にっぽんの逸品を訪ねて

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

山あいの小さな集落に誕生した農家レストラン「風和里(ふわり)」が人気をよんでいると聞いて、徳島県美馬(みま)市を訪れました。美馬市を含む「にし阿波」は傾斜地で暮らす独特の生活様式が2018年3月に世界農業遺産に認定され、注目されています。自然と暮らしが一体となった風景を眺めながら旬の野菜を味わう、都会ではできない体験が待っています!

連載「にっぽんの逸品を訪ねて」は、ライター・中元千恵子さんが日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介します。

“斜面で生きる知恵”がすごい! 「にし阿波の傾斜地農耕システム」とは?

農家レストラン「風和里」を訪れる前に知っておくと、旅が何倍も楽しめるのが、世界農業遺産に認定された「にし阿波の傾斜地農耕システム」です。

「にし阿波」とよばれるのは徳島県西部の美馬市、三好市、つるぎ町、東みよし町です。この地域には西日本第2の高峰、剣山(つるぎさん)がそびえ、名所といえば断崖に立つ小便小僧が印象的な祖谷渓(いやけい/いやだに)や渓谷にかかる祖谷のかずら橋など、山峡ならではの絶景が思い浮かびます。

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

絶景で名高い祖谷渓(いやけい/いやだに)。(画像提供:徳島県)


「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

祖谷の「かずら橋」は国指定重要有形民俗文化財(画像提供:徳島県)

「にし阿波」では、標高100メートルから900メートルまでの山間地区に200近くの集落が点在し、なかには斜度40度もの丘陵地に広がる集落もあるのだとか!

これらの集落では、平地を作って段々畑にするのではなく、独特の農具や農法で急斜面をそのまま農地として活用。知恵と工夫を凝らした独自の生活文化を築いてきました。

例えば、象徴的なのは、植物のカヤを活用する「コエグロ」。カヤ場で育てたカヤを刈り取ったあと、畑に積んで乾燥させ、細かく刻んで畑に入れます。すると、土壌の肥やしになるだけでなく、土砂の流出を防ぎ、雑草を抑え、冬の寒さや夏の暑さを和らげ、乾燥を防ぐ効果もあるそうです。

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

「にし阿波」の傾斜地に広がる落合集落(画像提供:徳島県)

傾斜地農耕が400年以上も続いたことで、雑穀文化や在来作物の生産など、伝統の生活も受け継がれてきました。「にし阿波の傾斜地農耕システム」は、将来、世界が直面する食糧難や生態系破壊などの問題解決につながると評価されているそうです。

山上の小さな集落に平日でも人がたくさん! 農家レストラン「風和里」でランチ

「風和里」があるのは、美馬市街からカーブが続く山道を上った渕名(ふちみょう)集落。世界農業遺産に認定された集落の一つです。

あたりは日本の原風景とよびたくなるのどかな風景。青い空と緑の山並み。山の斜面に張り付くように民家が立ち、田畑が広がっています。

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

周囲の山並みも目の高さに見えます

渕名集落は、住人の多くが70代から80代の高齢者。過疎化も進む、いわゆる限界集落ですが、オーナーの小泉靖雄さんが集落を活性化したいと農家レストランを思いつき、2017年7月に「風和里」をオープン。今では、平日でも県内外から食事客が訪れる人気店になりました。

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

農家レストラン「風和里」

料理は、もちろん地元でとれた旬の野菜が主役です。おすすめは「風和里定食」(1300円)。この日は、メイン、副菜3種、サラダ、特別小鉢、ご飯、汁物、漬物がセットになっていました。メインのおかずは2種類から選べて、この日は「野菜とエビの天ぷら」か「豆腐ハンバーグ」。

天ぷらはインゲン、玉ネギ、サツマイモ、シイタケなど。キクイモというめずらしい野菜も味わえました。

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

天ぷらをメインにしたこの日の「風和里定食」

副菜もサラダも野菜がたっぷり。ハヤトウリの酢の物やコマツナの煮びたし、カブの漬物など、調理方法も一つひとつ違っているので、次から次へとはしが進みます。

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

野菜をさまざまな調理法で味わえます

ひと口食べて、笑みがこぼれるほどのおいしさだったのが「里芋のしんじょう風」。なめらかなサトイモを品のいいあんが包み、細かく刻んだレンコンやエビの食感も楽しめます。深い味わいで、ほっこりと幸せになる一品です。

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

「里芋のしんじょう風」

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

メインを豆腐ハンバーグにした「風和里定食」。お茶も地元産です

渕名集落では各家庭が茶畑をもち、「風和里」で出されるお茶も地元のもの。お湯も湧き水を使用しています。料理には季節の野菜を使うので、日によって内容が変わり、何回訪れても楽しめます。

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

オーナーの小泉さんはじめ、地元の方たちで運営しています

店内は、テーブル席やカウンター、座敷、そしてテラス席があります。窓に広がる山の風景を眺め、やさしい味付けの料理を食べていると、ほっと心が和んでいきます。忘れていた何かを思い出す、そんな時間になりました。

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

テラス席は屋根や暖房も完備

【問い合わせ】
・にし阿波
https://nishi-awa.jp/

・農家レストラン「風和里」
https://www.facebook.com/huwari.noukarestaurant/

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PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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