楽しいひとり温泉

温泉+絶景の紅葉 源泉ぷくぷく、蔦温泉「千年の秘湯 蔦温泉旅館」

ぷくぷくと足元から源泉が湧き上がる……。地球のエネルギーを感じるような場所にそのまま入ることができる温泉があります。青森県の八甲田山のふもとに広がるブナの森にぽつんとある一軒宿・蔦(つた)温泉旅館は、平安時代から続く千年もの歴史がある秘湯です。敷地から歩いて行ける蔦沼は紅葉の名所でもあります。絶景と極上の温泉を求めて旅に出ました。

■連載「楽しいひとり温泉」は、全国各地の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する、温泉ビューティー研究家の石井宏子さんが、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。

錦に染まる森を抜けて、秘湯の一軒宿へ

温泉+絶景の紅葉 源泉ぷくぷく、蔦温泉「千年の秘湯 蔦温泉旅館」

紅葉の錦に包まれた蔦温泉旅館。レトロな玄関は人気の撮影スポット

蔦温泉旅館は歴史を刻んだ木造の建物の趣を残して、館内の改装を少しずつ重ねてきました。レトロな玄関は、いまや人気の写真スポット。錦に染まる木々が彩りを添えています。

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西館3階「趣」の部屋は昭和の職人の木細工を生かした欄間がすてき

西館3階の「趣」の部屋は、かつての別館にあった昭和の職人が細工をした欄間や、美しい木細工を活用して改装したレトロモダンの雰囲気。広縁には、書斎机もあって、長期滞在したくなります。他に、すっきりと落ち着いた西館2階の和室、大正7年建築の本館客室もひとり宿泊ができます。

ピカピカに磨かれた廊下を通って温泉へ

温泉+絶景の紅葉 源泉ぷくぷく、蔦温泉「千年の秘湯 蔦温泉旅館」

情緒たっぷりの廊下を歩いて温泉へ向かいます

古いけれど磨き抜かれたガラス窓、やさしい電球の光、廊下のぬくもりを楽しみながら、温泉へ向かいます。男性も女性も色浴衣と伝統的な宿の浴衣と2枚用意されていて、温泉で汗をかいてもすぐに着替えることができます。

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「泉響の湯」は高い天井まで響くかのように大きな湯玉で源泉が湧き上がる

男女別の大浴場「泉響の湯」へ。なめらかな鏡のような湯面に時折、ぷっくりと大きな湯玉があがり、波紋をひろげて流れていきます。湯船の下は板が敷かれていますが、その底は源泉が湧く岩盤です。ぷくぷくと足元から湧き上がるだけでなく、湯船の下全体からこんこんと温泉が湧き続けています。

ここは、湯船に注がれる温泉の量は自然まかせ、熱い時には湧き水を注いで温度を調整します。最初は少し熱く感じますが、かけ湯をたっぷりして、ざぶんとつかれば、すぐに肌になじんで、しだいに心地よくやわらかな湯に感じます。

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大浴場の並びにある湯上がりの休憩処。湧き水で水分補給できます

湯上がりはあづまし(心地よいという青森の方言)処「楓(かえで)の間」へ。窓の外を眺めるロッキングチェアがずらり。ゆらゆらとしているうちに、居眠りしてしまいそうになります。

青森の恵みが勢ぞろいの夕食

温泉+絶景の紅葉 源泉ぷくぷく、蔦温泉「千年の秘湯 蔦温泉旅館」

前菜は地元食材満載の天ぷら

前菜は天ぷら。十和田湖産のわかさぎは頭から丸ごとぱくり。ふんわりとした身の甘さと内臓のほろ苦さが絶妙です。弘前地区の「嶽(だけ)きみ」は糖度の高いとうもろこし。サクサクと味わうと香りと甘さが広がります。青森南部産のアピオス(ほどいも)はほくほく甘くて栄養豊富。健康野菜として注目の食材のひとつです。

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青森の海と山のお造り

お造りは十和田産の紅マス、三沢産の北寄貝、タコや海藻などを青森のしょうゆ「津軽伝承本醸造醤油」で味わいます。夕食のお供は、青森の地酒「豊盃(ほうはい)」の純米大吟醸。香り高くコクのある日本酒が地元の食材にぴったりです。

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郷土料理「けいらん」も登場する

おもしろい郷土料理が登場しました。「けいらん」という名前の通り、見た目は小さな卵のようです。白みそ仕立ての汁の中に入っているのですが、なんと、お餅の中には餡(あん)が入っています。ほんのり甘い餡とくるみの粒々のアクセントが、甘しょっぱい味わいになって、くせになるおいしさ。青森ではお祝い事がある時に食べるのだそうです。

夜と朝は、平安時代に開湯された久安の湯へ

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歴史ある「久安の湯」は男女入れ替え制

こんこんと湧き続ける源泉が足元からぷくぷくと湧き上がる久安の湯は、男女入れ替え制で、女性は夜と朝に入ることができます。ちょっと熱めですが、「くうううう」と言いながら湯につかれば、じんじんと染み入るように体が温まってきます。泉質は、ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉、しっとり保湿の硫酸塩泉、すべすべ美肌の炭酸水素塩泉、ぽかぽか温まる塩化物泉がマルチに働くうれしい温泉です。

早起きして蔦沼で最高の瞬間を待つ

温泉+絶景の紅葉 源泉ぷくぷく、蔦温泉「千年の秘湯 蔦温泉旅館」

早朝の蔦沼へ散策。幻想的な美しさにうっとり

蔦沼は紅葉の名所。そして最高の瞬間は日の出とともに一瞬だけ訪れる奇跡の絶景があるのです。その光景を求めて世界中からカメラを抱えて人々が集まってきます。蔦沼まで蔦温泉旅館の敷地から遊歩道を歩いて15分ほど。宿の出発は夜明け前の朝5時、懐中電灯を頼りに森の小道を進みます。

こんな時間から本当に人がいるのかしら?と半信半疑で真っ暗な森を行き沼へ近づくと人の気配が……。うわ~。湖畔の木道には、ずらりとカメラの三脚が並び、人、人、人。なんとか、場所を確保してカメラ片手に夜明けを待ちます。

だんだんと明るくなり、紅葉の蔦沼の姿が現れてきました。朝もやが次第に雲になってたなびく様子が幻想的。夢中でシャッターを切ります。太陽が出れば、ご来光を反射させて一瞬だけ真っ赤に輝くことがあるそうですが、この日はその光景を見ることはできませんでした。この続きは、またいつかの旅にとっておきます。

温泉+絶景の紅葉 源泉ぷくぷく、蔦温泉「千年の秘湯 蔦温泉旅館」

目の前で仕上げる青森名物「貝焼き」

宿へ戻って、温泉へ直行。かじかんだ手足を温めて「ああ。生き返る~」。そして、お待ちかねの朝食です。早朝から活動したのでおなかがペコペコ。ずらりと並ぶおいしそうな品々。青森の朝ごはんの定番「貝焼き」は目の前で作ってくれます。

温泉+絶景の紅葉 源泉ぷくぷく、蔦温泉「千年の秘湯 蔦温泉旅館」

オリジナルの辛口朝カレーは宿で人気の定番メニュー

たっぷり生野菜のサラダにりんご、温野菜に朝カレーと、あっという間にお盆がいっぱい。パワフル朝ごはんで元気をチャージします。

今年は紅葉がゆっくりで、八甲田・奥入瀬エリアでも、まだもう少し楽しめそうです。蔦温泉旅館は、冬期は週末中心の営業ですが、ひっそり静かな雪の時期もすてきです。

青森県・蔦温泉 千年の秘湯 蔦温泉旅館
https://tsutaonsen.com/

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1.足元から源泉が湧く希少な温泉
2.趣ある美しい秘湯の宿
3.朝の蔦沼散策

BOOK

温泉+絶景の紅葉 源泉ぷくぷく、蔦温泉「千年の秘湯 蔦温泉旅館」

全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!

石井宏子さんの著書「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月16日に出版されます。温泉ビューティー研究家・旅行作家ならではの、旅してみつけた、女性がひとりで安心して楽しめる温泉宿を紹介するハンディーな一冊。公共交通機関で行ける、自分へのごほうびで泊まりたい、いい宿を全国から厳選し、あわせて、女性目線で選んだ周辺の立ち寄り先、ランチやスイーツも取り上げます。ひとりでも楽しい観光列車も登場します。税別1400円。

PROFILE

石井宏子

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書に「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)、「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)、「感動の温泉宿100」(文春新書)などのほか、「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月に発売された。

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