あの街の素顔

小川フミオ的、デザインやアートで町おこしするマイアミぶらり旅

ライフスタイルジャーナリスト・小川フミオさんが、レクサスのヨットのお披露目で、米国のフロリダ州マイアミを訪ねました。デザインやアートによる町おこしで「一見の価値あり」と太鼓判を押すスポットなどを紹介します。出かける前から「絶対に食べるゾ」と決めていたという、キューバンサンドイッチもおいしそうです。

(文・写真:小川フミオ)

フロリダやマイアミと聞いて思い浮かぶもの

幸運だった。というのは、私がマイアミに出かける数日前にハリケーンが去ったからだ。台風銀座という言葉があるが、フロリダ州はハリケーン銀座である。

ハリケーン銀座はうれしくない称号だろうが、フロリダやマイアミで想起することはいろいろある。ひとによってはフロリダキーズ諸島のキー・ウェストで暮らしたこともある小説家・ヘミングウェイかもしれないし、米映画の傑作「真夜中のカウボーイ」(主人公ラッツォはマイアミ行きを夢見る)かも。ラムもうまい。

天気がいいときは、強い陽光とヤシの木がマイアミのシンボルとして輝く。さらに、リタイヤしたひとが多くを占めると言われる住民のための高層マンション群が建ち並ぶのも、独特の光景だ。

デザインやアートで町おこし

昨今はデザインによる町おこしで、若いひとたちからも注目を集める町となっている。2005年に始まり毎年12月開催の「デザインマイアミ」が発端だろう。

デザインマイアミは、5月のミラノデザインウィークのように、家具やインテリア小物のフェアとしてスタート。いまや、ファッションから自動車まで、さまざまなブランドが世界中から参加するまでに成長した。

もちろん会期中に足を運ぶのがベストだけれど、じつは「マイアミ・デザイン・ディストリクト」の名で、アートによる町おこしが行われているので、そこを訪れるのも一興だ。

ダウンタウンから2.8マイルのところにある「マイアミ・デザイン・ディストリクト」を一言で表現すると、新しいかたちの商業空間だ。あるいはオープンエアのショッピングモールという表現だと、生々しすぎるかな。

「マイアミ・デザイン・ディストリクト」をぶらり歩くと

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「マイアミ・デザイン・ディストリクト」の「グッチ」のブティック(写真左)

ジバンシー、グッチ、エルメス、トム フォード、イヴ・サンローラン、フェンディ、ドルチェ&ガッバーナ、ジョルジオ アルマーニをはじめとする高級ブランドが並び、かつそれぞれのブティックは、ここでしか見られないユニークなファサードのデザインである。これも見もの。

中心になる「パームコート Palm Court」は建築家・藤本壮介氏が指揮して設計した。鉄骨と青いガラスの組合せになる地上2階建てで、中には建物の名称どおりヤシの木と、米国の建築家で発明家、バックミンスター・フラー設計の「フライズ・アイ・ドーム」が置かれる。

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「マイアミ・デザイン・ディストリクト」内「パームコート」のメインの建物は建築家・藤本壮介氏の設計で、手前に「フライズ・アイ・ドーム」が置かれる

虫の複眼をイメージしたフライズ・アイ・ドームは、24フィートの実際のプロトタイプで、米国のコレクターが取得したものを、飾っている。朝、昼、夜と光線によってポリカーボネートの構造のおもむきが変わるので、こちらも一見の価値あり。

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「パームコート」2階には仏のアーティスト、グザヴィエ・ヴェイヤンの手による建築家のル・コルビュジエをモチーフにした巨大な彫刻がある

グラフィティアートのスポットも

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「ワインウッド・ウォールズ」を通りから眺める

近くの「ワインウッド・アート・ディストリクト」には、壁に描かれたグラフィティアートを集めた「ワインウッド・ウォールズ」というオープンエアのミュージアムもある。

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「ワインウッド・ウォールズ」の展示作品は巨大なウォールペインティング

古びた倉庫街の一部をフェンスで囲み、招聘(しょうへい)したアーティストに大きな壁のペインティングを依頼する、というユニークな形態だ。雨が降れば傘を差して回ることになる。

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「ワインウッド・ウォールズ」内のカフェ(店員は愛想がない)

一帯はギャラリーやクラフトビールの醸造所、バー、レストラン、ブティックなどが散在。かつての荒廃ぶりも多少残っているが、投資家たちがアートという手段で、土地の価値を上げようとしているさまが現在進行形で見てとれるのが興味ぶかい。

レクサスのヨットのお披露目

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自動車メーカーがヨットを手がけるのは、ほぼ先例がない。レクサス「LY650」はトップにフライブリッジ(操船スペース)をもったラグジュアリー船

私がマイアミに足を運んだのは20年ぶり。レクサスが発表して大きな話題を呼んでいる65フィート級のヨット(豪華クルーザーも英語ではヨットと呼ぶ)「LY650」のお披露目のためだった。

レクサスはマイアミから50マイルほど北上したパームビーチ郡の町ボカラトンまで、水路のクルーズをゆっくり楽しませてくれた。

レクサスインターナショナルの澤良宏プレジデントが現地で語ってくれたところによると、「LY650はラグジュアリーライフスタイルブランドを目指すレクサスのクルマにとどまらない挑戦の象徴」だそうだ。

へさきに身を落ち着け、水路をゆくのは、快適しごくでじつにいい気分だった。

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レクサスLY650でクルーズしたのは海岸からひとつ内陸に入った広い水路(処々に道路用のはね橋があり通行に時間を要するが眺めはおもしろかった)

周囲の家々にはヨットが係留されているものも多く(家からすぐ水路そして海へと乗り出せる)、米国は優雅だなあと思わせられた。日本も島国なのに、欧米諸国と較べてどうしてマリンレジャーが低調なのか。たとえばスウェーデンだって若者の趣味はディンギーによる島めぐりだ。――いつも思うことを、またしてもマイアミで考えてしまった。

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1926年開業のホテル「ボカラトン リゾート&クラブ」(とそこに係留されたLY650)を上から眺める

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「ボカラトン リゾート&クラブ」の廊下にはシャンパーニュの自販機がある(さっと買って庭でラッパ吞みか)

マイアミのキューバンサンドイッチはうまいのだ

そうそう、食事のこともあった。マイアミといえば、キューバ料理である。私は出かける前から「絶対に食べるゾ」と決めていた、キューバンサンドイッチを目指して、キューバ料理屋へと、借りたレクサスLC500を飛ばした。

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キューバ料理店「La Caretta」とレクサスLC500

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キューバ料理店「La Caretta」の店内(店員は気のいいオバチャンばかりで居心地ばつぐん)

マイアミのキューバンサンドイッチはうまいのだ。中身は20以上ある(組み合せも含めて)。ステーキやハムやチーズやコロッケ(!)などのなかで、とくにローストポークがお勧めだけれど、なによりパンがちがう。

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キューバ料理店「La Caretta」の「ローストポークサンドイッチ」は6ドル95セントだった

ベーキング方法と、ラード(豚脂)を少し入れるなど、ほかの国のパンとはちがう。実際にはすこしパイ生地のように表面がぱりっとして、風味があって、豚とたいへんよく合う。

先述のマイアミ・デザイン・ディストリクトにも、著名なシェフのマイケル・シュワルツがプロデュースして娘の名を冠した「エラ Ella」をはじめ、ちょっと現代的なテイスト(自然食など)を加味したレストランもある。

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「マイアミ・デザイン・ディストリクト」内「Ella」ではグリークヨーグルトやこぶ茶、また、アボカドサンドイッチなど”いまっぽい”ものを提供

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「マイアミ・デザイン・ディストリクト」で見かけたかき氷のフードトラック

それもおもしろいと思うけれど、やっぱり食だけは定番がいい。古さと新しさの共存を楽しめたマイアミの体験だった。

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 小川フミオ

    クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。「&M」ではクルマの試乗記をおもに手がけていますが、グルメ、旅、ホテル、プロダクト、建築、インタビューなど仕事の分野は多岐にわたっています。クルマの仕事で海外も多いけれど高速と山道ばかり記憶に残るのが残念です……。

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