楽園ビーチ探訪

『もののけ姫』の森の雰囲気 不思議だらけの隠岐諸島

島根県の隠岐諸島は、島根半島の北40~80キロにわたって点在するおよそ180の島々からなります。そのうち、人が暮らしているのは4島。「島前(どうぜん)」というエリアに西ノ島、中ノ島、知夫里島、そして「島後(どうご)」という諸島最大の島に人口の多くが集中し、空港もあります。ちなみに、島後は全体が「隠岐の島町」という地名ですが、「隠岐の島」という島はありません。

(トップ写真:隠岐神社を夜参拝する「夜の隠岐神社まいり」の様子)

連載「楽園ビーチ探訪」は、リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信するビーチライターの古関千恵子さんが訪れた、世界各地の美しいビーチや、海のある街や島を紹介いたします。

地球の活動とともに変化してきた隠岐諸島

隠岐諸島

かつてはユーラシア大陸の一部だった隠岐諸島。火山活動や氷河期、温暖化による海面上昇などを経て今の姿に

2億5000万年前もの遠い昔、隠岐諸島はユーラシア大陸の一部でした。その後、火山活動によって大陸からの分離が始まり、氷河期で本土と一度地続きになり、温暖化による海面上昇で再び離島になる……など、地球の大イベントをくぐり抜けるなかで形態を変えながら、約1万年前に現在の姿に落ち着きました。こうした本土とくっついたり、離れたりの繰り返しによって、独自の生態系や人々の暮らしぶりが育まれてきました。

そんな島々の成り立ちや、北海道の植物と沖縄の植物が同じ場所に生きているといった不思議な生態系、夜通し行われる「隠岐古典相撲」といった独特の文化が密につながった隠岐諸島は、2013年にユネスコ世界ジオパークに認定されました。

ジオパークの見どころ

通天橋

巨岩の真ん中が海蝕(かいしょく)作用によって削られ、アーチ状になった通天橋

ジオパークのハイライトは、西ノ島の「国賀海岸」でしょう。落差257メートルの断崖絶壁「摩天崖(まてんがい)」や岩の巨大アーチ「通天橋」といったジオサイト(ジオパーク内での見どころ)、洞窟「明暗(あけくれ)の岩屋」など、約13キロにわたる海岸線にポイントが点在しています。

明暗の岩屋

明暗の岩屋

国賀海岸は眺め方によって表情も変わります。「国賀めぐり定期観光船」は海から断崖絶壁を満喫するスタイル。海から見上げた摩天崖の迫力は、あんぐりと口が開いてしまうほど。波や風によって浸食された奇岩群は、どこか神秘的な感じも受けます。

摩天崖

日本屈指の落差を誇る断崖絶壁の摩天崖

そして、断崖にぽかりと開いた明暗の岩屋は、船でないと中へ入ることができません。さらに船であっても海の状態が整わないと入れないため、もし運良く通り抜けることができたら、金運アップ! とも言われています。海から眺めるジオパークは、荒々しい岩肌と大海原のダイナミックな自然美に圧倒されます。

国賀海岸の天空ウォーキング

摩天崖から海へと続く約2.3キロのハイキングコースを歩く、国賀海岸の天空ウォーキング

また、摩天崖の断崖の頂上から海へと下りていく国賀海岸をガイドと歩く「天空ウォーキング」はハイキングコースを歩きながら、国賀海岸の風景を楽しみます。牛や馬がのんびりと草を食(は)む草原の中の道を歩けば、右手には国賀海岸、左手には知夫里島や中ノ島が浮かぶ「島前カルデラ」の景色が広がります。

草を食む馬

牧歌的な風景が広がる

歩みを進めるスピードに合わせてゆっくりと牧歌的な風景が変化していきます。海まで下りれば、通天橋の内側にある穏やかな入り江で水遊びをすることもできます。天空ウォーキングでは高い位置から、島々の成り立ちがパノラマビューで見てとれるのが興味深いところ。

ここは異世界……?

隠岐諸島は海の絶景のみならず、陸の見どころもインパクト大。まるで異世界のような、神秘的な体験ができます。

『もののけ姫』の森の雰囲気 不思議だらけの隠岐諸島

精霊の住み家のような、岩倉の乳房杉。車で簡単にアクセスできます

島後の「岩倉の乳房杉(ちちすぎ)」は、樹齢およそ800年の巨木です。樹高はおよそ30メートル、幹の周囲はおよそ11メートルで、主幹から分かれた15本の太い枝から、24もの乳房状のコブ(根)が垂れ下がっています。まるで映画『もののけ姫』の森に迷い込んでしまったようなスピリチュアルな雰囲気。こんな不思議な木は山奥に行かなくてはお目にかかれないのかと思いきや、道路脇なので車で気軽に見に行くことができます。

遠流の地

島前の中ノ島は、古くから遠流(おんる)の地に定められ、天皇や公家、役人などの政治犯たちが中央から追いやられていました。流刑とはいえ雅な都人たちは、神楽や祭、料理など、都の暮らしを島に伝えたため、独自の文化が育まれました。

中ノ島の隠岐神社は、後鳥羽天皇を御祭神として1939(昭和14)年に創建されました。上皇になってから承久の乱に敗れてここに流されましたが、島の人々には今でも「ごとばんさん」と呼ばれるほど、親しみ深い存在です。

夜の隠岐神社まいり

「夜の隠岐神社まいり」の夜祈願では神主さまから祝詞(のりと)をあげてもらい、お神酒をいただき、米を袋に入れて持ち帰ることができます(©海士町観光協会)

この神社に夜に参拝へ訪れる「夜の隠岐神社まいり」は、昼間とは違う厳粛な趣を感じます。深い宵闇の中、神主さまの後に続くと、竹灯籠(たけとうろう)の明かりに導かれた参道と、その先に浮かび上がる拝殿。見上げれば、森の上にきらめく星たち。心洗われる体験です。参拝方法は2種類あり、願い事があるならば、「隠岐神社の夜祈願」コースを選びましょう。神主さまに祝詞をあげてもらい、お守りをいただけます。もう一つの「島ガイドと歩く夜の隠岐神社」は、神社のスタッフが境内を案内してくれる気軽なコースとなっています。

【取材協力】
島根県

観光情報は「しまね観光ナビ」へ

PROFILE

古関千恵子

ビーチライター。リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰りかえすこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。ブログも配信中。

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