台湾一周自転車旅

台湾一周自転車旅「環島」 インスタ映えの彩虹眷村と愛すべきおせっかい (2)台中~台南

「環島」をご存じですか? 台湾をぐるり一周する旅のことです。とりわけ近年人気の自転車による環島に、ライターの中村洋太さんが挑んだ連載「台湾一周自転車旅」。第2回は台中市から台南市まで。インスタ映えする極彩色の「彩虹眷村」に驚き、コンビニの味の違いに戸惑い。楽しみにしていた烏山頭(うさんとう)ダム訪問では、思わぬ出来事が。

インスタ映えする「彩虹眷村」

台中を発(た)ったのは、「インスタ映え」という言葉が2017年の流行語大賞に選ばれる3週間前だった。それまで「観光スポット」と言えば何かしら歴史的・文化的価値を有する場所が多かったが、世界規模で起きていたこの社会現象は、「写真映えするか」という一点を基準に、世界各地に新たな観光スポットを生み出していた。

台中郊外の「彩虹眷村」もその代表的な例で、2017年の年間来訪者が200万人を超えたというから驚きだ。独特の世界観を持つ色鮮やかな壁画は、この村に住むおじいさんが退屈しのぎにひとりで描いたのだという。

台湾一周自転車旅「環島」 インスタ映えの彩虹眷村と愛すべきおせっかい (2)台中~台南

ユーモラスな人や動物が生き生きと描かれている

日本からの個人観光客も多かったが、圧倒されたのは中国本土からの団体客。大型バスが次々とやってきては、騒ぎながら写真を撮りまくり、嵐のように過ぎ去っていく。台湾で出会う穏やかな人々と見た目にそう違いはないが、行動は随分異なるように感じた。

台中から南下し、嘉義という街へ向かう。途中に観光するような場所もないため、淡々と走っていった。

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嘉義まであと30キロ。標識で目的地までの距離を把握する

似て非なるおにぎりとおでん

昼頃、おなかがすいてセブンイレブンに立ち寄った。日本と同じ内装で、扱う商品も似ているからどこかホッとする。

しかし、似ているのは見た目だけだと気づいたのは、イートインスペースでおでんとおにぎりを食べていたときだ。日本のおでんの味を想像していたら、随分と違う。おにぎりも正直なところ、微妙な味だった。

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見た目は日本と変わらないのだが……

自分の味覚がおかしくなければ、日本で食べるおでんやおにぎりのほうがおいしく感じられる。それともこの味が台湾の人々の好みなのだろうか。モヤモヤしながら数キロ先で見つけたマクドナルドに入ると、万国共通の味があった。

いたる所にドリンクスタンド

コンビニはイマイチだったが、一方でぼくが気に入ったのは、いたるところにあるドリンクスタンドだ。どこも基本的にテイクアウト専門で、店内に席はないか、あったとしてもごくわずか。氷の量や甘さを好みで調整できるのも特徴だ。日本でも近年のタピオカブームで一気に店舗数が増えたが、台湾はその比ではない。街の中を走っていると、「ここも、その隣も!さらに斜め向かいもドリンクスタンドだ!」という光景が珍しくない。

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台南でよく見かけたドリンクスタンド「茶の魔手」

ドリンクスタンドにはこの前日、台中の手前の街で初めて立ち寄った。タピオカミルクティーがさほど好きではなかったぼくは、当初は「どうせタピオカのお店だろう」と思っていたのだが、実際にはタピオカ以外にもフルーツティーの種類が豊富にあるとわかった。その日は試しにはちみつレモンを頼んでみた。酸味と甘みが身体中に染み渡り、疲れが吹き飛んだ。200円前後で飲めるのもうれしく、それ以降毎日のように、この手のお店で水分補給するようになった。

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英語表記を参考にドリンクを決めたが、漢字でもある程度想像できた

日本でのタピオカブームがいつまで続くのかわからないが、台湾茶は魅力的なのでこの手のお店は残ってほしい。もしかしたら、若者のトレンドをとらえたスタイリッシュな日本茶専門店がこれから現れるのではないか、などと考えたりしながら、つかの間の休息を楽しんだ。

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ドリンクスタンドの店員さんは、とてもフレンドリー

楽しみにしていた烏山頭ダムが……

嘉義は北回帰線上の街で、台北から来るとここまでが亜熱帯、ここから南が熱帯となる。目に見える境界線はないものの、嘉義を過ぎてから暑さは増した。景色にも変化があり、ヤシ科の植物をひんぱんに目にするようになった。ハワイなどでよく見るヤシの木だと思ったが、調べてみると実は檳榔(びんろう)の木らしい。ヤシ科の植物には違いないが、台湾では檳榔の実を「かみタバコ」として販売している。「檳榔」と書かれた屋台を走行中よく見かけた。

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熱帯地域に入ると、路上でパパイヤ(?)を売る人もいた

台南に向かう途中、ぼくは烏山頭(うさんとう)ダムの見学を楽しみにしていた。嘉南平原を灌漑(かんがい)するために10年の歳月をかけて造られた烏山頭ダムは、1930年の建設当時、東洋一の規模を誇った。そして嘉南平原の縦横に張り巡らされた1万6000キロに及ぶ水路により、この地は台湾最大の穀倉地帯となった。

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干ばつの多かった嘉南平原だが、烏山頭ダムの完成により一変した。現在は米の産地でもある

この大事業を成し遂げたのが、日本人土木技師の八田與一だった。日本ではなじみの薄い人物だが、台湾では教科書に載るほど有名な日本人なのだと以前テレビで紹介されていた。

ところが、ぜひとも彼の遺業を見ようと本来のルートから10キロも遠回りしてきたのに、ダムの入り口で「今日は休みだ」と言われ入れてもらえなかった。残念だ。しかし、台湾を再訪するきっかけを与えられた気がしないでもない。

台湾一周自転車旅「環島」 インスタ映えの彩虹眷村と愛すべきおせっかい (2)台中~台南

烏山頭ダムの入り口。内部には八田與一の銅像もある

愛すべきおせっかいな人たち

古都・台南に到着した。台南駅前のゲストハウスに泊まることになったのは、前日の夜の出来事がきっかけだった。嘉義の「秘密基地」というカフェでブログを更新後、店主の奥さんと自転車旅の話をしていたら、「台南ではどこに泊まるの?」と聞かれた。

「まだ決めていません」

「私たちの友人が台南でゲストハウスをやってるから、そこに泊まりなさいよ!」

後ろにいたご主人は、考える時間も与えてくれない。「今、自転車で旅している日本人がうちの店にいるんだけど、明日は空いてる?」と早速電話しているので驚いた。

台湾一周自転車旅「環島」 インスタ映えの彩虹眷村と愛すべきおせっかい (2)台中~台南

「秘密基地」のオーナー夫妻と筆者(右)

「OKです。予約しておきました。450元(約1700円)でいいって」

「良かったわね!」と奥さん。

やれやれ。勝手に宿泊先を決められてしまって内心戸惑ったが、笑顔いっぱいの2人を見たら、まったく憎めないのである。実におせっかいな人たち。でもとても親切だ。

「ありがとう、楽しみだよ」

なるほど、これが台湾か。ぼくはほほえみを浮かべながら、宿へ戻る道を歩いていたのだった。

(つづく)

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PROFILE

中村洋太

1987年、神奈川県横須賀市出身。2011年、早稲田大学創造理工学部卒業。旅行情報誌の編集とツアーコンダクターとしての経験を経て、2017年1月よりフリーランスのライターとして活動。これまでに自転車で世界1万キロ以上を旅しており、西日本一周(2009)、西ヨーロッパ12カ国一周(2010)、アメリカ西海岸縦断(2017)、台湾一周(2017)のほか、徒歩で東京から大阪へ「東海道五十三次600kmの旅」(2017)も。

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