太公望のわくわく 釣ってきました

釣り師泣かせの「高仕掛け」でタイ、マサバ 和歌山市加太沖

西へ東へ、海へ川へと旅して釣りする太公望たちの奮闘記です。魚との知恵比べ、釣った魚で一杯……。目的は人それぞれながら、闘いの後の心地よい疲労と旅情は格別。今回は、釣りライターの安田明彦さんが、高級魚の宝庫・和歌山市加太(かだ)で伝統的な「高仕掛け」に挑みます。この釣法、実は釣り師泣かせ。なぜなのでしょう。

高級魚の産地、和歌山市加太へ

お魚の世界も、ブランドがものを言うようになってきて、○○タイとか、○○サバという名前が付けられるようになってきました。
今回行ってきた和歌山市加太は、よい魚の宝庫ともいえます。「加太の真鯛(まだい)」というブランドのほか、マサバやマアジはブランド名こそないものの、「加太で釣れた・とれた」というと一流の料亭へまわっていくほどです。

最近の釣況を見るとマダイのほか、マサバとマアジとイサギが釣れています。いずれもおいしい魚ばかりです。いてもたってもいられず、遊漁船「井上丸」を10月7日に予約しました。私を入れて4人が乗船。私は左舷(さげん)の舳先(へさき)に入りました。

薄い疑似餌に高仕掛け

加太での釣りは、楽ができます。竿(さお)とリールさえ持って行けば、船頭仕掛けや疑似餌はもらえます。

釣り師泣かせの「高仕掛け」でタイ、マサバ 和歌山市加太沖

薄いビニール製の疑似餌。針は端に刺す

船頭仕掛けは、それぞれの船頭さんが独自に知恵を絞った仕掛けです。疑似餌も色や長さ、素材が違います。シーズンや潮の具合などを見て、適したものを渡してくれるのです。

釣り師泣かせの「高仕掛け」でタイ、マサバ 和歌山市加太沖

この日渡された「高仕掛け」。木枠に巻かれている

秋のマダイはサイズは望めないものの、数が釣れることが多いのです。マアジとマサバは脂がのり始めるころです。

今シーズンは、マサバの反応がすこぶる良いようですが、数年前は、40センチ級のマサバに1尾5000円という破格の値がついた時期もありました。そこまで行かなくても、おいしいに決まっています。

「合わせてはいけない」釣り方

釣り師泣かせの「高仕掛け」でタイ、マサバ 和歌山市加太沖

朝、暗いうちに船を出す

出船は、朝暗いうち。その前にしておかなければならないことがありました。仕掛けをすべてのばし、竿にセットしておくのです。
というのも、渡された船頭仕掛けは、6本バリの胴突き仕掛けでしたが、エダス(幹糸から枝のように出すハリス)とエダスの間隔が、上バリになるほど長くなる仕組みで、仕掛けの全長は10メートルを超えます。加太の伝統的な「高仕掛け」といいますが、この仕掛けをうまくさばけないと釣りにならないのです。

釣り師泣かせの「高仕掛け」でタイ、マサバ 和歌山市加太沖

美しい朝焼けの中、船はポイントを目指す。今日は、どこへ入るのだろうか……

船がポイントの、友が島の小島の北側に入ったのは、午前6時を回っていました。

疑似餌の端にハリ先を刺します。端に刺すのは仕掛けが回転しないようにするためです。魚群探知機がセットされました。水深は60メートル前後です。

釣り方も変わっています。アタリが出ても合わせない釣り方をしないとダメなのです。釣りを知っている人には、ちょっとやりづらいんですね。というのは、釣り師というもの、アタリがあればすぐに合わせるよう、体にインプットされています。ですが、加太の高仕掛けで、合わせはご法度です。こりゃまたややこしい。初めて釣りをする人がここで良く釣るのは、船長のいうことを聞くからでしょう。

一流し目から、魚探には魚の反応が出ています。ですが、魚が食ってくるとは限りません。これが釣りの面白い部分でもあります。人間では感じ取れない潮の変化などで食いが立つのです。

釣り師泣かせの「高仕掛け」でタイ、マサバ 和歌山市加太沖

魚群探知機には魚の反応がいっぱい。反応があっても、アタリが出るわけではない

私のすぐ後方に座った大阪府河内長野市の片倉謙司さんの竿が曲がりました。40センチクラスのマアジです。太いのでより大きく見えます。続いてマサバも取り込みました。

筆者もようやくマアジゲット

私には無反応。「ゆっくり巻いてよー」と船長のアドバイス。さらにゆっくり巻き上げていると、ゴツッとアタリ。ここで道糸を巻く動作を止めると、魚は疑似餌を離します。合わせも入れず、速度を一定にして巻き上げていると、やがて、竿が絞り込まれて、ハリ乗りするのです。食いの悪いときは、アタリばかりが出て、食い込まないことも多々あるのです。

釣り師泣かせの「高仕掛け」でタイ、マサバ 和歌山市加太沖

船長がタモで49センチのマダイを取り込む

ゆっくり巻き上げ、仕掛けをたぐりあげて魚が見えたところで船長がタモ入れ。無事マアジをゲット。船長はハリを外すとすぐさまイケスに放り込みます。次の人の取り込みに回らなければいけないからです。

午前9時を回ったころから、船がポイントに集結し出しました。さらに食いが良くなって、船長は、タモ入れに、もつれた仕掛けをほどくのに右往左往です。タチウオやサワラもいるのか、ハリスや、仕掛けを切っていくので、その世話で大変です。自分でタモ入れしようとしたら、口切れでバレたり(逃げられたり)と、いろいろとトラブルが発生します。

釣り師泣かせの「高仕掛け」でタイ、マサバ 和歌山市加太沖

釣れだすと、船が続々とポイントに集結してくる

豊饒の海を実感

潮が変わると、一気に食いがダウンします。釣れている時間はあっという間で、その間にいかに手際よく釣るかが数を釣るコツと言えるでしょう。

釣り師泣かせの「高仕掛け」でタイ、マサバ 和歌山市加太沖

釣れた魚は、次々にイケスの中へ

私は、マダイはまったく当たらずでマサバが40センチクラスを筆頭に9尾、同サイズのマアジが1尾。片倉さんは、38~49センチのマダイを計3尾、40センチ級のマアジを2尾、40~46センチのマサバを9尾釣っていました。

リールのハンドルを巻いているだけで、これだけの魚が釣れる。加太が豊饒(ほうじょう)の海であることの証しでしょう。

釣り師泣かせの「高仕掛け」でタイ、マサバ 和歌山市加太沖

ごまさばは、福岡の名物料理

帰って、マサバは、「ごまさば」と塩焼きにしました。ごまさばは、マサバの刺し身をすりゴマとしょうゆダレであえたもので、福岡に行った時に食べておいしかったのです。生食するので新鮮なマサバしか使えません。この料理に使う魚種はゴマサバではなくマサバ、料理名がごまさばなんです。

釣り師泣かせの「高仕掛け」でタイ、マサバ 和歌山市加太沖

マサバの塩焼きもいけました

■井上丸
http://www.inouemaru93.sakura.ne.jp/access.html

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PROFILE

  • 釣り大好きライター陣

    安田明彦、猪俣博史、西田健作、石田知之、木村俊一

  • 安田明彦

    釣りライター
    1959年大阪市生まれ。父親の影響で子供のときから釣りが大好き。大学卒業後、釣り週刊誌の記者、テレビの釣り番組解説者などを務め、「やっさん」の愛称で親しまれる。あらゆる釣りを経験するが、近年は釣って楽しく、食べてもおいしい魚だけを求めて行くことが多い。釣り好き、魚好きが高じて、大阪市内で居酒屋「旬魚旬菜 つり宿」を営んでいる。

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