クリックディープ旅

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

今回は、カナダの北極海を目指す、再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編の1回目です。日本から飛行機でカナダ・ユーコン準州のホワイトホースへ向かい、車でフォックスレイクまで行きます。

(文:下川裕治、写真:阿部稔哉)

バンクーバーからホワイトホース、フォックスレイクへ

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

1990年に発刊された『12万円で世界を歩く』。そのコースを約30年後に辿(たど)ってみる旅は、今回から北極圏に突入する。

当時、日本とアメリカ大陸の西海岸を結ぶ空路は、ロサンゼルス路線が安かった。そのため、ロサンゼルスからグレイハウンドのバスで北上。バンクーバーを経てホワイトホースに着いた。しかしその後、世界の空路は一気に充実。バンクーバーまでの料金はロサンゼルス路線とほぼ同額になり、1万円近く安くなっていた。

しかし空路の発達は、長距離バス路線の乗客を奪っていく。調べると、グレイハウンドは、昨年10月、カナダ西部のほぼ全線から撤退していた。しかたなく、ホワイトホースまでの安い飛行機を探す。北極海を目指す陸路旅は、ホワイトホースからはじまった。

今回の旅のデータ

日本からバンクーバーまでの路線にはLCCの就航がない。往復で7万円を切る価格帯から8万円前後といった安い運賃の世界は、中国国際航空、中国東方航空といった中国系航空会社の独壇場。どちらも北京、上海での乗り継ぎになり、接続がよくない便ほど安くなる傾向だろうか。次に安いのがキャセイパシフィック航空。

直行便は、往復で13万円台からとぐんと高くなる。全日空、日本航空の日系航空会社のほか、アメリカン航空、カナディアン航空が就航している。

バンクーバーからホワイトホースまでは、エア・ノース、カナディアン航空などが就航している。往復で1万円~1万5000円といったところ。エア・ノースの方が安く、機内食も無料で提供されるなどお得感がある。

長編動画

車はホワイトホースを出発。秋の日差しを浴びながら、紅葉の森に包まれたクロンダイク・ハイウェーを快適ドライブ。このときは……。

短編動画

このあたりの森はまだ穏やか。リス、ウサギ、プレーリードッグ……、さまざまな動物を目撃した。

バンクーバーからホワイトホース、フォックスレイクへ「旅のフォト物語」

Scene01

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

少しでも旅の費用を節約するのが、『12万円で世界を歩く』旅。いちばん安かった中国国際航空を選んだ。運賃は往復で7万9942円。北京の空港で乗り換えになる。中国の空港は日本に比べてセキュリティーチェックが高圧的で厳しい。パソコンのほか、コード類、折りたたみ傘なども鞄(かばん)から出さないといけない。

Scene02

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

バンクーバーが見えてきた。物価の高いカナダ。12万円の予算では難しい。約30年前の旅も北極圏エリアは特例にした。しかし出費をなんとか切り詰めたい。グレイハウンドのバスがなくなったことを知ったとき、眼下の島を縫うように北上する船便も調べた。しかし飛行機よりはるかに高額。旅は飛行機の時代だと痛感した。

Scene03

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

木材をふんだんに使ったバンクーバーの空港。温かみが伝わってくるが、入国審査はときに厳しい。カナダはアジアからの移民が多い国。その滞在資格や旅の目的など、厳しくチェックされる。しかし今回は、「ホワイトホース行きに乗り換える」と伝えると、「オーロラが見えるといいね」とあっさり入国スタンプを押してくれた。

Scene04

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

バンクーバーの空港出口でホットドッグ。ジャパドッグという名前の和風味で、ポテトチップスと飲み物がついて8.82カナダドル、約856円。これは出費を引き締めないと……。店員は日本人の若い女性。支払いはクレジットカードのみ。チップ欄で悩んでいると、「いいですよ。チップなしで」という日本語が。ほっとした。

Scene05

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

ホワイトホースまで運航しているカナディアン航空は、預け荷物や機内食が有料。LCC化の道を一気に突き進んでいる。同じ路線を飛ぶエア・ノースも……と思っていると、厚切りのサラミとチーズ、ハム、オリーブ、果物……。しかしこのサラミ、厚すぎない? これってカナダサイズ? 彼らには狭い座席で悩んでしまった。

Scene06

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

ホワイトホースの空港に着いた。ロビーに、闘うカリブーのはく製があった。角を絡ませて闘うこの種のはく製を、この後も、何回か見た。カリブーの闘いは壮絶で、ときに死ぬまで闘うという。角がはずれなくなるときもあるらしい。なんだかかわいそうな話。こういうものを空港に飾る感性。カナダなのでしょうか。

Scene07

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

ホワイトホースは北緯60度43分。9月とはいえ、夜の8時になってもまだ明るい。ようやく暗くなった頃に空港を出た。寒さに慌ててセーターを着こむ。ユーコン準州の州都。州の人口の75%がこの街に集まっているとウィキペディアを読み、人口欄を見ると2万2898人という数字。少なッ。そういう世界に到着したってことですな。

Scene08

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空港でレンタカーを借りた。僕は運転免許がないので、担当は阿部稔哉カメラマン。車高の高い四輪駆動車が筋だが、このルートはガソリンスタンドが少ない。選ぶ基準は燃費と約30年前に教えられた。そこでフォードのエコスポーツに。燃費は悪くなかったが、ガソリンタンクが小さかった。これがその後の旅の足を引っ張ることになる。

Scene09

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

街に入ったのは夜10時すぎ。ほとんどの店は閉まっていた。人口が少ないから無理ないか……と眺めると、酒屋だけが開いていた。カナダは日本のように気軽に酒類を買うことはできない。この種の専門酒屋のみ。しかしここはほんとうに酒類だけで、缶詰や燻製(くんせい)のつまみはない。結局、ビールだけを飲んで寝ました。

Scene10

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

ホワイトホースで泊まったのはこのホテル。ツインが85.34カナダドル、約8279円。アジアの感覚ではかなり高いが、キャンセルが出ての割安料金。その後、北極圏の旅では、ホテル代の高さに泣くことになる。このホテルがいかに安かったか。このとき、僕らはなにも知らず寝ることに。

Scene11

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

食費を節約するためにレストランにはできるだけ入らないことを決めていた。そこで翌朝、ホワイトホース市内のスーパーへ。しかし食材の少なさに不安を覚えた。菓子類は豊富だが、それ以外となると寂しいかぎり。パンとチーズしか買うことができなかった。その不安が隣のマクドナルドに向かわせたのだが、そこで食べたのは、次の写真で。

Scene12

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

マクドナルドで注文したのはラップセット。7.6カナダドル。約737円。メニュー写真にはハッシュドポテトが脇に添えられていた。で、ラップをかじると、「ん?」。ソーセージにもうひとつ、ハッシュドポテトが。つまりセットを頼むとハッシュドポテトがふたつ。そうしないとカナダ人は満足しない? 1.5食分を食べたような飽食感、味わえます。

Scene13

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

ホワイトホースを出発。クロンダイク・ハイウェーをドーソン・シティーめざして進んだ。街を出ると、突然、圧倒的な秋に放り込まれた。シラカバに似た木の葉が黄に染まり、柔らかな秋の日差しを浴びて輝いていた。うっとりとするような快適ドライブ。運転しているのは阿部カメラマンですが。その風景は長編動画でも。

Scene14

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

この周辺はアウトドアのメッカ。真夏を過ぎたいまも、キャンピングカーをよく見た。道に沿ってキャンプサイトが点在している。利用料は1日12カナダドル、約1164円。立派な薪(まき)も用意され、うらやましいほど。ところどころにこんなカメラマーク。景色がいいということらしい。そのひとつに寄ってみた。眺めは次の写真で。

Scene15

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

フォックスレイクという湖だった。湖底の小石までくっきりと見えた。湖畔のキャンプサイトには1台のキャンピングカー。約30年前にもこの湖に寄っていた。湖の透明度は、そのときと同じような気がする。湖畔のテーブルで、スーパーで買ったパンを食べた。豊かな自然と貧相な食事。当時つけた写真の説明まで思い出した。

【次号予告】次回はフォックスレイクからドーソン・シティーへ。
※取材期間:2019年9月11日~12日
※価格等はすべて取材時のものです。

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BOOK

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編1

12万円で世界を歩くリターンズ [赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編] (朝日文庫)

実質デビュー作の『12万円で世界を歩く』から30年。あの過酷な旅、再び!!
インドネシアで赤道越え、ヒマラヤのトレッキング、バスでアメリカ一周……80年代に1回12万円の予算でビンボー旅行に出かけ、『12万円で世界を歩く』で鮮烈デビューした著者が、同じルートに再び挑戦する。

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編】」 (朝日文庫)。

  • 阿部稔哉

    1965年岩手県生まれ。「週刊朝日」嘱託カメラマンを経てフリーランス。旅、人物、料理、など雑誌、新聞、広告等で幅広く活動中。最近は自らの頭皮で育毛剤を臨床試験中。

再び「12万円で世界を歩く」タイ編6

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