永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(31)曲線が抱える直線の街 永瀬正敏が撮ったブルックリン

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。ニューヨーク・ブルックリンを一望するこの場所で、永瀬さんに去来した思いとは。

(31)曲線が抱える直線の街 永瀬正敏が撮ったブルックリン

© Masatoshi Nagase

僕が立っている建物がぐっと曲線を描き、ほかは直線ばかり。その対比が面白いと感じたのだろう。およそ20年ぶりに訪ねたニューヨークのブルックリンで撮った1枚だ。

ここはおしゃれなホテルの屋上。20年前にはなかった建物だ。その頃は、こんなホテルがあることは考えにくい、ちょっと危ない雰囲気だった。治安がよくなり、街も変わった。

ずっと地上を歩いたり、地下鉄に乗ったりしていて、街を上から見てみたくなったのかもしれない。屋上に出た瞬間、雲のすごさに圧倒された。そして、夕暮れ時の光の美しさ。そういうすべてのものが、手前の曲線に抱えられているようでもある。

ブルックリン橋のような、ランドマークになる特徴ある建物は写っていないけれど、見た瞬間、ここがブルックリンだと思い出すことができた。それだけ印象的だったのだろう。改めて見直してみると、すごく表情のある場所だ。

PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作に石井岳龍監督「パンク侍、斬られて候」、甲斐さやか監督「赤い雪」など。写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

(30)撮ったのは、摩天楼じゃない ニューヨークの永瀬正敏

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(32)夕日をつかまえたビル 永瀬正敏が撮ったニューヨーク

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