にっぽんの逸品を訪ねて

ズワイガニ解禁間近! 細川幽斎の城下町「西舞鶴」食ぶらり旅、名物銭湯も

今回は、京都府舞鶴市の西地区「西舞鶴」です。来年のNHK大河ドラマの主人公・明智光秀の盟友だった細川幽斎(ゆうさい)が築いた城下町。美しい水辺の風景が広がり、舞鶴港の新鮮な魚介が美味! 来年、注目されそうな海辺の城下町をひと足早くご紹介します。

連載「にっぽんの逸品を訪ねて」は、ライター・中元千恵子さんが日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介します。

のどかな古い町並みが残る西舞鶴

「まるでベネチアのような風景」と国内外から観光客が増えているのが、西舞鶴の吉原(よしはら)地区です。リアス式海岸の入り江に小舟が浮かび、水面に家並みが姿を映します。人の暮らしと水と緑が一体になった風景は心まで潤してくれます。

この吉原地区をはじめ、のどかな古い町並みが残る西舞鶴。舞鶴市は大きく東舞鶴と西舞鶴に分けられ、東舞鶴は前回ご紹介したように軍港として発展。西舞鶴は江戸時代から田辺藩の城下町として栄えてきました。

「もっと有名でもいいのに」。乱世のスーパースター・細川幽斎とは?

西舞鶴の玄関であるJR西舞鶴駅に降り立つと、まず迎えてくれたのが細川幽斎を紹介するコーナー。田辺城を築いて、西舞鶴の城下を整備した人物です。地元の人たちが「もっと有名でもいいはず」と口をそろえるのも無理はない、まさに当時のスーパースターです。

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細川幽斎の紹介コーナー

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スーパーマルチな人物でした

幽斎は武芸百般に通じた武勇の将であると同時に、和歌、漢学、能楽、茶の湯、庖丁(ほうちょう)、囲碁、蹴鞠(けまり)など多芸に秀でた文化人でした。特に、『古今和歌集』については、解釈上の問題点を師匠から優れた弟子のみに口伝(くでん)する「古今伝受」の唯一の伝承者。信長、秀吉、家康の歴代権力者も幽斎を重用しました。

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ポイントがわかりやすく解説してあり、引き込まれます

関ケ原の合戦のおよそ2カ月前に、わずか500人の兵で1万5000人の大軍相手に田辺城に1カ月半のあいだ籠城(ろうじょう)し、「古今伝受」の継承者が絶えるのを憂慮した後陽成(ごようぜい)天皇の勅令で包囲を解かれたというエピソードもあります。幽斎は、来年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』の主人公・明智光秀の盟友でした。ドラマ放映の影響で幽斎と西舞鶴にスポットが当たることに期待です。

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籠城の舞台となった田辺城本丸跡に舞鶴公園が整備されています

かつての田辺城本丸跡には、隅櫓(すみやぐら)と城門が復元されています。幽斎の見識は城下の町づくりにも生かされ、水路や港湾を整備。商人や職人を集めて、海の交易を重んじた活気ある城下町を築きました。そんな旧城下町をめぐるには、JR西舞鶴駅構内の「まいづる観光ステーション」でレンタサイクルを借りるのが便利です。

レトロな銭湯2軒も名所。城下町めぐり

冒頭の吉原地区は、JR西舞鶴駅から自転車で約15分。江戸時代中期から約300年の歴史がある漁師町で、当時の町割りを残しています。西舞鶴の漁師は、田辺籠城の際に西軍にも負けない働きをしました。

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船溜(ふなだまり)でもあった吉原入江に沿って民家が続きます

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吉原地区にある木造2階建ての銭湯「日の出湯」

地域の結びつきが強いというこの吉原地区で、長年愛されてきたのが、明治末期創業と伝わる銭湯「日の出湯」です。「もとは吉原の町で管理していた共同銭湯で、大正時代に私の祖父が引き継ぎました」と話してくださったのは4代目の高橋一郎さん。内部はところどころを修理していますが、建物は基本的に引き継いだ当時のままだとか。

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クーラーではなく扇風機です

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やわらかな色彩の浴室。天窓からは自然光が差し込みます

番台や大きな扇風機、タイル張りの浴室、自然光が差し込む天窓。なんともレトロな雰囲気に心和みます。

「湯船の湯は、創業時と変わらず、近くにそびえる五老ヶ岳の伏流水の井戸水を沸かしています」と高橋さん。あたりのやわらかな湯が今も愛されています。

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「若の湯」は白と水色、金文字を組み合わせたモダンな外観

西舞鶴にはもう一つ、名物銭湯があります。舞鶴公園近くの商店街に立つ「若の湯」は1903(明治36)年創業。ひときわ目を引くモダンな洋風の建物は、1923(大正12)年の建築で国の登録有形文化財になっています。

「昔は特別な日に入る少しぜいたくな『ハレの湯』として愛されていました」と、女将の若井康江さん。現在も非日常を楽しんでもらおうと、浴室に大きな富士のペンキ絵を描き、湯船にメッセージを書いた木簡を浮かべるなどの工夫をされているそうです。

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女湯には「赤富士」のペンキ絵。湯は名水「真名井の清水」を薪(まき)で沸かしています

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木製ロッカーやマッサージ機も現役。湯船に浮かべる木簡も手作り

ケヤキの番台や木製ロッカー、体重計、タイル張りの流し台など、懐かしさ満点。この雰囲気を味わいたいと、日本各地から入浴客が訪れています。入浴料とタオル2枚、せっけん、シャンプーがセットになった「手ぶらセット」(500円)もあるので、旅人もふらりと立ち寄れます。

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「手ぶらセット」もありますよ、と若井さん

魚、魚、魚! 舞鶴港に揚がった鮮魚を味わう

西舞鶴は京都府随一の水揚げ量を誇る“魚のまち”でもあります。昼食は西舞鶴駅近くの「魚源(ととげん)」へ。鮮魚店直営の食事処で、舞鶴市場で仕入れた新鮮な魚がリーズナブルに食べられると地元でも評判の店です。

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端正な店構えの「魚源」

人気メニューの海鮮丼には、この日はタイやシマアジ、カンパチなど7種類の魚介がたっぷり。弾力のある身が鮮度を物語ります。

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その時の旬が味わえる海鮮丼

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海鮮に、天ぷらや麺類がセットになったメニューもあります

そして、魚を買うにも食べるにも立ち寄りたいのが、「道の駅 舞鶴港とれとれセンター」。海鮮市場としては日本海側最大級の広さがあり、舞鶴港で水揚げされたばかりの魚介類が所狭しと並びます。市場内にいけすもあるので鮮度は抜群。

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道の駅「舞鶴港 とれとれセンター」

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鮮魚店やすし店などが並びます

「舞鶴では定置網や刺し網、桁(けた)網など漁法が多彩なので、水揚げされる魚介の種類も豊富です」と話してくださったのは、理事長の藤元達雄さん。秋にはノドグロやアマダイ、冬にはヒラメやアワビなどが旬を迎え、11月6日には舞鶴かに(ズワイガニ)も解禁になります。

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ノドグロなど旬の魚がずらり(画像提供:舞鶴港とれとれセンター)

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舞鶴かに漁がまもなく解禁(画像提供:舞鶴港とれとれセンター)

買った魚介を刺し身や海鮮焼きですぐに食べられるコーナーもあります。

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その場で食べられるコーナーもあります(画像提供:舞鶴港とれとれセンター)

全国でもめずらしい「かまぼこ手作り体験」をぜひ!

かまぼこを作ったことありますか? 西舞鶴では全国でもめずらしい体験ができます。

「舞鶴かまぼこ」は近海の鮮魚のすり身をたっぷり使い、うま味が濃くて、シコシコとした弾力。関西では「かまぼこといえば舞鶴」といわれる名品です。

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自分で作った蒸したてのかまぼこが味わえます

舞鶴かまぼこ協同組合では、「舞鶴かまぼこ手作り体験」を実施(一人2000円、所要約90分。最少催行人員3人。詳細は末尾参照)。かまぼこ、平天、ちくわの3種類を作り、できたてが味わえます。

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3人から催行されます

「かまぼこ博士」とよばれる専務理事の辻義雄さんの指導のもと、専用キットを使ってまずはかまぼこ作り。平らに伸ばしたすり身を板にのせ、半円状に形を整えます。難しいですが、できたときの喜びはひとしお。

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かまぼこ作り。楽しくて夢中になります

ちくわは串にくるくると巻いて、空気を抜きながら焼きます。

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ちくわも焼き立て

平天は揚げたてが香ばしくておいしい! ビールを持参する参加者もいるそうです。

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アツアツの平天は最高!

のどかな風情の城下町をめぐり、地元の人たちに愛されてきた銭湯やかまぼこ作りを楽しみ、穏やかで心温まる一日になりました。

【問い合わせ】

まいづる観光ネット
www.maizuru-kanko.net/

日の出湯
電話0773-75-0366/舞鶴市東吉原297-2
16:30~20:30/土曜休

若の湯
https://kokintnb.wixsite.com/wakanoyu

魚源
https://www.totogen.net/

道の駅「舞鶴港とれとれセンター」
https://toretore.org/

舞鶴かまぼこ手作り体験
http://www.maizuru-kanko.net/recommend/kamaboko/

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PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

映画のロケも多数 ノスタルジックな海軍の街「東舞鶴」

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