あの街の素顔

奇岩と渓谷が織りなす絶景スポット 大分・耶馬渓

みなさんは大分県の耶馬渓(やばけい)をご存じでしょうか。石柱や巨石など奇岩に満ちた渓谷で、古くから景勝地として親しまれてきました。2017年に日本遺産に認定されたことをきっかけに、耶馬渓観光は今また新たな歴史を刻もうとしています。

四季折々に表情を変える景色を楽しめるだけではなく、大自然の中で体を動かして心地よい汗を流したりすることもできます。もちろん、おいしい食べ物もありますよ。と、聞いてしまうと、見たくなりますよね。さあ、その耶馬渓にみなさんをお連れしましょう。

(文・写真/宮﨑健二)

“日本遺産認定”で再び注目される耶馬渓観光

中津市と玖珠町(くすまち)にまたがる耶馬渓には、本耶馬渓深耶馬渓裏耶馬渓などの地域があり、それぞれに見ごたえのある景色があります。

■耶馬渓の詳細や地図はこちら(日本遺産 ポータルサイトより)

たとえば、奥耶馬渓にある念仏橋。

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念仏橋。魔林峡(まばやしきょう)と呼ばれる一帯にあります

切りたった深い渓谷、木々と光が織り成すハーモニーが見事ですね。そして、山国川

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山国川。耶馬渓の中心部を流れています

美しいアーチを描く石橋もありますよ。この5連の橋は馬渓橋です。

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馬渓橋。大自然とマッチしています

こんな絵図があります。1926年に鳥瞰(ちょうかん)図絵師の吉田初三郎が描いた『天下無二耶馬全渓の交通図絵』。さまざまな奇岩を見ることができる一目八景(ひとめはっけい)など、耶馬渓の名所が一覧できます。

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『天下無二耶馬全渓の交通図絵』。現在でいえば、左が中津市、中央の右上が玖珠町です

文化庁は、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを日本遺産として認定しています。中津市と玖珠町は耶馬渓を「やばけい遊覧~大地に描いた山水絵巻の道をゆく」という名称で申請し、認定されました。耶馬渓には、大正時代に耶馬渓鉄道が開業。探勝道も整備されてたくさんの観光客が押し寄せました。当時の観光を現代風に追体験してもらおうと今、地元の皆さんは奮闘しています。

気軽だけどスリル満点! 古羅漢に登ってみた

さあ、お勉強タイムはこのへんで。本耶馬渓にある岩山、古羅漢(ふるらかん)に行きました。

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下から見た古羅漢。荒々しい岩肌が見えます

名勝、羅漢寺のそばにあり、高さ100メートルほどの丘が続いています。なんだか険しそうですねえ。でも、登ってみました。私、高い所があるとすぐ登りたくなるんです。すると、うひゃあ、こんなデンジャラスな場所が。

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途中にある断崖。スリリングです

足を滑らせようものなら、下に真っ逆さま。ようやく渡りきった私は思わず「ファイト~! イッパ~ツ!」と叫びたくなりました。汗をかきかき、ついに頂上へ。中央に見えるのは国東塔(くにさきとう)。この地域特有の石塔で、室町時代に造られたものだそうです。

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古羅漢の頂上。見晴らしがよく、さわやかな風が吹いていました

登る途中には危険そうに見える場所もありますが、設置された鎖やロープをしっかり握って慎重に歩けば、大丈夫。途中には、石仏もあります。歴史にふれながら、1時間ほどで帰ってくることができるので、ちょっとしたアドベンチャー体験ができます。

秋の耶馬渓をより楽しむための絶景アクティビティー

えっ、「この高さでは物足りない」ですって? 欲張りですねえ。ならば、「上から目線」が大好きな方のために、パラグライダーをご紹介しましょう。

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パラグライダー。見ているだけでも楽しめます

玖珠町にある伐株山(きりかぶさん)は頂上が平らなユニークな地形をしています。ここで、パラグライダーが体験できるのです。飛行する人はじっとスタートのタイミングを待っていました。風をよむ。日曜朝のテレビ番組「サンデーモーニング」の1コーナーの名前みたいな時間をしばらく過ごした後、ふわっと、あざやかに飛び立っていきました。

パラグライダーはハードルが高いなあ、と感じる方には、自転車はいかがでしょう。全長約36キロにも及ぶ「メイプル耶馬サイクリングロード」というコースがあるのです。

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メイプル耶馬サイクリングロード。レンタサイクルもあります

このうち約22キロは自転車専用道路になっています。私も走ってみました。スイスイ、スーダララッタ、スラスラスイスイスイ~。軽快です。澄んだ空気を吸い、心地よい風を感じ、沿道に咲くヒガンバナを見て、川のせせらぎを聞き、トンボと戯れる……。このサイクリングロードは耶馬渓鉄道の廃線跡を利用したもので、トンネルや橋など鉄道の痕跡を見ることができます。

転車台にSLも! 人気の鉄道遺産が一堂に

鉄道遺産といえば、ここを忘れてはいけませんね。玖珠町にある旧豊後森(ぶんごもり)機関庫です。

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旧豊後森機関庫。国の登録有形文化財です

手前にある機関車は、1919年製造。福岡県志免(しめ)町で長く展示されていたもので、2015年に移設されました。その後方にあるのが旧機関庫です。福岡県の久留米と大分を結ぶ久大本線のほぼ中間に位置し、機関車が走っていた時代にはここが車庫でしたが、車両のディーゼル化に伴って1970年代に役割を終えました。

車庫は扇形をしていて、手前に設置された円形の転車台で機関車は方向転換ができるようになっていました。でも、上の写真では、ちょっとわかりにくいですよね。では、私がパラグライダーで上空から撮影した写真をお見せしましょう。……というのは、辛子めんたいこよりも真っ赤なうそで、機関庫のジオラマです。全体像がよくわかりますね。

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旧豊後森機関庫のジオラマ。すぐそばのミュージアムに展示されています

からあげの聖地……だけど銘菓もたくさんあります

さあ、あっちで見物したり、こっちで運動したりで、おなかがペコペコになりました。中津市といえば、名物はこれですね。からあげ。

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からあげ。たれでしっかり下味をつけてから揚げるのが特色です

「中津って、からあげくらいしかないんじゃないの」

あれれ、今、どこからかそんな声が聞こえてきましたよ。いえいえ、私は『おとなの自動車保険』のCMの香川照之みたいにきっぱりと申し上げます。

「本当にそうでしょうか!」

ハモ料理に、スッポン料理、そばもあります。ただ、今回はお菓子をご紹介しましょう。
まずは、そばまんじゅう。

奇岩と渓谷が織りなす絶景スポット 大分・耶馬渓

そばまんじゅう。まん丸の形を見ているだけでほっこりします

次は、巻柿(まきがき)。干し柿を何層か重ねて巻きずし状に巻き、輪切りにしたものです。

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巻柿。模様がなんともユニークです

そして、からし椎茸(しいたけ)。甘辛くお茶うけにぴったりです。

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からし椎茸。お茶漬けで食べてもおいしいそうです

最後は、巻蒸(けんちん)。伝統菓子で、中には豆ときくらげが入っていました。

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巻蒸。あっさりとした上品な甘さがありました

偉人が守った景色に思いをはせて

おしまいに、最新情報をお届けしましょう。中津市の歴史、風土などを知ることのできる中津市歴史博物館が11月1日にオープンします。すぐ隣には、黒田官兵衛が築いた中津城の石垣があり、博物館のテラスから間近に見ることができますよ。

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中津城の石垣。石垣越しに城が見えます

中津市は、あの福沢諭吉の出身地。こんなお菓子もあるんです。

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壱万円札お札せんべい。本物の1万円札と同じ大きさです

福沢諭吉は、耶馬渓を代表する名所である競秀峰(きょうしゅうほう)の景観を守るために私財を投じて周辺の土地を買い上げました。耶馬渓は、もうすぐ紅葉の季節を迎えます。こうした先人の取り組みにも思いをはせれば、秋の耶馬渓をより深く楽しめるのではないでしょうか。

【問い合わせ】
日本遺産やばけい遊覧公式サイト
https://yabakei-yuran.jp/
中津耶馬渓観光協会
http://www.nakatsuyaba.com/
玖珠町観光協会
http://kusumachi.jp/

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PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 宮﨑健二

    旅ライター。1958年、福岡市生まれ。朝日新聞社入社後、主に学芸部、文化部で記者として働き、2016年に退社。その後はアウェイでのサッカー観戦と温泉の旅に明け暮れる。

ピンクの城の「光の祭典」と穴場アートレストラン デュッセルドルフ

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