太公望のわくわく 釣ってきました

房総半島ドライブで絶景をめでつつ、港からムツ狙い 

西へ東へ、海へ川へと旅して釣りする太公望たちの奮闘記です。魚との知恵比べ、釣った魚で一杯……。目的は人それぞれながら、闘いの後の心地よい疲労と旅情は格別。今回は、釣りをこよなく愛する校正・校閲者の石田知之さんが、房総半島をめぐるドライブで絶景を楽しみつつ、ムツを狙いました。(トップ写真は内浦湾に沈みゆく太陽)

いざ房総半島へ、車で

11月上旬の午後、漁港でムツを釣るべく車を房総半島へと走らせた。

ムツは深海に棲(す)む魚なのだが、幼魚のうちは浅場で過ごす生態を持っていて、晩秋には千葉県南部の漁港で20~25センチのものがよく釣れる。また、ほかの魚を食べる魚食性が強く、ルアーへの反応はすこぶる良好だ。

最初の目的地まではおよそ2時間。青空の下、太平洋を横目に見ながら進む車内では、カーラジオから流れるTUBEの「恋してムーチョ」が季節外れに陽気なサウンドを響かせていた。

房総半島ドライブで絶景をめでつつ、港からムツ狙い 

九十九里有料道路の終端に近い「一宮休憩所」では、護岸にのぼって太平洋を望むことができる

竿を出すも、反応無し 午後の勝浦

勝浦市の鵜原(うばら)港に着いたのは、午後3時半前。リアス式海岸の岬と岬の間に造られた鵜原港は、小さな漁港ながら釣り人のすぐ目の前まで断崖が迫っていて、この“こぢんまり”と“ダイナミック”のアンバランスが関東の港らしからぬ景観を生んでいる。

天気がいい秋の三連休とあって子供連れの釣り人も多く、岸壁にはぎっしりと竿(さお)が並ぶ。しかしどうやら魚はお留守のよう。一応は竿を出してみたものの反応に乏しく、周りも釣れていない。粘ってどうにかなるとは思えず、別の漁港に移動することにした。

房総半島ドライブで絶景をめでつつ、港からムツ狙い 

鵜原港。写真の右側に写る崖の上は「鵜原理想郷」という景勝地で、ハイキングコースが整備されている

外房黒潮ライン(国道128号)を鴨川市方面に西へと進む。千葉に“平坦”というイメージを持つ人は少なくないと思うが、それは北部の話で、南東部のこのあたりは山の際(きわ)と狭い平地を縫うようにアップダウンのある道路が敷かれている。道が下って視界が開けてきたら鴨川だ。

夕刻の鴨川でも成果得られず

鴨川市の天津(あまつ)港はとても広く、港内を移動するにも車が必要なほど。漁港の中央寄りにある突堤では、地元の釣り師とおぼしき年配の男性が、エサ釣りでヒイラギとセイゴ(スズキの幼魚)を釣り上げていた。

竿を出してみる。

雰囲気は悪くない。悪くないんだが、ルアーに魚がチェイスしてくるほどではなく、アタリも得られない。

房総半島ドライブで絶景をめでつつ、港からムツ狙い 

釣り人はまばらな天津港

早々に天津港もあきらめる。この時点で午後5時。もうすぐ暗くなるし、移動がてら夜釣りに備えて晩飯にしよう。

「房州らーめん」で舌鼓


外房黒潮ラインを今度は南下し、房総フラワーラインを経由して半島の南端を目指す。目的地である南房総市の「房州らーめん」は、天津港から1時間弱の場所にある。実は、ここで晩飯を食べることは家を出る前から決めていたのだ。

房総半島ドライブで絶景をめでつつ、港からムツ狙い 

楽しみにしていた「房州らーめん」に着く頃は真っ暗に

房総半島ドライブで絶景をめでつつ、港からムツ狙い 

房州らーめんで「房州はまぐりらーめん」をいただく。肉厚ぷりぷりなハマグリは贅沢(ぜいたく)な味わい

この日初めて釣れたムツ 南房総市

満腹になったところで房州らーめんから車で数分の乙浜(おとはま)港に移動し、夜釣りをスタート。突堤の常夜灯の下に陣取った。

海面をのぞいてみると、トウゴロウイワシなのかイナッコ(ボラの幼魚)なのか、10センチに満たない小魚が多数群れている。この小魚を食べようと、より大きな魚が寄ってきてもおかしくない。

この日、初めて感じる希望。

常夜灯が作る光と影の境目を通すようにハードルアーを引くと、海中から突き上げてくるように白い魚体がアタックしてきた。ハリをくわえるまでにはいたらず正体はわからなかったが、魚のやる気は上々だ。その意気や良し。さあ、遠慮せずかかってきなさい。

房総半島ドライブで絶景をめでつつ、港からムツ狙い 

夜の港は雰囲気がある

ルアーを沈める深さを変えたり、リールを速く巻いたり遅く巻いたりと試行錯誤。やがてゴゴゴッと明確なアタリがあり竿が曲がる。慎重に巻き上げてキャッチしたのは20センチほどのムツだ。ようやく今日の本命に巡り合えた。

房総半島ドライブで絶景をめでつつ、港からムツ狙い 

ムツ……だが、クロムツかもしれない。でもやっぱりムツかもしれない。ムツとクロムツの違いはごくわずか。釣り人が幼魚を見分けるのは難しく、両者をまとめて「ムツ」と呼んでいる

続けざまの一投で30センチ弱のセイゴもヒット。おやおやこれはずいぶんと調子がいいじゃないか――と思ったのも束の間、ここから沈黙してしまう。ちーん……。

房総半島ドライブで絶景をめでつつ、港からムツ狙い 

セイゴも釣れた

意を決して再度の移動

しばらく粘ったものの魚からレスポンスは無く、再びの移動を決意して白間津(しらまづ)港へと向かう。先ほど夕飯を食べた「房州らーめん」の近くだ。

白間津港の港内を見て回ると、船揚場に隣接する岩場の付近に魚影が見え隠れする。釣り座は岩場に決めたぞ。

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南房千倉大橋が白間津港をまたぐ

釣り座の周囲に乙浜港ほど強い常夜灯の光は無いが、深海性のムツは夜目が利くらしく、人間の目には真っ暗な場所でハードルアーをかなりの速度(1秒にリールを3回転とか)で早巻きしても、しっかり追いかけてきて食いつく。

房総半島ドライブで絶景をめでつつ、港からムツ狙い 

この日使ったハードルアー

白間津港に移動してきたのは正解だったようで、散発的ではあるものの飽きない程度にムツが釣れ続いた。なかには、足もとから1、2メートル程度離れたところの水面すれすれでルアーに襲いかかってくることもあり、目の前でぎらっと魚体が光るとともにルアーが海中に引き込まれる瞬間には、脳が名状しがたい高揚感に襲われる(これを釣り人は「脳汁(のうじる)が出る」と的確に表現する)。

興奮した頭をさますように空を見上げると、満天と言っていいほど星が瞬いていた。都心ではおよそ見られない星の量に、しばしの間、夜空をぐるりと見渡す。釣り座の正面には北斗七星も姿を現していた(下の写真では少なく見えるかもしれないが、肉眼では星が満ち満ちている)。

房総半島ドライブで絶景をめでつつ、港からムツ狙い 

一定年齢以上の“男子”なら、その名を聞くだけで血湧き肉躍る北斗七星。私の胸に七つの傷は無い

型が良かったムツを5匹キープし、納竿することにした。続けていればまだ釣れた気はするが、持ち帰って食べるつもりだったため、これだけあれば十分だ。

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この2日後に酢締めとなって私の胃袋に収まったムツたち

厳冬期にはさすがに釣りにくくなるムツも、12月なら釣りが成立する。総運転距離が300キロ超という長丁場から帰宅し、一日を共にした戦友(釣り道具)を洗ったあと、さっそくカレンダーを見つめながら次の釣りに向けて考えを巡らせるのだった。

PROFILE

  • 釣り大好きライター陣

    安田明彦、猪俣博史、西田健作、石田知之、木村俊一

  • 石田知之

    1976年生まれ、海無し県育ち。職業はフリーランスの校正・校閲。足場の良い漁港や地磯でライトな釣りをたしなむ。YouTubeで釣り動画を見るのが日課。

渓流の放流釣り場でニジマスとアマゴ釣り 大阪府島本町の水無瀬川

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雪辱のマダイ釣り タイラバでついにゲット 神奈川県横須賀市沖

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