太公望のわくわく 釣ってきました

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

西へ東へ、海へ川へと旅して釣りする太公望たちの奮闘記です。魚との知恵比べ、釣った魚で一杯……。目的は人それぞれながら、闘いの後の心地よい疲労と旅情は格別。前回に引き続き朝日新聞の西田健作記者が、千葉県旭市の飯岡港から、タイの大物を夢見て船に乗り込みますが……。

狙うは大マダイ でも数釣りもしたい

イチかバチかで大物を狙うか、それとも手堅く数を稼ぐか。釣り人はいつも、どちらを優先しようかと悩みます。1万円前後の乗船料を払って海に出られるのは、せいぜい月に1度か2度。ならば、大きな魚を釣りたい。でも、釣れずに手ぶらで帰るのも……。

そんな悶々(もんもん)とした気持ちで船宿さんのウェブサイトを巡っていたら、千葉・飯岡港から出船するマダイ船で、ハナダイが釣れているとの釣果報告を見つけました。マダイなら80センチ超も狙えるけれど、ハナダイだと40センチ超まで。でも、めったに釣れない大マダイと違って、数が多いハナダイなら何匹かは釣れるはず。大物の夢を追いつつ、「お土産」も確保。まさに一石二鳥。これは行くしかない!

10月下旬、そんなそろばん勘定を反芻(はんすう)しながら、千葉県旭市の幸丸にお世話になってきました。東京から東に100キロほど。銚子のすぐ近くにある飯岡港は、遊漁船と職漁船がずらりと並ぶ大きな漁港です。

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

下船後に撮った飯岡港。たくさんの漁船が整然と並ぶ

集合時間は午前4時。真っ暗な漁港に停泊した幸丸の船に煌々(こうこう)と明かりが灯ると、気がせく釣り人たちが一斉に乗り込みます。

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

午前4時過ぎ。幸丸に乗り込む釣り人たち

タイの釣り方にもいろいろありますが、私が今回選んだのは「一つテンヤ」。細い道糸と軽い錘(おもり)を使うことで、魚のひきがダイレクトに感じられる人気の釣り方です。餌は丸ごと1匹のエビで、これに針を刺せば準備完了。実にシンプル。

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

餌のエビ。尾羽を切ってそこから針を刺す

航程は1時間ほど。ポイントの水深は約50メートル。エビを底まで落としてから、エビが跳ね上がるように竿(さお)をしゃくり上げます。そして数秒ストップ。アタリが無かったら、またエビをゆっくりと底まで落とし、数秒待って竿をしゃくり上げる。その繰り返し。海底近くを泳いでいるマダイやハナダイが、跳びはねるように動かしたエビに思わずかじりつくのを待つのです。

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

一つテンヤの仕掛け。軽い錘の先に2本針の遊動式。魚の食い気を誘おうとヒラヒラする飾りも付けてみた

「底荒れ」か、来ないアタリ

飯岡港の遊漁船は2日ほど出船していないので、しばらく釣ってみないと魚の活性が分かりません。まさか、ハナダイまでご機嫌斜めなんてことは……。

開始から30分。なかなかアタリがありません。おそらく時化(しけ)で水が濁ってしまい底荒れになっている状況で、タイやハナダイがエビを見つけにくいようです。でも、マダイ釣りとはこんなもの。根気よくしゃくり続けるしかありません。

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

竿先の曲がり具合で、潮の流れを確かめる筆者

「一つテンヤ」で大事なのは、エビをしっかりと海底まで送り届けることです。簡単だと思うかもしれませんが、軽い錘を使っているので、潮の流れが速いと錘は流されていつまでも底につきません。かといって、錘を重くしすぎると、エビが自然に落ちなくなってしまいます。その日の潮の強弱によって錘の重さを調整するのが、この釣りの肝なんです。

錘の動きに合わせて曲がる竿先をみていると、そこそこ潮が流れているようです。8号(約30グラム)だと、錘が海底から浮き上がってしまうみたい。10号(約38グラム)にすると、潮流と錘の重さの釣り合いが取れました。何度かしゃくりを繰り返して、カツカツという小さいアタリにしっかり合わせると、竿がググッと曲がって、まずは小ぶりのハナダイをゲット。何度見ても、桜色のきれいな魚です。

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

小ぶりだけれど、きれいなハナダイが釣れた

実はハナダイとは関東での呼び方で、正式名称はチダイといいます。マダイとの違いは、エラブタの縁が真っ赤なこと。あと、尾の縁が黒くならないことです。お祝いの時に出てくる「タイ」の姿焼きは、ハナダイのことがよくあります。「マダイじゃなくてハナダイじゃないか!」なんて思うのは釣り人だけですが……。

「一つテンヤ」は本命以外の魚がいろいろと釣れるのも特徴です。私のエビには、グググググと竿を大きく曲げた青物のワカシ(ブリの幼魚)、エソ、フグが食いつきました。

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

ブリの幼魚のワカシも。青物なので小さくても引きは強い


桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

外道のエソもエビを食ってきた


桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

フグも釣れた

ハナダイの数釣りに専念したら

でも、肝心のマダイが釣れない! ほかの人がマダイを釣っているのなら辛抱強く待てるのですが、この日は左舷に並んだほかのつり人もほぼマダイゼロ。午前11時の納竿まであと2時間。ハナダイはいまだ3匹。私は、ついに二兎(にと)を追うのはあきらめて、ハナダイの数釣りに徹することにしました。

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

大ダイを夢見て竿を出し続ける釣り人たち

それまでは1匹の大きなエビの頭と尾の部分に2本の針を刺していましたが、これを2匹の小さなエビに代えてそれぞれに針を刺す形に。マダイより小さなハナダイが餌を食べやすいように変えました。しゃくり方も、鋭く、小さく。小さい魚は、こうした素早い動きに寄ってくることが多いんです。

狙いは当たって、以後は周りよりいいペースでハナダイが釣れるように。足元の桶(おけ)が桜色で埋まっていきました。

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

桶にはたくさんのハナダイが

ハナダイでもタイはタイ。時にはググググとなるひき味もよく、いい感じで竿を曲げてくれます。追い上げが実って、最終的にはハナダイが10匹釣れた「ツ抜け」。晩ご飯には十二分です。

持ち帰ったハナダイは塩焼きとタイめしに。ハナダイは刺し身にするとマダイよりちょっとだけ水っぽいのですが、その分、焼き魚にするとふっくらと仕上がるので、マダイよりおいしいかも。

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

ハナダイは塩焼きに

もちろんタイめしは、ハナダイでも絶品。

桜色のハナダイが乱舞 遊動テンヤで数釣りを楽しむ 千葉県旭市・飯岡港

ハナダイはタイめしにも

残念ながら大ダイは釣れず、「一石二鳥」とはいきませんでしたが、きれいなハナダイに癒やされた釣行となりました。

■飯岡港・幸丸
https://cb-sachimaru.com/

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PROFILE

  • 釣り大好きライター陣

    安田明彦、猪俣博史、西田健作、石田知之、木村俊一

  • 西田健作

    朝日新聞記者
    1971年、神奈川県茅ケ崎市生まれ。15年ほど前に千葉県浦安市に引っ越し、ディズニーランドのすぐ近くで魚が釣れることを知り、釣りにはまる。朝日新聞社では文化くらし報道部で美術担当、映画担当などを務め、現在は同部次長(デスク)。外に出られない平日のモヤモヤから、ますます週末の釣りにのめり込んでいる。

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