入社5年目のニース旅 宇賀なつみがつづる旅(3)
文: 宇賀なつみ

フリーアナウンサーの宇賀なつみさんは、じつは旅が大好き。見知らぬ街に身を置いて、移ろう心をありのままにつづる連載「わたしには旅をさせよ」をお届けします。今回は、入社5年目に行ったフランス・ニースの旅を振り返ります。道中、会いたくて仕方のなかった人とは?
(文・写真:宇賀なつみ)
「きっと大丈夫 ニース」
パリよりニースが好き。
パリも1度しか行ったことがないし、偉そうに語れるほど詳しくないが、着いた瞬間、そう直感した。
青い海と広い空。
海岸沿いにホテルやレストランが立ち並び、世界中から観光客が訪れるリゾート地。
この街の人たちは、とにかく肩の力が抜けていて、いつも楽しそう。
目が合えば笑顔で声をかけてくれる。
大好きなワインはリーズナブルでおいしいし、街並みもオシャレで心が弾んだ。
でも、一番気に入ったのは、風。
カラッとした気持ちの良い風が抜けていく。
肌が喜んで、浮かれているのがわかった。
気温は高いけど湿度は低く、雨は滅多に降らないし、降ったとしてもすぐにやんでしまう。
こんな、地中海性気候のような、カラッとしていて気持ちのいい女性になりたいと思った。
夜には3ユーロのワインとパン、チーズを買ってきて、ホテルのベランダで遅くまで飲んだ。
2013年秋。
私は2020年東京五輪が決定したというニュースを、この時に知った。
7年後か。34歳だ。私は何をやっているんだろう。
当時の私は、テレビ朝日に入社して5年目で、
どんなに忙しくても仕事が楽しくて、プライベートも充実させたくて、いつも次の予定に追われ急いでいた。
そんな私からしたら、34歳なんてあまりに遠くて、
仕事を続けているのか?結婚しているのか?子供はいるのか?全く想像ができなかった。
でも、不安は感じなかった。
目の前にいる、この街の人たちのように、自分の心がハッピーなら、余計なことは気にならないはずだから……。
きっと大丈夫。
正解なんて、自分で決めればいいんだから。
ニースの他に、モナコ、マントン、エズにも訪れた。
特にエズで泊まった、旧市街の高台に建つホテル、
シャトー・ドゥ・ラ・シェーブル・ドールは素晴らしかった。
1泊数千円の民宿も好きだが、たまには奮発して高級ホテルにも泊まれるようになったことがうれしい。
最後の夜、少しずつ色の変わる地中海を眺めながら、おしゃれをして、ホテル内のレストランでフレンチを食べた。
空がすっかり暗くなって海とつながった瞬間、人魚が昇っていくのが見えた(ような気がした)。
シャガール美術館で出会った絵がよほど印象的だったんだろうか。
彼はこの景色を眺めていたんだ!
答えあわせができたような気がした。
ちなみに、この旅の途中、なぜかずっと頭から離れなくて、会いたくて仕方ない人がいた。
ただの友達だと思っていたその人が、のちに夫になるという話は、またいつか、どこかで。