旅空子の日本列島「味」な旅

信玄の館と柳沢の城 歴史を刻む山峡の街 甲府市

周囲を高い山々に囲まれた山峡(やまかい)の国・山梨。その中央部に位置する甲府は戦国時代からの甲斐(かい)の府。江戸時代には5代将軍徳川綱吉の絶大な信頼を得た柳沢吉保による甲府城(舞鶴城)の城下町として発展し、近代以降も県の行政、経済、交通、文化の中心地だ。

甲府駅前にどかっと座す武将の座像は、言わずと知れた武田信玄公。今も県民から崇敬を集めている戦国の名将だ。その拠点は市街地北方の武田3代の居館の躑躅ケ崎(つつじがさき)の館で、跡地には1919年、信玄公をまつる武田神社が建てられた。

信玄の館と柳沢の城 歴史を刻む山峡の街 甲府市

JR甲府駅前に鎮座する名将・武田信玄公像

「風林火山」に象徴される強い軍団をつくり上げ、治水や新田開発など民政にも力を尽くした信玄公一色の山梨だが、今に残る甲府の骨格は綱吉の側用人として重用された柳沢吉保・吉里の親子2代によって整えられた。

その居城跡の甲府城は駅のすぐ東南。往時の石垣をはじめ、山手御門、稲荷櫓(やぐら)、稲荷曲輪(くるわ)門、鉄(くろがね)門などが復元、整備されている。天守台に立つと、甲府市街や甲府盆地がひらけ、天気のよい日は富士山も望める。春は桜の名所としてもにぎわう。

信玄の館と柳沢の城 歴史を刻む山峡の街 甲府市

見張り所や武器庫に使われた甲府城の稲荷櫓


信玄の館と柳沢の城 歴史を刻む山峡の街 甲府市

復元された鉄門

城跡の周辺には山梨に貢献した人やゆかりの人物を展示する山梨近代人物館(県庁別館)や、全国有数の生産量を誇る宝飾品の展示に加え職人の実演なども見られる山梨ジュエリーミュージアム、400年余の伝統の皮工芸品「甲州印伝」を展示する印傳(いんでん)博物館など立ち寄りたい場所がたくさんある。

信玄の館と柳沢の城 歴史を刻む山峡の街 甲府市

ゆかりの人物を紹介する山梨近代人物館

グルメやショッピングエリアは城跡の南側の紅梅通りや城東通り、銀座通りかいわいがおすすめだ。目をひくのが城東通りに面した風雅な店構えの澤田屋本店。青えんどう豆のあん玉を真っ黒な黒糖ようかんで包んだ「くろ玉」のおいしさは評判通り。他に甲州ぶどうを1粒ずつ白い砂糖衣でくるんだ松林軒豊嶋屋の「月の雫(しずく)」も、ぶどう王国の山梨ならではの名菓だろう。

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青えんどう豆と黒糖の甘さが絶品の銘菓「くろ玉」


信玄の館と柳沢の城 歴史を刻む山峡の街 甲府市

カリッとした食感の後に果汁がプチューと飛び出る果実菓「月の雫」

食事なら月並みだが、晩秋の今は生の太麺をみそ仕立ての汁でカボチャなどの野菜と煮込んだ「ほうとう」が格別においしい。駅前にはほうとうの名店小作や市民のソウルフード「鳥もつ煮」の元祖・奥藤本店もある。

信玄の館と柳沢の城 歴史を刻む山峡の街 甲府市

JR甲府駅前には「ほうとう」などグルメの店が並ぶ

さらに駅からバスで15分足らず、太宰治や松本清張も好んだという1200年前の古湯・湯村温泉を訪れれば、心も体も温まる。

市の西端、旧甲州街道沿いには「種をまく人」「落ち穂拾い、夏」などミレーの名画を多数収蔵する山梨県立美術館と、樋口一葉、飯田蛇笏、太宰治、深沢七郎など山梨ゆかりの文学者の原稿、書画、愛用品などを展示する山梨県立文学館もある。どちらも見応えたっぷりだ。

〈交通〉
・JR中央本線、JR身延線甲府駅下車
〈問い合わせ〉
・甲府市観光課 055-237-5702
・甲府市観光協会 055-226-6550

※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。

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PROFILE

中尾隆之

中尾隆之(なかお・たかゆき)ライター
高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。「風土47」でコラムを連載中。

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