あの街の素顔

ピンクの城の「光の祭典」と穴場アートレストラン デュッセルドルフ

雄大なライン川を望むドイツ西部ノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW)の州都デュッセルドルフは、芸術とファッション、地ビールや高級ショッピング街など観光ハイライトは数えきれないほどあり、何度訪問しても新しい発見があります。今回は、ベンラート城で開かれるクラシック音楽のイベント「光の祭典」と、観光客には知られていない穴場アートレストランを訪ねました。
(文・写真:シュピッツナーゲル典子=在ドイツ、トップ写真は「光の祭典」の花火)

ピンク色のベンラート城

ピンクの城の「光の祭典」と穴場アートレストラン デュッセルドルフ

ベンラート城正面。ピンク色の外観が目印

デュッセルドルフ中央駅からSバーン(市電)に乗り約10分でベンラート駅に到着。そこから歩いて5分ほどすると、右手にピンク色の城が見えてきました。ベンラート城です。

この城はプファルツ選帝侯カール・テオドールの夏の離宮として18世紀に建設された、後期バロック様式の建物です。庭園を手掛けたのは、フランス人の建築家・造園家ニコラス・ド・ピアジェです。ピアジェ? どこかで聞いた名前だなと思いをめぐらせていると、今春、白アスパラガスを食べに行ったシュヴェッツィンゲンにあるこの選帝侯の宮殿の庭園も造ったことを思い出しました。

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観客で埋め尽くされたベンラート城の庭園。当夜の入場者は1万人以上

観客は早くから場所取り

場内に入り、着席していた老婦人2人に話しかけたところ、「この祭典は市民に愛されていて、毎年楽しみにしています」と、気さくに答えてくれました。2人はワインを片手にすでにほろ酔い気分。持参のピクニックバスケットを見せていただくと、さすがドイツ人、ゴミの出ないガラス容器に軽食がいっぱい詰まっており、パンやお手製クッキーも。

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ガラス瓶に詰めたおいしそうなスナック

ランチを食べる時間がなかったため、急におなかがすいてきました。早速、場内で地ビールを買ってのどを潤しながら時計を見ると、まだ18時を過ぎたばかり。開演は20時です。終演の24時まで持つかなと心配になってきました。

音楽と光のハーモニー

ピンクの城の「光の祭典」と穴場アートレストラン デュッセルドルフ

周辺が暗くなると、城のスポットライトも定期的に色が変わり幻想的

それにしても飲食物の持ち込みができるとは意外でした。ベンラート城財団の職員アナ・ワイデマンさんによると、「噴水をはさんだ広場の芝生に座るお客さんは、皆さんよい席を確保したいと早めに来場されます。長時間にわたるため、持ち込みを認めています。クラシック音楽をバックに噴水と光の祭典を楽しみながら、一味違った夏の夜を友人や家族と共に過ごすリピーターが多いようです」

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デュッセルドルフ交響楽団の演奏で開演

20時、デュッセルドルフ交響楽団の演奏でいよいよ開演。演目は、ドビュッシー「月の光」の管弦楽曲版や、グリーグの「ペール・ギュント」、ヨハン・シュトラウスやチャイコフスキーなど、誰もが1度は聞いたことのあるなじみやすい曲でした。

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庭園中央の噴水は、音楽に合わせて高さや光の色を変える

ピンクの城の「光の祭典」と穴場アートレストラン デュッセルドルフ

城のライトアップは別の色に

庭園中央の細長い池で噴水ショーが始まり、音楽に合わせて光が赤色、青色、紫色、黄色と変わります。23時20分過ぎから、フィナーレの打ち上げ花火がしばらく夜空を飾り、イベントは幕を閉じました。心は満たされ、空腹のままホテルへもどりました。

色鮮やかなアートレストラン「リド」

ピンクの城の「光の祭典」と穴場アートレストラン デュッセルドルフ

市内に数店あるリドのうち、マールカステン店は是非訪問したい場所

翌日、地元観光局のヘルマ・クレーマーさんが、「一緒にランチを食べましょう」と誘ってくれました。
前夜のイベントの感想を聞きたいのだろうと思いながら、市内からUバーン(地下鉄)に8分ほど乗ってレストラン「リド」へ。国内でも屈指の長い歴史を有する「芸術協会マールカステン(絵の具箱の意)」内にあるリドは、明るい店内で窓越しに見える公園の緑がまぶしいほどでした。

まず目に入るのは、「絵の具箱」にふさわしい色鮮やかなカーペット。「ここの内装デザインはNRW州出身で現代美術界を牽引(けんいん)するローズマリー・トロッケルが担当しました」とヘルマさん。

ピンクの城の「光の祭典」と穴場アートレストラン デュッセルドルフ

スズキのフィレフライとアンズタケ、青ネギ、タイムの泡ソース添えとフレグラパスタをいただきました。アートも料理も一流のレストランです

トロッケルは、デュッセルドルフ美術大学教授として精力的に活動する女性芸術家です。そういえば、デュッセルドルフ美大はドイツを代表する画家ゲルハルト・リヒターも学んだ名門校です。クレーマーさんがこのレストランを選んだ理由は、トロッケルの作品を楽しみながら食事のできる穴場スポットを紹介したかったのだとわかりました。

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トロッケルのデザインによる店内カーペットは目を引く鮮やかさ

トロッケルは、写真や映像によるコラージュやイラスト、機械編みニットを用いた作品で国際的に高い評価を得ている注目の人です。日本のアーティストなら草間彌生の立ち位置に近いといえば、芸術ファンでなくても知名度の高さを理解できるのではと思います。

スーパースターお気に入りのホテル

デュッセルドルフで毎回楽しみにしているのは、高級ショッピング街ケーニヒ通りの散策。いつも人だかりの絶えない一角があり、気になっていました。何があるのだろうと近づいてみると、それは5つ星ホテル「ブライデンバッハーホフ・ア・カペラ・ホテル」でした。人だかりはここに滞在する世界のスターやセレブを一目みたいと待機しているファンだったのです。今回は、ラッキーなことにこのホテルに宿泊です。

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ホテル正面玄関。ブライデンバッハーは創立者の名前

ホテル入口で「ようこそ、お待ちしていました。シュピッツナーゲルさん」と声をかけられました。え、なぜ名前を知っているの? まるでセレブになった気分! 実はチェックイン後、ホテル広報のシナ・ヘクストラさんと日本人スタッフのケイコ・ベルガーさんと面会する約束があり、このおふたりの気配りだったようです。

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風格ある豪華なホテルのエントランスホール

ピンクの城の「光の祭典」と穴場アートレストラン デュッセルドルフ

スタッフおすすめの「子牛のシュニッツェル」をランチにいただきました

館内を案内してくださったベルガーさんによると、ショッピングや観光に最高の立地、そしてデュッセルドルフ空港からパリやロンドン、アムステルダムなどへアクセスしやすいことから、米国の歌手ピンクやテイラー・スウィフトをはじめ世界のミュージシャンやフィルムスターもよく宿泊するとのこと。同じ時期、英国のミュージシャン、スティングが泊まっていたことを帰宅してから知りました。

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シングルルームのひとつ

ピンクの城の「光の祭典」と穴場アートレストラン デュッセルドルフ

最上階客室のダイニングルーム。横にリビングコーナー。寝室とバスルームは隣室にありました

「アラブ諸国の富豪もひんぱんに宿泊されます」と、ヘクストラさん。特に夏は避暑を兼ねて家族連れで数週間滞在し、ショッピングやホテル併設のビューティクリニックで治療を受けたりと、気ままにこの街で過ごすとか。国賓級のゲストがワンフロアを借り切って滞在することもあるそうです。

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ホテルのバー。歌手のピンクが宿泊した際、バーのキッチンで自分の料理をつくったそう

チェックアウト後、出口でさりげなくミネラルウォーターを手渡してくれたスタッフに感激。このホテルにまた泊まりたいと思いながら、中央駅に向かいました。

ピンクの城の「光の祭典」と穴場アートレストラン デュッセルドルフ

日本でいう1階にあるカフェテリアとレストランは宿泊客でなくても利用できる。テーブル右のチーズケーキは至福の味

【取材協力】

■デュッセルドルフ観光局
https://www.duesseldorf-tourismus.de/en/home/

■ベンラート城
http://schloss-benrath-lichterfest.de/

■レストランリド・マールカステン
https://www.lido1960.de/malkasten/

■ブライデンバッハーホフ・ア・カペラ・ホテル
https://www.capellahotels.com/en/capella-dusseldorf

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • シュピッツナーゲル典子

    ジャーナリスト
    英米文学部卒業後、米国留学が決定していたものの、父の病気でいったん保留。その後留学をあきらめて、ドイツ企業東京本社に勤務したのが運のつき。そこでドイツ人の夫と知り合い結婚し、渡独。欧州生活はすでに30年。夫いわく、「最初の頃は、3歩下がっておとなしい日本の妻だったが、今じゃドイツ人顔負けの奥さんになったな」。

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