カメラと静岡さとがえり

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

スリランカと日本を拠点に活躍する写真家の石野明子さんが故郷を撮り歩く連載、「カメラと静岡さとがえり」。第3回は、餃子(ぎょうざ)の購入金額日本一を誇る浜松市の「浜松餃子」。この街出身の石野さんが自信を持って薦める2店舗を紹介します。

思えば子供の時から食卓に餃子があがることが多かったように思う。でも大人になって浜松市が餃子の街として有名になると、「私たちはそんなに餃子を食べていたのか!」と意外に思った。他の地域ではそんなに餃子って食べないのですか? 餃子購入金額ナンバーワン(2018年)の浜松市。餃子の店ランキングなどネットで検索すればたくさん出てくるし、駅構内や富士山静岡空港にも浜松餃子のお店がある。

のれん

お気に入りの餃子はありますか?

そんななか、浜松出身の私が真におすすめする餃子店をご紹介したいと思う。
年季が入った店内はワクワクさせてくれること間違いなし。 写真とともにお楽しみあれ。

香ばしいキツネ色の鎧をガリッと むつ菊

1件目は「むつ菊」。JR浜松駅から遠鉄電車新浜松駅へ、通称「赤電」に乗り換えて四つめの駅、助信で降りる。浜松駅近くにも同じ名前のお店はあるのだが、ご親戚が経営されているとのことでレシピは全く違うそう。

むつ菊外観

住宅街の中にある地元に愛され続ける餃子専門店

住宅街の中にひっそりとそのお店はある。静かな住宅街を進んでいくと香ばしい焼き餃子の香りが漂ってくる。でもお店の入り口には「準備中」の文字。

準備中の看板

準備中でも餃子の焼ける香りが漂う

あまりの人気に予約でいっぱい、運よく飛び込みで入れることもあるが待つのは覚悟してほしい。お店の方は「なるべくたくさんのお客様に餃子を食べてほしい」とおっしゃるのだけれど、作り手は1人、手作業のためなかなか難しい。そこで心苦しいのだがいつも看板は「準備中」。でもめげずに電話してみてください。

むつ菊二代目店主

餃子をつくることは自然と身についたという2代目店主の乙部大善さん

私は2週間前に予約した。午後1時半だったが、カウンター7席とお座敷はいっぱい。待合室にも団体さん。
メニューは餃子が1人前、中、大、特大の4種類。あとは飲み物のみ。とてもシンプル。

むつ菊メニュー

メニューはシンプル

餃子がきれいな円形になって供されるのは「中」から。フライパンの形に餃子がフィットして焼きあがるところに、きっとおいしさの秘密があるとみた。私は「中」を注文。隣の女性は「大」を1人で。カウンター向こう側のカップルは「特大」を注文していた。包まれる先からどんどん焼かれていく餃子。予約の電話はじゃんじゃんなる。お客さんはひっきりなし。お客さんのワクワクさ加減に対してお店の人は冷静に粛々と餃子を焼いていく。

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

フライパンに置かれたところ

そして、私の餃子がきた。焼かれる前は華奢(きゃしゃ)な餃子のように見えたのに、焼き上がりはぷっくり大きく見える。そして香ばしいキツネ色の鎧(よろい)をまとっている。餃子に合わせて作られた自家製のタレとラー油を準備していざいざ!

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

皮の食感が楽しみになる見た目

ガリッ!とたくましい皮の中は思いの外ふんわりした餡(あん)。外側と内側のバランスが快感。決して脂っこくはない、けどあっさりではなく「今餃子を食べている!」という満足感にただただ浸れる。メニューが餃子だけというのも、餃子を味わうことに集中できてまた良い。タレが甘めなのも私好みなのである。

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

餡は水分を保ちつつふっくら包まれている

後からきた20年以上通う常連さんは餃子大と瓶ビール。タレのお皿になみなみとタレを注いでいたので、「たっぷりですね」と話しかけると、「これで大20個ちょうど食べ終わる量なのよ。昔は特大イケたんだけどねぇ」と言いつつ、おかみさんと世間話を少しして小気味いいペースで食べていく。

創業して50年。「餃子ブームが来て変わりました?」と聞くと「少しお客さんが増えたように思いますが、別段変わらない毎日です。昔から先代と餃子を作る毎日が普通のことだったので」と二代目店主の乙部大善さん。「同じ味をずっと楽しんでもらえるように。それが毎日の課題です」と。「お店を大きくしたいですか?」と続けて質問。「先代の味を守るためには今の規模が一番ですね」と話しながらも餃子を包む手元は止まらない。今は亡き先代考案の餃子、タレ、ラー油を今は二代目が守っている。

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

2人で回しているため電話に出られないこともあるそうだが、くじけずに何回かかけてみて

むつ菊
静岡県浜松市中区助信町41-27
053-472-0911
水曜〜金曜 12:00-20:00
土曜・日曜 12:00-18:00
定休日 月曜・火曜

クリーミーでほろほろ食感がクセになる 喜慕里

2軒目は「喜慕里(きぼり)」。店名は、お客さんが何世代にもわたって懐かしんで訪れてくれるように、との願いを込めて先代が付けた。

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

こちらも住宅街の中にある。駐車場あり

私たちはお昼の開店と同時に入店。子供が一緒だったので座敷に。

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

どんどん席が埋まっていくランチタイム

並ばなくても入れるんだなぁと思いつつ、娘と遊びながらふと顔を上げると36席あるカウンターは埋まりつつあり、私たちが注文した餃子が来る頃には待つ人の列ができていた。

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

香ばしさがキッチンにあふれる

ここは大きな鉄板で焼き上げるので、餃子は円形ではなく、ゆでたもやしと一緒に2列に並べて運ばれてくる。餃子は小ぶり。見た目はそんなに特徴がないのだが、口に運ぶと……。皮はサクッと軽やかな食感、そして餡がクリーミーなのである。ほろほろっとした感触がクセになる。ひとつひとつが大きすぎないことも皮の食感とクリーミーな餡を楽しむのにちょうどいい!

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

餡はクリーミーでほろっと口の中でほどける

私は餃子だけを楽しみたいので単品にしたが、お昼時は餃子定食か、餃子とラーメンを楽しむ人が多いようだ。

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

醬油(しょうゆ)ラーメンと餃子という人も多い

カウンターをのぞいてみるとタレに浸した餃子を白飯の上にワンクッションおいて口へ、その後その部分のタレ付きごはんを楽しんでいる人もいた。こちらのお店も自家製のタレとラー油。でもお店の二代目・田浦享次さんいわく、「餡にちゃんと味を付けているので、最初はタレなし、その後タレを付けて楽しんでもらえたら」とのこと。

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

自家製タレとラー油で

こちらのお店は1972年に開店。それ以前から先代は小さな屋台で売っていたそうだ。創業時からレシピはなにひとつ変わっていない。

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

私は喜慕里の海鮮餃子の中でエビが一番お気に入り

「味を継ぐのは難しかったですか?」と聞くと「もちろん継ぐのも簡単じゃないけど、毎日同じ味を出し続けるってことの方が難しいね。季節によって野菜の水分量が変わるからね」と二代目が答えてくれた。作り手は二代目ただ1人。「倒れられないよ〜」と笑う。

小ぶりでぷっくり、そしてほろほろ…… 思い出の浜松餃子

「思い出の味を壊さないようにすることが挑戦」と店主

紹介した2店とも老舗だけれど、店の規模は決して大きくはない。店を大きくしないのは、味を守りとおしたいから。真摯(しんし)に餃子を作りたいから。どちらのお店も世代を超えて通ってくれる常連さんがいることがうれしいと言っていた。たかが餃子、されど餃子。いつだって誰かの大切なソウルフードなのである。

喜慕里
静岡県浜松市南区増楽町563-3
053-447-5737
11:30〜14:30
16:30〜21:00
定休日 木曜・第3水曜

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PROFILE

石野明子

2003年、大学卒業後、新聞社の契約フォトグラファーを経て06年からフリーに。13年~文化服装学院にて非常勤講師。17年2月、スリランカ、コロンボに移住して、写真館STUDIO FORTをオープン。大好きなスリランカの発展に貢献したいと、その魅力を伝える活動を続けている。
http://akikoishino.com/
https://www.instagram.com/studiofortlk/
http://studio-fort.com/

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