にっぽんの逸品を訪ねて

米津玄師NHK紅白の中継地「大塚国際美術館」、陶板名画と鳴門鯛を楽しむ旅

日本にいながら世界各国の美術館をめぐったような体験ができる。それが徳島県鳴門市の「大塚国際美術館」です。昨年末のNHK紅白歌合戦では、徳島県出身のシンガーソングライター、米津玄師さんがここから生中継で出演し、話題になりました。今回は、魅力が再認識された大塚国際美術館と鳴門海峡のタイを味わう鳴門市の旅です。

連載「にっぽんの逸品を訪ねて」は、ライター・中元千恵子さんが日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介します。

圧倒的なスケール。世界中の名画を再現

大塚国際美術館があるのは、瀬戸内海に浮かぶ淡路島と鳴門市を結ぶ大鳴門橋の西側のたもと。鳴門のうず潮で有名な鳴門海峡のすぐ近くです。

5階分の展示室は上部の1階、2階以外はすっぽりと山に覆われているので、山すそにある正面玄関を入り、エスカレーターで上るとそこは地下3階にあたります。

米津玄師NHK紅白の中継地「大塚国際美術館」、陶板名画と鳴門鯛を楽しむ旅

正面玄関から入ると山の中にある展示室へ

館内には、パリのルーヴル美術館が所蔵のはずのダビンチ作『モナ・リザ』、同じくオランダのマウリッツハイス美術館のフェルメール作『真珠の耳飾りの少女』、イタリアのウフィツィ美術館のボッティチェッリ作『ヴィーナスの誕生』など、日本にあるはずのない名作絵画が勢ぞろいしているように見えます。

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『モナ・リザ』を発見?

「どうして?」と不思議になりますが、これらは原画ではなく、“陶板名画”なのです。陶板名画は、撮影した原画をもとに、大きな陶器の板に色や大きさ、筆づかいによる表面の質感までも忠実に作品を再現したものです。大塚国際美術館は日本最大級の常設展示スペースを持つ「陶板名画美術館」で、館内には世界26カ国の1000点以上の陶板名画が並んでいます。

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『真珠の耳飾りの少女』のほか、フェルメールの陶板名画は8点並んでいます

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再現された『ヴィーナスの誕生』も間近で見られます

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筆づかいまで忠実に再現されています(画像提供:大塚国際美術館)

陶板名画は、変色などの劣化に強く、約2000年以上にわたって色や姿を保つといわれます。この美術館では、名画に近づき、写真撮影することもやさしくふれることもできます。

『Lemon』を歌ったあの場所、古代遺跡や礼拝堂の空間もまるごと再現

正面玄関から入った地下3階では、“環境展示”といって、古代遺跡や礼拝堂の壁画を空間ごとそのまま再現する展示が多くみられました。

北イタリアのスクロヴェーニ礼拝堂の内部を再現した空間は、スケールの大きさ、壁画の細密さに圧倒されます。「聖母マリアの生涯」12場面や「キリストの生涯」25場面が描かれ、時間を忘れて見入ってしまいます。美しいブルーに染まった天井でほほ笑む聖母マリアがこちらを見ているようでした。

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再現された『スクロヴェーニ礼拝堂壁画』

イタリアのポンペイ遺跡にある『秘儀の間』を再現した作品では、壁画のはがれ落ちた部分も忠実に作られています。ポンペイ・レッドとよばれる壁画の朱色が鮮やかです。

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再現された『秘儀の間』

NHK紅白歌合戦の中継で米津さんが歌ったシスティーナ・ホールもあり、『Lemon』スペシャル陶板が飾られていました。

修復前と修復後の『最後の晩餐』、名画を心ゆくまで間近で見られる

館内は、古代から現代まで年代順に作品が並び、西洋美術史の変遷が分かるようになっています。古代や中世の作品を展示した地下3階から地下2階へ上がると、華やかなルネサンス美術やバロック美術の時代へ。

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作品は時代を追って展示されている

必見は、部屋の壁2面を使って修復前と修復後の両方を再現したレオナルド・ダビンチの『最後の晩餐(ばんさん)』です。イタリアのミラノにあるオリジナル作品は限られた時間しか見学できませんが、ここでは心ゆくまで間近で見ることができます。一人一人の表情や手の動き、テーブルクロスのたたみ跡の凹凸まで描き分けた精密さにため息が出ます。

【動画】修復後と修復前の両方を再現したレオナルド・ダビンチの『最後の晩餐』。大塚国際美術館

作者クロード・モネの「作品を自然光のもとで見てほしい」という願いをかなえる形で、『モネの「大睡蓮」』という環境展示の屋外エリアがあります。

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まるで池が広がっているように見えるエリア『モネの「大睡蓮」』

さらに階を上がれば、ゴッホが描いたヒマワリのうち、花びんの『ひまわり』全7点が並ぶ“7つのヒマワリ”のコーナーも。うち1枚は原画が焼失しているのですが、ここでなら原寸大に再現された作品が見られます。

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右側の作品の原画は残念ながら焼失しています

大塚国際美術館ではより名画を楽しめるように、絵の中の登場人物になりきれる「#アートコスプレ フェス」や、テーマ別のガイドツアー、オリジナル「脳活パネル」による間違い探しなど、時期によってさまざまなイベントも開催しています。

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コスプレで名画の中の登場人物に変身できます(画像提供:大塚国際美術館)

おいしぃぃぃ~と叫ぶ、カフェメニューやオリジナルグッズ

カフェでも、名画にちなんだ季節限定スイーツが登場。地下2階の「カフェ・ド・ジヴェルニー」では来年3月31日まで、「おいしぃぃぃ~と叫ぶ ムンクのどら焼きセット」(600円)を販売しています。鳴門特産のサツマイモ「鳴門金時」を使ったあんと小倉あんがたっぷり。お茶も徳島名産の「阿波晩茶」、老舗菓子店がつくるバターおかき付きとこだわりの和スイーツです。

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モネの絵画のようなスイレンの池に面した「カフェ・ド・ジヴェルニー」

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まろやかなサツマイモのあんがおいしい「おいしぃぃぃ~と叫ぶ ムンクのどら焼きセット」(600円)

もちろん、おみやげ品も名画にちなんだユニークな品ばかり。

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ムンクの『叫び』をデザインした和三盆は1日50個の店頭限定販売

時代も空間も超えて、世界をかけめぐったような気持ちになれる美術館でした。原画を見たことのある作品は懐かしく思い出し、見たことのない作品は現地へ出かけて原画を見たくなります。

うず潮でもまれて育った天然の「鳴門鯛」を味わう

鳴門市で食事をするならぜひ訪れたいのが「味処 あらし」です。タイをはじめ、鳴門近海の鮮魚が比較的リーズナブルに堪能できると評判の店。開店と同時に地元の人たちが次々にやってきます。

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「あらし」ののれんが目印

お一人様でも家族連れでも食事がしやすいようにと、昼も夜もメニューは同じです。

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魚を使ったメニューがたくさん

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店内にいけすがある

おすすめは「天然鳴門鯛づくし膳」。「鳴門鯛」というブランド名が付けられた、鳴門海峡で一本釣りされた天然のタイを生きたまま仕入れ、注文と同時に店内のいけすから上げて調理します。

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タイの釜めしやあら汁がセットになった「天然鳴門鯛づくし膳」(3300円)

「潮の流れの速い鳴門海峡で育った鳴門鯛は身がしまって味わいも抜群です。天然鯛が取れたときはぜひ鯛づくしを味わっていただきたい」とおかみさん。

活(い)き造りがメインの「天然鳴門鯛刺身定食」も美味。秘伝のだしに鳴門産ワカメがたっぷり入った店の名物「わかめ汁」も付いています。

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「天然鳴門鯛刺身定食」(2100円)

【問い合わせ】
・大塚国際美術館
https://www.o-museum.or.jp/
・ 味処 あらし
http://www.arashi-naruto.co.jp/

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PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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