クリックディープ旅

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

カナダの北極海を目指す、再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編の3回目。前回は、レンタカーでクロンダイク地方のゴールドラッシュの中心地だったドーソン・シティーまで来ました。今回は、約400キロ北上し、最初のガソリンスタンドがあるイーグル・プレインズへ向かいます。

前回、再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編2はこちら

(文:下川裕治、写真:阿部稔哉)

ドーソン・シティーからイーグル・プレインズへ

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

『12万円で世界を歩く』(1990年刊)。そのなかでカナダの北極海をめざしている。約30年後のいま、そのコースを辿(たど)ってみる。ホワイトホースでレンタカーを借りた。1日目はホワイトホースからドーソン・シティーまでの約532キロを走った。2日目は、イヌビクに向かう長い道のりが待っていた。デンプスター・ハイウェーをひたすら走ることになる。今回はその中間地点のイーグル・プレインズまでを紹介する。

今回の旅のデータ

ホワイトホースからドーソン・シティーの間は、1時間から2時間おきにガソリンスタンドがあるので問題はないが、デンプスター・ハイウェーに入ると一気に少なくなる。ドーソン・シティーから北上する場合、最初のガソリンスタンドはイーグル・プレインズ。距離は約400キロ。ガソリンは満タンにして出発すること。どのガソリンスタンドが営業しているかは、ドーソン・シティーのインフォメーションで教えてくれる。

長編動画

デンプスター・ハイウェーの入り口から1時間。この道は未舗装路だが、北極圏に入るまでの状態は悪くない。すれ違う車も少ない。

短編動画

途中、トゥームストーンマウンテンというキャンプサイトで朝食。平然としていますが、気温4度です。

ドーソン・シティーからイーグル・プレインズへ「旅のフォト物語」

Scene01

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

クロンダイク・ハイウェーとデンプスター・ハイウェーの分岐点。ここにガソリンスタンドがあるのだが……、営業していなかった。「あてにしない方がいい」とドーソン・シティーのインフォメーション・センターのスタッフは言っていた。給油ポイントが少ない道。「こういうことでいいのか」と文句をいいたくなる。帰路にも寄ったが、給油はできなかった。

Scene02

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

訪ねた時期、クロンダイク川周辺ではコバエが大発生。屋外に1分も立つとこうなる。刺しはしないが、顔に止まったり、耳のなかに飛び込んできたり……とかなり不快。約30年前、蚊の大発生地帯に入り、刺されまくって肌がぼこぼこになった体験が脳裏をよぎる。北極圏への道は、いつも虫との戦い?

Scene03

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

休業が多いガソリンスタンドの向かいに、デンプスター・ハイウェーの表示。ここから北極海への道がはじまる。無事に辿り着けることを祈って出発する。この道は、北極圏の村とドーソン・シティーを結んだ犬ぞりルートをなぞっている。道沿いの標識にも犬の顔。これからそういう道に入り込んでいくわけだ。

Scene04

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

デンプスター・ハイウェーがはじまった。急に未舗装路になる。対向車が通ると小石が飛んでくる。しかしこのあたりは路面が安定していて走りやすい。と、次の給油地点まで370キロの表示がでた。つい燃料計の針に目が動いてしまう。借りた車の燃料タンクの容量がもう少し多ければ……。

Scene05

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

早朝にドーソン・シティーを出発した。気温4度。途中の店で、温かいコーヒーでも飲もうと思っていたが甘かった。1軒の店もないのだ。開店していないという意味ではない。店がないのだ。しかたなく、トゥーンストーンマウンテンというキャンプサイトで朝食。寒い。近くでキャンパーがたき火に集まって朝食中だった。うらやましかった。

Scene06

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

馬のマークの看板が出てきた。ドーソン・シティーのインフォメーション・センターでもらったデンプスター・ハイウェーの案内にも馬のマークはない。乗馬ができる場所? 馬が横切る? 村がある? しかし56キロも先。ちょっと遠すぎない? これが北極圏ハイウェーの距離感覚なのだろうか。

Scene07

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

ユーコン川水系とマッケンジー川水系の分水嶺地帯にさしかかった。ユーコン川はベーリング海に、マッケンジー川はボーフォート海に流れる。それほど高い山が連なっているわけではなく、なにげなく通過した。と、そのとたん、風景が変わった。北極圏に近づいている? その眺めは次の写真から。

Scene08

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

目に飛び込んできたのは、沼のような湖だった。次から次に湖が現れる。流れ出るはっきりとした川はないが、ここがマッケンジー川の支流、ピール川の源流ということだろう。小さな沼は、北アルプスの頂上付近にある湖のようだった。緯度があがるにつれて変わる風景は、標高が高くなるにつれて変わる風景の変化に似ている。

Scene09

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

分水嶺地帯を通り過ぎると、のびやかな風景が広がりはじめた。湖も大きくなる。ユーコン川水系では見かけなかった湖沼地帯。この先、僕らは無数の湖に出合っていくことになる。ツンドラ地帯に近づいていくわけだ。やがて走る道もぬかるみはじめる。そのあたりの悪路は次回で。

Scene10

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

周辺は沼や湖が広がっているが道は乾いていた。しかし未舗装路の路面は少しずつ軟らかくなってきているのだろうか。車のスピードがあがらない。しかし道路脇のスピード制限は90キロ。日本の高速道路並みだ。車高が高く、タイヤが大きいピックアップトラックがときどき追い抜いていく。これが北極圏仕様ということか。

Scene11

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

分水嶺地帯から約1時間。突然、天候が崩れた。あっという間に、車は濃い霧に包まれてしまった。10メートル先も見えないほど。スピードはだせない。と、思っていると、さっと視界が開ける。霧が激しく流れている? その理由がわかるのは、イーグル・プレインズをすぎてからだった。次回の写真で。

Scene12

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

午後1時、イーグル・プレインズに着いた。約6時間、車で走り続けた。燃料計のメーターは最後の目盛りを少し割り込んでいた。危なかった。まずガソリンスタンドへ。ここは有人スタンド。ノズルを差し込むおじさんが頼もしく見えた。満タンに振れたメーターに「ほッ」。ガソリン代は54.3カナダドル、約5267円。

Scene13

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

イーグル・プレインズは村ではない。ホテルが1軒あるだけ。ホテル名が地名になった? ホテルの入り口には、「an oasis in the wilderness」。まさにオアシス。実感しました。僕らも車も。イヌビクの中間地点にこのガソリンスタンドがなければ、北極圏の道を走ることはできなかった。

Scene14

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

約30年前もイーグル・プレインズは僕らのオアシスだった。イヌビクからの帰路、日も落ちた頃に到着。しかしホテルは満室だった。頼むと、ロビーの床に寝ることを許してくれた。蚊が大発生し、ロビーにも入り込んで苦労した。夜中に何回か目を覚まし、この壁の写真を見ていた。かつてこの一帯を切り開いた男たち。当時と同じ写真が掲げてあった。

Scene15

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3

イーグル・プレインズ・ホテルのレストランで、やっとコーヒーにありつけた。レストランでは食べないという、自分に課したルールを破ってしまったが、温かい飲み物の誘惑に負けてしまった。サンドイッチとコーヒーで9.8カナダドル、約951円。約30年前は満室で床寝だった。それを避けようと、帰路の予約も入れた。ここはネット予約不可。

【次号予告】次回はイーグル・プレインズから、いよいよ北極圏に入り、イヌビクへ。

※取材期間:2019年9月13日
※価格等はすべて取材時のものです。

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BOOK

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編3
12万円で世界を歩くリターンズ
[赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編] (朝日文庫)

実質デビュー作の『12万円で世界を歩く』から30年。あの過酷な旅、再び!!
インドネシアで赤道越え、ヒマラヤのトレッキング、バスでアメリカ一周……80年代に1回12万円の予算でビンボー旅行に出かけ、『12万円で世界を歩く』で鮮烈デビューした著者が、同じルートに再び挑戦する。

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「12万円で世界を歩くリターンズ 【赤道・ヒマラヤ・アメリカ・バングラデシュ編】」 (朝日文庫)。

  • 阿部稔哉

    1965年岩手県生まれ。「週刊朝日」嘱託カメラマンを経てフリーランス。旅、人物、料理、など雑誌、新聞、広告等で幅広く活動中。最近は自らの頭皮で育毛剤を臨床試験中。

再び「12万円で世界を歩く」カナダ北極圏編2

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