永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(29)永瀬正敏が撮った、魔法のコミュニケーション ニューヨークの街角で

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、永瀬さんがニューヨークで見かけて感動した、魔法のコミュニケーションの現場。何に感動したのでしょうか。

(29)永瀬正敏が撮った、魔法のコミュニケーション ニューヨークの街角で

© Masatoshi Nagase

ここはニューヨーク、ハロウィーンの時期だったと記憶している。カメラを持って街を歩いていて撮れた、すてきな瞬間だ。たぶん、手前にいる方がウィンドーディスプレーを任されていて、助手だろうか、中にいる方に指示している。

ファッションビルだったと思う。ガラスの外側と内側で、互いの声は届かないはずなのに、手前の方は腰に手を当てて中にいる方に指図し、内側の方も狙いがわかって動いている雰囲気だった。こういうコミュニケーションの取り方っていいな、と思う。

もしかすると、外にいる方はまず中に入ってディスプレーの方法を説明し、外から確認して微調整をしているのかもしれない。完成形がどうなるのかはわからないけれど、言葉を介さない方法で、目に見えるものが仕上がっていくのがおもしろい。

考えてみれば、こんな目立つ場所にあるディスプレーは、ビルやブランドのイメージを表現する、いわば作品。それを任されるのは大変な仕事だ。指先でする指示のさじ加減一つで、作品は良くも悪くもなってしまうから。

PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に石井岳龍監督「パンク侍、斬られて候」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

(28)永瀬正敏が撮った「幸せな瞬間」 ニューヨークのセントラルパークで

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(30)撮ったのは、摩天楼じゃない ニューヨークの永瀬正敏

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