魅せられて 必見のヨーロッパ

ワイン都市ウィーンで居酒屋文化「ホイリゲ」を楽しむ

ツアーの行き先としてはあまりメジャーではないけれど、足を運べばとりこになってしまう。そんなヨーロッパの街を、ヨーロッパを知り尽くした作家・写真家の相原恭子さんが訪ねる連載「魅せられて 必見のヨーロッパ」。作曲家ベートーヴェンが2020年に生誕250年を迎えるのに先立ち、彼が活躍したウィーンでの足跡をたどるシリーズを3回にわたってお届けしてきましたが、今回はその番外編。大都市としては世界で唯一、市内で大量のワインを生産するとされるウィーンで、ワイン居酒屋文化「ホイリゲ」を楽しみました。

<遺書、恋文、隠し子も? ベートーベン生誕250年を前にウィーンゆかりの地をめぐる(3)>から続く

大量のワイン生産する街の居酒屋文化

前回まで3回にわたり、ウィーンの町なかや郊外のハイリゲンシュタットにベートーヴェンゆかりの地を訪ねましたが、ハイリゲンシュタットはまさにホイリゲ(ワインの作り手による居酒屋文化)で知られる地域。ウィーンは市内に700ヘクタールを超えるブドウの作付面積があり、大量のワインを生産している世界で唯一の都市と言われます。

ワイン都市ウィーンで居酒屋文化「ホイリゲ」を楽しむ

ハイリゲンシュタットのホイリゲ「マイアー・アム・プファルプラッツ ベートーヴェンハウス」の入り口

ワイン都市ウィーンで居酒屋文化「ホイリゲ」を楽しむ

松の枝の束が、ホイリゲ営業中の目印

ホイリゲ「マイアー・アム・プファルプラッツ ベートーヴェンハウス」へ入ると、ブドウ棚のある中庭が広がります。セルフサービスで料理やおつまみを買って、ワインはウェーターに注文します。

ワイン都市ウィーンで居酒屋文化「ホイリゲ」を楽しむ

定番の豚肉のロースト温野菜添え

ホイリゲとは、本来はその年にできた「新酒」を指しますが、そうした新酒を飲ませる「居酒屋」もホイリゲと呼ばれます。屋内にはウェーターがサービスするレストラン形式の部屋や個室もあります。

ワイン都市ウィーンで居酒屋文化「ホイリゲ」を楽しむ

私たちがテイスティングした個室

ワイン都市ウィーンで居酒屋文化「ホイリゲ」を楽しむ

チーズをのせた香ばしいパンがテイスティングのお供

ソムリエのミリアムさんおすすめのワインを4種類テイスティングしました。

ワイン都市ウィーンで居酒屋文化「ホイリゲ」を楽しむ

ソムリエのミリアムさん

ワイン都市ウィーンで居酒屋文化「ホイリゲ」を楽しむ

テイスティングした4種類のワイン

前年に醸造したワインを翌年の11月11日(聖マルティンの日)まで、ホイリゲと呼びます。写真右から3本目までは2018年でホイリゲ。最も左のワインは2017年ですから、ホイリゲと呼ぶ時期を過ぎています。

様々なワインと大皿盛りの料理を気取らず楽しむ

まずは「ゲミッシュター・ザッツ」(白ワイン)。ミリアムさんの説明で「ゲミッシュター・ザッツとは、同じブドウ畑で3品種から20品種までの色々なブドウを栽培して一緒に絞り、発酵させたワイン」です。元々は気候によるブドウの熟し方の違いや、万一の不作にも対応して常に品質を保つためでしたが、伝統的な手法が評価され、スローフード協会から「味の箱舟」に選ばれています。ちなみに、このワインは、ピノブラン、シャルドネ、ピノノワールなど5種類のブドウを使っています。

続けて、リースリング(白ワイン)、デブリンクのロゼワイン、ツヴァイゲルト(赤ワイン)。ウィーンではブドウ作付面積の80%が白ワインですが、ツヴァイゲルト(ブドウの品種)はコクがあり飲み口も良く人気の赤ワインです。

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豚肉やズッキーニ、ナスのフライ、チキンやソーセージのグリル

ワイン都市ウィーンで居酒屋文化「ホイリゲ」を楽しむ

ウィーンの民謡ともいえるシュランメル音楽

生演奏を聴きながら、大皿盛りの料理を取り分けて、気取らずに食べ、飲むのもホイリゲならではの楽しみ。カリッと香ばしく揚がったフライがホイリゲ(新酒)に合います。

ワイン都市ウィーンで居酒屋文化「ホイリゲ」を楽しむ

ワインになる前の「シュトゥルム」

10月の風物詩と言えるのが、ワインになる前の発酵途中で味わう「シュトゥルム」。ドイツ語で「嵐」という意味です。ドイツのラインガウやモーゼル川、アール川流域ではフェーダーヴァイサーと呼ばれます。発酵中ですので、炭酸を感じます。店によって、またブドウの品種によって、味わいが異なります。さらりとしてリンゴの香りと味わいがあるものや、まさにブドウの味わいのものもあります。この違いがシュトゥルムの魅力なのです。この店のシュトゥルムは、桃の風味を感じるネクターのような芳醇(ほうじゅん)な香りと甘みがあります。

音楽はもちろんですが、緑多いウィーンの森の風景や美食も魅力です。カーレンベルクやグリンツィングなど周囲にはハイキングロードがたくさんあります。ベートーヴェンがハイリゲンシュタットへ来るきっかけになったのも、医者に環境の良いところでの療養を勧められたためでした。

ゆとりのある日程で、音楽家の足跡を巡り、緑の中を散策して、ホイリゲでワインを楽しめば、きっと自分だけの新たな発見があることでしょう。

ウィーン市観光局 https://www.wien.info/
オーストリア航空 https://www.austrian.com/

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PROFILE

相原恭子(文・写真)

慶應大学卒業。ドイツ政府観光局勤務を経て、作家&写真家。「ドイツ地ビール夢の旅」(東京書籍)、「ドイツビールの愉しみ」(岩波書店)、「ベルギー美味しい旅」(小学館)、「京都 舞妓と芸妓の奥座敷」(文春新書)、「京都 花街ファッションの美と心」(淡交社)、英語の著書「Geisha – A living tradition」(フランス語、ハンガリー語、ポーランド語版も各国で刊行)など著書多数。国内はもちろん、国際交流基金・日本大使館の主催でスペイン、ハンガリー、エストニアで講演会や写真展多数。NHK「知る楽」「美の壺」、ラジオ深夜便「明日へのことば」「ないとエッセー」、ハンガリーTV2、エストニア国営放送など出演多数。
https://blog.goo.ne.jp/goethekyoko

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