楽園ビーチ探訪

ゴーギャンとブレルが眠る、マルケサス諸島ヒバオア島

フレンチポリネシア(タヒチ)のマルケサス諸島に属するヒバオア島に興味をもったきっかけは、画家ゴーギャンが眠る島だから。西洋文明から逃れ、楽園を希求していたゴーギャンが、ついのすみかとして選んだ島は一体、どんなところなのでしょう?

(トップ写真:島唯一のリゾート、ホテル・ヒバオア・ハナケエ・パール・ロッジ)

連載「楽園ビーチ探訪」は、リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信するビーチライターの古関千恵子さんが訪れた、世界各地の美しいビーチや、海のある街や島を紹介いたします。

ヒバオア島はタヒチ島の北東約1400キロ。フレンチポリネシアの玄関口、タヒチ島・パペーテからは直行便なら約3時間20分、乗り継ぐと4~5時間はかかります。ここまで離れると、同じフレンチポリネシア内でも30分の時差があり、方言も異なります。たとえば「おはよう」は、タヒチ語で「イアオラナ」、マルケサス語で「カオハヌイ」。

島の印象も、タヒチ島とは異なります。どちらの島も1000メートルを超す山がそびえているのは共通していますが、タヒチ島はギザギザととがっていて、一方のヒバオア島は海へとなだれこむような断崖絶壁。海の色も少し墨を加えたような深く濃い青で、荒々しい野性味を感じます。

ゴーギャンとブレルが眠る、マルケサス諸島ヒバオア島

岬がいくつも海へなだれこむように伸びた地形

ゴーギャンとブレルが眠る、マルケサス諸島ヒバオア島

人と会うことがめったにないヒバオア島のビーチ

面積約320平方キロメートルのヒバオア島には、七つの村が点在し、人口は2000人前後。そのほとんどが島の南部のアツオナという町に暮らしています。島内を一日車で走ってみたけれど、未舗装の道が多く、アツオナ以外は集落に入っても、人を見かけたのは1、2回。人の気配よりも、自然の精気が勝っています。

ゴーギャンとブレルが眠る、マルケサス諸島ヒバオア島

裸馬を乗りこなす島民。当たり前のように馬がいます

ゴーギャンが最初にタヒチへ移り住んだのは1891年。タヒチ島に居を構えましたが、貧窮の末にフランスへ帰国。けれどタヒチへの思いを捨てきれずに1895年にふたたびタヒチ島へ。さらなる楽園を求めて、マルケサス諸島ヒバオア島へ渡ったのは1901年のことでした。晩年の2年間、アツオナという町に「快楽の館」と名付けた家を建て、暮らしていました。

アツオナにあるゴーギャン博物館は、そんな彼の生涯をたどった資料と作品や自画像のレプリカなどが展示されています。レプリカとはいえ、見覚えのある作品は感慨深く、詳細に記された年表など、見応えがあります。あめ色に変色した販売証書や画家仲間へ送った手紙も展示されています。

ゴーギャンとブレルが眠る、マルケサス諸島ヒバオア島

ゴーギャン博物館はヒバオア島きっての観光スポット

ゴーギャンとブレルが眠る、マルケサス諸島ヒバオア島

ゴーギャンの制作風景を想像させる画材。もちろん、彼の使ったものではありませんが

そして敷地内にはゴーギャンが暮らしていた「快楽の館」を再現した高床式の建物もあります。竹で編んだ壁にパンダナスの葉で編んだ天井の小屋は、大きな三角窓や押し上げ窓から外光が差し込み、その一角には描きかけのキャンバスと空き缶に突き刺した数本の絵筆、ひねり出したままの絵の具などが置かれています。ゴーギャンは、マルケサスの人々に好かれていなかったとか、孤独死だったとか、寂しい晩年の話を聞きますが、南国の光を受けながらキャンバスに向かっていた姿を想像すると、パリよりも、どこよりも、この島にいることが幸せだったのではないかと思えてきます。

ゴーギャンとブレルが眠る、マルケサス諸島ヒバオア島

ゴーギャンの「快楽の館」を再現した高床式の小屋

ゴーギャン博物館と併設して、この島のもうひとりの有名人、ベルギーの歌手にして俳優のジャック・ブレルの記念館もあります。彼は1975年にヒバオア島へ移住し、彼もまた最後の2年をここで過ごしました。彼の歌声が流れる、倉庫のような建物の中央には、愛機の「ジョジョ」号が置かれています。この小型飛行機を使ってタクシー飛行を行うなど、島民のために奉仕したそうです。そのせいか、ヒバオア島の空港名は「ヒバオア・ジャック・ブレル空港」となったとか。

ゴーギャンとブレルが眠る、マルケサス諸島ヒバオア島

ジャック・ブレル文化センターの中央には愛機のジョジョ号が

ゴーギャンとブレルは、アツオナの町と太平洋を見渡す丘の上の、「厳しい試練」という意味のカルヴェール墓地に眠っています。ゴーギャンの墓はプルメリアの木の下に、それほど離れていない距離で、緑に包まれたブレルの墓があります。

ゴーギャンとブレルが眠る、マルケサス諸島ヒバオア島

丘の上から町と海を眺めているゴーギャンの墓石

【取材協力】
タヒチ観光局
https://tahititourisme.jp/ja-jp/

エア タヒチ ヌイ
https://www.airtahitinui.com/jp-ja

ホテル・ハナケエ・パール・ロッジ
https://www.hotelhanakee.com/

PROFILE

古関千恵子

ビーチライター。リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰りかえすこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。ブログも配信中。

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