んだ。往復で2万9243円。30年前は往復で7万3000円。4万円以上も安くなった。LCCは偉大だ。

Scene02

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

2016年、タイのプミポン国王が死去。長男のワチラロンコン新国王になった。戴冠(たいかん)式が行われたのは今年の5月。それを待っていたかのように、タイ国内では新国王の肖像が一気に掲げられるようになった。紙幣や硬貨も次々に新国王の図柄に。日本からの飛行機が着いたドンムアン空港にも……これ。

Scene03

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

ドンムアン空港から5分おきに発車するエアポートバスのA1に乗った。30バーツ、約111円。終点の北バスターミナルまで40分ほど。便利になった。モーチットマイとも呼ばれるこのターミナルはタイ最大。主に東北や北部へ向かうバスが発着する。その規模? バスタ新宿の10倍ぐらい?

Scene04

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

バスターミナルは巨大化し、便利になっても、「バンコクの不思議」は健在。で、ターミナル内のショッピングモールの店舗の前で立ち尽くす。なぜ、ここに制服のオーダーメイド店? 就職が決まって地方からバンコクへ。そこで制服をつくっていないことに気づく? ちょっと遅すぎない?

Scene05

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

バスターミナルの規模は大きいが、フードコートは少ない。その利権にあぐらをかいていたのか、まずくてサービスも悪いことで有名だった。ところが今回、入ってみると、店舗は総入れ替え。感じのいいおじさんの店でカオカームーという豚足載せご飯。50バーツ、約185円。味は50パーセントアップ。

Scene06

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

ラオス国境のナコンパノム行きの夜行バスに乗った。運賃は840バーツ、約3108円。30年前に比べると5倍以上に値あがりしている。車内の設備もよくなったが、やはり夜行バス。そう眠ることができない。やがて夜が明け、ふと見ると、朝の6時からこの勢いで魚を取っていた。田舎にきたこと、実感します。

Scene07

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

そして目に入ってきた僧の托鉢(たくはつ)風景。首都のバンコクでも目にするが、多くがひとり托鉢。ところが地方にくると、僧が列をつくって道を歩くようになる。これってなんの違い? バンコクは都市化が進み、僧もプライベートな生活に向かっている? そんなことはないとは思うのだが。

Scene08

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

ナコンパノムのバスターミナルに着いたのは朝の8時前。子供たちの通学時間だった。その日は小雨。いつもはお父さんのバイクの後ろに座って通学なのかもしれないが、雨では……。で、乗り合いトラック。僕らは半そでシャツ1枚だというのに、ちょっと過保護。タイもそろそろ雨のシーズンが明ける時期。

Scene09

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

タイはバイクタクシー社会。気軽な足になっているが、欠点は雨に弱いこと。で、考えられたのが雨よけ屋根というかシートというか。画期的? いや、意外と普及しない。理由はスピードが出ないから。ややスピード出しすぎ傾向のタイでは、とてもいいことだと僕は思っているのですが。

Scene10

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

ナコンパノムのバスターミナルには、隣国ラオス行きのバスが待っていた。30年前、ラオスには簡単に入国することはできなかった。しかし2007年に日本人はビザ免除。東南アジアの国境は徐々に開放されていった。いってみようか。バス運賃は75バーツ、約278円。切符は窓口で簡単に買うことができた。

Scene11

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

バスは1日8本。これが始発バス。前夜、ナコンパノムに泊まったのか、車内は立つ客が出るほどラオス人でいっぱいだった。彼らが買い込んだ大量の荷物も混雑の一因。後部座席が荷物で埋まってしまうからだ。タイで仕入れた雑貨をラオスで売る小商い。買い出しバスと化していた。

Scene12

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

国境を越えるバス──。いまでも緊張してしまう。長い間、閉められていた国境を知る身としたら。約30年前、国境のメコン川の河原で、指をくわえながら対岸のラオスを眺めていた。当時は、朝、対岸からニワトリの鳴き声が聞こえてくるのどかさだったが、国境では兵士が銃を構えていた。

Scene13

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

隣国ラオスといっても、越境はあっさりしたもの。メコン川を渡るだけだ。タイとラオスの国境は開放され、次々に橋が架かっていった。渡った橋は第3タイ・ラオス友好橋と呼ばれている。2011年から通行が可能になった。「この川をなかなか越えられなかった……」。車窓に映る褐色の大河を眺めながらつぶやいてみる。

Scene14

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

バスは30分ほどで対岸のイミグレーションに着いた。その前がロータリーになっていて、ここで車線が変わる。タイとラオスは車線が違うのだ。立派なイミグレーションの前で列に並ぶ。あっという間にスタンプを押してくれた。バスの乗客でラオス人ではなかったのは僕らを含めて4人だけ。人も物資も一方通行。

Scene15

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

イミグレーションから15分ほどバスは走り、タケクの街の入り口にあるバスターミナルに到着した。ここが終点。ここからはベトナム行きのバスも出ていた。閉鎖されていた国境の前で足踏みをしていた約30年前に比べると隔世の感。

【次号予告】次回、タケクからタイに戻り、コンケーンまでの旅。

※取材期間:2019年8月26日~27日
※価格等はすべて取材時のものです。

■再び「12万円で世界を歩く」バックナンバーはこちら

■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら

■「玄奘三蔵の旅」バックナンバーはこちら

BOOK

再び「12万円で世界を歩く」タイ編1

12万円で世界を歩くリターンズ [赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編] (朝日文庫)

実質デビュー作の『12万円で世界を歩く』から30年。あの過酷な旅、再び!!
インドネシアで赤道越え、ヒマラヤのトレッキング、バスでアメリカ一周……80年代に1回12万円の予算でビンボー旅行に出かけ、『12万円で世界を歩く』で鮮烈デビューした著者が、同じルートに再び挑戦する。

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編】」 (朝日文庫)。

  • 阿部稔哉

    1965年岩手県生まれ。「週刊朝日」嘱託カメラマンを経てフリーランス。旅、人物、料理、など雑誌、新聞、広告等で幅広く活動中。最近は自らの頭皮で育毛剤を臨床試験中。

清水断崖から台北へ、旅行作家・下川裕治が行く、台湾の超秘湯旅13

一覧へ戻る

再び「12万円で世界を歩く」タイ編2

RECOMMENDおすすめの記事