クリックディープ旅

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

今回は、タイの国境地帯を巡る、再び「12万円で世界を歩く」タイ編の4回目です。チェンラーイからメーサリアンに向かいます。

前回、「再び『12万円で世界を歩く』タイ編3」はこちら
(文:下川裕治、写真:阿部稔哉)

チェンラーイからメーサリアンへ

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

タイ、ラオス、ミャンマーの国境が集まるエリア、ゴールデントライアングル方面をまわった。丸1日かかると思っていたが、乗り合いトラックや乗り合いバンの本数が多く、昼にはチェンラーイに戻ることができた。

ここからチェンマイ。バスで簡単に向かうことができたが、できるだけ国境近くを歩きたい。そこでコック川を船でさかのぼることに。そこからチェンマイに出ることにした。

1990年に発刊された『12万円で世界を歩く』。そこで歩いた旅のひとつが、タイ国境を辿(たど)る旅だった。そのときも、チェンラーイから船に乗った。当時は雨に降られ、大変なことになったのだが。

今回の旅のデータ

チェンラーイからタードンまでの船には、バスのように定期運航する便もある。毎朝10時発で、運賃はひとり800バーツ、約2960円。時間に余裕があれば、このほうが得。

僕らはその船に乗ることができなかったので、チャーターするしかなかった。船のチャーター代は2600バーツ、約9620円。値切ったがさがらなかった。フィックス運賃になっていた。とくに発券窓口があるわけではないが。チェンラーイ市内からコック川の船着き場までは、トゥクトゥクという三輪タクシーで60バーツ、222円ほど。

長編動画

コック川をさかのぼる船旅をたっぷりと。途中、上流のタードンからおりてきた船に乗り換える。たまたま船でくだる客がいたためですが。

短編動画

船がチェンセーンの船着き場を離れ、コック川を走りはじめるシーンを。こういうとき、なぜか気分は高まる? そう見えないかもしれませんが。

チェンラーイからメーサリアンへ「旅のフォト物語」

Scene01

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

旅のデータでも紹介したが、定期便は1日1便。それを逃すとチャーターになる。船は何隻も待機していて、運賃は2600バーツと1万円近くする。その高さに躊躇(ちゅうちょ)し、必死に値切ったが鼻でわらわれてしまった。値切りが通用する世界ではないのだ。最近のタイはこういうことが多い。そういう国になりつつあるってこと?

Scene02

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

この船でタードンまで行く人は多くない。チェンマイに行くなら遠まわりになるからだ。利用客の多くはコック川沿いの少数民族の村巡りが目的。村にはゾウも配備されていて、その背に乗って、森のなかを歩く体験もできる。中国人が大喜びするツアーだと船頭さんが教えてくれた。

Scene03

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

コック川はミャンマー国境に近いため、少数民族の村が点在している。カレン族、モン族、ヤオ族などの村だ。なぜか彼らの村はコック川の北側に多い。南側はタイ人の村や別荘などが続く。この川がタイと少数民族世界を分けている? つい、視線は北側の右岸に向いてしまう船旅です。

Scene04

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

川は少しずつその川幅を狭めていく。ときに浅瀬が現れる。といってもいまは雨期の終わり。1年のうちで川の水がいちばん多い時期。船頭の舵(かじ)さばきもゆったりしたもの。携帯電話での長話も可。約30年前の船には屋根がなく、雨に降られてずぶぬれになった。しかしいまは屋根付き。客も船頭ものんびりムード。

Scene05

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

コック川はこんもりとした丘陵地帯を流れている。穏やかな風景だが、そこに植えられているのは飼料用トウモロコシ。川岸ぎりぎりまでトウモロコシを植えるので、増水で岸が削られると、植えられたトウモロコシもろとも川に流されていく。川の流れに身を任せる農業ってことですかなぁ。

Scene06

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

チェンラーイを出発して約3時間。船は終点のタードンに近づいてきた。東南アジアの木と水に染まるような船旅だった。約30年前は川沿いに一軒の店があるだけだった。そこでぬれた衣類を着替えた。しかしいまはこんな風景。観光地のようになってきた。船を降りたところにこの船の発券所がある。

Scene07

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

船の発券所にいた中年女性に聞くと、午後4時20分発のチェンマイ行きの最終バスがあるという。今日はタードン泊まりかと思っていたが、チェンマイまでいくことができる。ラッキー。バス停はどこか聞くと「大きな木の下」とタイらしい道案内。行くと、本当に大きな木でした。どこから生えているのかわからないような。

Scene08

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

タードンを発車したバスは、ファーン川が流れる盆地をとことこ進む。周囲は水田地帯。うっとりするような緑が夕方の日差しのなかに広がっていた。盆地の周りをなだらかな山々が囲んでいる。ここには温泉もあるという。なんだか日本の田舎をバスで走っているような安心感。すぐに寝てしまいました。

Scene09

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

乗ったのは路線バス。学校帰りの学生でいっぱいになる。途中から買い物帰りの女性も。さまざまな人が乗り降りして、チェンダオのバスターミナルでトイレ休憩。路線バスといっても、約4時間も走る長丁場。運賃は92バーツ、約340円。始発から終点まで乗っていたのは僕らだけでしたが。

Scene10

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

途中、ドーイ・ルアン・チェンダオが見えた。タイでは3番目に高い山とか。以前、この山のふもとの温泉を訪ねたことがあった。村長さんが食事をごちそうしてくれた。そのとき、この山の登山を日本人にPRしてほしいと依頼された。あれから10年。やっと紹介できました。

Scene11

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

バスは途中のガソリンスタンドで給油。スタッフの女性は赤ちゃん連れで勤務。共稼ぎが一般的な社会だが、保育園などは少ない。タイは子連れ出勤OKというところが多い。本人が忙しいときは、ほかのスタッフが面倒をみてくれる。銀行のカウンターで赤ちゃんが寝ている光景、何回も見ています。

Scene12

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

夜8時すぎ、バスはチェンマイに到着。しかしメインではない小さなバスターミナル。朝6時から、バス、乗り合いトラックやバン、トゥクトゥク、そして船と乗り物に乗りっぱなし。今晩はチェンマイで眠りたい。しかし翌日はメーサリアンに向かう予定だった。そのバスの時刻を調べようとメインのターミナルへ向かったのだが、そこで……。

Scene13

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

「午後9時発のバスがありますよ」。「はッ?」。なんでもメーホンソン行き夜行バスに間に合うという。「急いで」と職員にせかされ、65歳という年齢も忘れて、切符を買ってしまいました。その後で深く後悔……は先に立たず、夕飯を食べてないことを思い出し、コンビニでカップ麺。充実の交通網は体に悪い。

Scene14

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

バスは深夜の0時ごろにはメーサリアンに着くという。運賃は250バーツ、約925円。少し高いなぁ、と乗り込むとこんな立派なバスでした。きんきんに冷えた車内。毛布をかぶって、コトッと寝入ってしまいました。車掌に起こされて、車窓を見ると、街頭ひとつない暗闇。ここがメーサリアン?

Scene15

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

バスは街はずれのオフィスの前に止まった。ほっとした。人がいるので、宿を聞くことができる。教えてくれたのは、オフィス裏のモーテル。ドアを30回ぐらいたたくと、やっと主人のおじさんが目を覚ましてくれた。1泊350バーツ、約1295円。「あの……、お湯をもらえないでしょうか」とカップ麺を差し出す。旅はまだ続く……。

【次号予告】次回はメーサリアンからバンコクへ。

前回、「再び『12万円で世界を歩く』タイ編3」はこちら

※取材期間:2019年8月29日
※価格等はすべて取材時のものです。

■再び「12万円で世界を歩く」バックナンバーはこちら

■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら

■「玄奘三蔵の旅」バックナンバーはこちら

BOOK

再び「12万円で世界を歩く」タイ編4

12万円で世界を歩くリターンズ [赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編] (朝日文庫)

実質デビュー作の『12万円で世界を歩く』から30年。あの過酷な旅、再び!!
インドネシアで赤道越え、ヒマラヤのトレッキング、バスでアメリカ一周……80年代に1回12万円の予算でビンボー旅行に出かけ、『12万円で世界を歩く』で鮮烈デビューした著者が、同じルートに再び挑戦する。

PROFILE

下川裕治

1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編】」 (朝日文庫)。

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