クリックディープ旅

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

今回は、タイの国境地帯を巡る、再び「12万円で世界を歩く」タイ編の3回目です。ゴールデントライアングル方面に向かいます。

【前回】「再び『12万円で世界を歩く』タイ編2」はこちら

(文:下川裕治、写真:阿部稔哉)

コンケーンからチェンラーイ、ゴールデントライアングル方面へ

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

イサーンと呼ばれるタイ東北地方から北部のチェンラーイへ。そこから再びメコン川に向かう。そこは、ラオス、ミャンマー、タイが国境を接するエリアだ。

1990年に発刊された『12万円で世界を歩く』。そこで歩いたコースのひとつが、タイ国境を巡る旅だった。それをなぞってみる旅の3回目。ラオス国境からミャンマーとの国境地域へと進んでいく。

今回の旅の基点はチェンラーイ。ここから国境地帯をぐるりと周り、再びチェンラーイに戻ってくる。

今回の旅のデータ

タイの地方都市のバスターミナルはいま、郊外に移転傾向。手狭になったことや、渋滞を防ぐためだ。コンケーン、チェンラーイのバスターミナルは、どこも郊外だった。

しかし困るのが市内への足。移転して日数がたっていないこともあるが、市街までのバスなどはない。タクシーやトゥクトゥクという三輪タクシー、バイクになってしまう。運賃は100バーツ、約370円なら安いほうだ。バス代は安いが、バスターミナルから市街までの足代……。新たな悩みだ。

長編動画

コンケーンを出発したバスは、ペッチャブーン県に入る。高原地帯を走る気持ちのいい道。空も広い。

短編動画

チェンセーンの朝市、ゴールデントライアングル、そしてメーサイに向かうソンテオという乗り合いトラック。タイの旅。

コンケーンからチェンラーイ、ゴールデントライアングル方面へ「旅のフォト物語」

Scene01

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

コンケーンの朝。格安チェーンホテルは快適だったが、難点は、周囲に屋台がないこと。おかゆや揚げパンといったタイ風朝食を味わえない。しかたなく目の前のマクドナルドへ。しゃれた店内でソーセージマフィンの朝食、155バーツ、約574円。日本より高いと文句をひとつ。コーヒーは機械の故障で飲めず。その説明も英語でした。

Scene02

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

ホテルの周りにはトゥクトゥクという三輪タクシーやバイクタクシーの姿もなかった。しかたなく、配車アプリのグラブで車を呼ぶ。まるで待ち構えていたかのように3分ほどで現れたのが彼。運賃は76バーツ、約281円。スマホの画面に料金が表示されるから、値段交渉の必要もない。なんだか拍子抜け。

Scene03

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

コンケーンのバスターミナルからチェンラーイ行きのバスに乗る。ふと見た車窓風景に、「なんだ?」。立派なブタでした。僕らの乗ったバスは1時間ほど走ったところで故障。運転手と車掌が手を真っ黒にして修理をするのかと思いきや……。違いました。しばらく待つと、新しいバスがやってきた。タイは本当に豊かになった。

Scene04

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

バスはやがてペッチャブーン県へ。中央に見えるのが、ワット・プラタート・パーソーンケーオという寺の仏像。5体の仏像が合体したかのように並ぶ不思議仏像だ。この一帯は1000メートルほどの標高があり、別名、タイのスイス。暑さにげんなりしたタイ人がスイスと名づけたい気持ち、わかりますが。日本人にはあまり暑くないだけのスイスです。

Scene05

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

バスの故障もありチェンラーイに着いたのは午前0時。14時間近くかかり、着いたのは見たこともないバスターミナル。聞くと、移転したばかりの新バスターミナルだという。ホテルのある市街までのバスはない。トゥクトゥクで行くしかない。市街まではいくら? 右側の運転手と値段交渉。裁定役はイヌというわけではありませんが。結局150バーツ、約555円。思わぬ出費。

Scene06

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

近距離バスは市街にある旧バスターミナルから出るという。翌日、朝6時のチェンセーン行き始発バスに乗るために、午前5時起き。通勤・通学の乗客が次々にやってきて、ほぼ満席になって発車。地方都市の朝は早い。しかし僕は睡眠4時間。タイの国境を巡る旅はなんだか忙しい。

Scene07

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

バスがメコン川に面した国境の街、チェンセーンに近づいてきた。看板は急に多国籍対応に。上からタイ語、英語、中国語、ミャンマー語、ラオス語。これから向かうのはタイ、ラオス、ミャンマーの国境がある一帯。でも、なぜミャンマー語とラオス語をさしおいて中国語? その理由はシーン9で。

Scene08

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

チェンセーンからトゥクトゥクでゴールデントライアングルへ。この名前は本来、ベトナム戦争時代に広がったアヘンの栽培エリア、黄金の三角地帯をさしていた。ところが戦争が落ち着くと、タイはちゃっかり、その名前をここにつけ、観光地にしたてあげてしまった。商売上手の国ですなぁ。

Scene09

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

ゴールデントライアングルは3カ国の国境近くにある。約30年前はただの草原だった。しかし対岸のラオス側は、現在、中国の租借地。ラオスと99年契約を結び、経済特区にした。その開発が急ピッチで進んでいる。そこには、「金三角经济特区欢迎遊」の看板。ラオス人はどんな心境で、この文字を眺めるのだろうか。

Scene10

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

朝が早かったので、ゴールデントライアングルで小休止。約30年前、冷戦下での内戦や領土紛争の影響が残り、川辺には何人もの警備兵がいて、このあたりは緊張していた。家やホテルもなかった。現在、この一帯には平和が訪れたが、そこに中国が進出。3カ国の利害に4カ国目が加わった。各国の利害が絡むのは、国境が集まるエリアの宿命?

Scene11

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

ゴールデントライアングルから、ソンテオという乗り合いトラックで、メーサイまで移動した。ひとり40バーツ、約148円。メーサイはミャンマーとの国境の街。正面のゲートが国境だ。2018年から日本人は、観光目的でならビザなしで入国が可能になった。やっと自由な国境になった。感慨深い。

Scene12

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

約30年前、国境からのびるメーサイのメイン通りには店はあったが、一歩、奥に入ると竹で編んだ小屋のような家が続いていた。記憶を頼りにその道に入ると、アーケード付きの商店街。置かれているのは農機具や携帯電話、寝具……。ミャンマー人の買い出し対応の店が並んでいた。

Scene13

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

アーケード商店街を抜け、その先に行ってみた。すると少数民族のアカ族の女性がやってきた。奥に彼女が暮らす村があるのだろう。もう少し先はミャンマー領。気軽に買い物にやってくる。この一帯はアカ族が多い。昔から彼らは国境を無視して行き来していた。それはいまもかわらない。

Scene14

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

約30年前の記憶を頼りにもう少し進む。当時、歩いていたら知らぬ間にミャンマー領に。そして、このメーサイ川でゴンドラに乗って対岸へ。男たちが僕らを歓迎してくれた。が、最後にはゴンドラ代100バーツ、当時のレートで約600円も払うことに。そのゴンドラを探した。しかしどこにもみつからない。自由に行き来ができるのだから、もう意味がない。30年──。年月を感じます。

Scene15

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

メーサイのメイン通りに戻り、ソンテオでバスターミナルへ。チェンラーイに向かった。同乗のミャンマー人女性は、タイとの行き来用のパスをもっていた。聞くと、通行証であおぎながら、「スーパーに買い物に行く」と笑顔が返ってきた。ソンテオの車内はかなり暑かったが、通行証をうちわ代わりに使っていいんだろうか。ちょっと悩んだ。

【次号予告】次回はチェンラーイからメーサリアンへ。
【前回】「再び『12万円で世界を歩く』タイ編2」はこちら

※取材期間:2019年8月29日
※価格等はすべて取材時のものです。

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BOOK

再び「12万円で世界を歩く」タイ編3

12万円で世界を歩くリターンズ [赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編] (朝日文庫)

実質デビュー作の『12万円で世界を歩く』から30年。あの過酷な旅、再び!!
インドネシアで赤道越え、ヒマラヤのトレッキング、バスでアメリカ一周……80年代に1回12万円の予算でビンボー旅行に出かけ、『12万円で世界を歩く』で鮮烈デビューした著者が、同じルートに再び挑戦する。

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編】」 (朝日文庫)。

  • 阿部稔哉

    1965年岩手県生まれ。「週刊朝日」嘱託カメラマンを経てフリーランス。旅、人物、料理、など雑誌、新聞、広告等で幅広く活動中。最近は自らの頭皮で育毛剤を臨床試験中。

再び「12万円で世界を歩く」タイ編2

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