にっぽんの逸品を訪ねて

うだつの町並み、藍染め&和三盆 徳島の風土を感じる名産品の手作り体験

その土地が育んだ特産品に出あえるのは旅の楽しみの一つですね。そこで、今回は徳島県を代表する名産品の「藍染め」と「阿波和三盆糖」の干菓子作りを体験。藍で栄えた美馬市脇町(わきまち)には「うだつの町並み」が残り、阿波市の和三盆専門店「わんさんぼん」の周りにはサトウキビ畑が広がっています。風土を感じながらの体験は、旅ならではのひと時。日常を離れて夢中になれる時間を過ごしてみませんか?

(トップ写真は藍で栄えた脇町に残る「うだつの町並み」=徳島県提供)

連載「にっぽんの逸品を訪ねて」は、ライター・中元千恵子さんが日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介します。

極上の阿波和三盆糖を使い、コーヒー味など現代風の干菓子も販売する「わんさんぼん」

うだつの町並み、藍染め&和三盆 徳島の風土を感じる名産品の手作り体験

和三盆糖の干菓子作りが体験できます

「ふわっ」と溶ける食感と上品な甘さ、愛らしい形。和三盆糖の干菓子が買えて、しかも手作り体験ができるのは、阿波市にある和三盆専門店「わんさんぼん」です。この店は、1864(元治元)年創業の阿波和三盆糖の製造元「服部製糖所」の敷地内にあります。

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和三盆専門店「わんさんぼん」

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「服部製糖所」の敷地内にあります

目の前には、「竹糖(ちくとう)」とよばれる在来品種のサトウキビの畑が広がっていました。和三盆糖は、この竹糖を原料に、四国東部で伝統的な製法で作る国内産の貴重な砂糖のこと。なかでも徳島県で生産したものを阿波和三盆糖とよびます。阿讃山脈の南向きの山麓(さんろく)は竹糖の栽培に適し、阿波和三盆糖は200年以上前から作られてきました。

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この日は収穫前の竹糖が見られました

「竹糖は沖縄などで栽培されるサトウキビと比べて細くて小さいため、収穫量が少なく、同じ量の砂糖を作るには手間がかかります」と、説明してくださったのは服部製糖所の服部瑞輝(みずき)さん。「収穫した竹糖を粉砕し、汁をしぼって煮つめると白下糖(しろしたとう)ができます。そこから糖蜜を取り出して和三盆糖を作ります」とのこと。服部製糖所では、阿波和三盆糖の本来の味を大切にしたいと、つなぎとなるものや食品添加物は使わず、商品を生産しているそうです。

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服部製糖所を受け継ぐ兄の瑞輝さん(左)と弟の滉輝(こうき)さん兄弟

「わんさんぼん」の店頭には、服部製糖所の和三盆糖で作った干菓子が並んでいました。県特産の藍を混ぜたものやコーヒー味、肉球やスニーカーの形をしたものなど、ユニークな品もたくさんあります。

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伝統的な形に加え、現代風の干菓子も販売

和三盆糖のみを使うぜいたくな干菓子作り。ウサギや雪の結晶、タケノコなど木型も多彩

干菓子作り体験(要予約、1人2200円)は、約30種類の木型から好きなものを二つ選んで行います。なかには、指導をしてくれた服部滉輝(こうき)さんでさえ、一度も成功したことのない難しい型もあるのだとか。挑戦してみるのも楽しいですね。

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店内にはたくさんの木型が

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手作り体験の担当は滉輝さん

わずかな水を混ぜてしっとりとさせた和三盆糖を、二つ割りの菓子木型に入れてぎゅっと押していきます。

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和三盆糖を型に入れていきます

型の上部を傾けながら持ち上げ、ヘラで軽くたたくと……「スッ」と抜ける感じで美しい干菓子が現れました。「できた!」「きれい」と、周りの参加者からも歓声が上がります。

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ヘラでコンコンとたたくと

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きれいに抜けました

最初に配られた和三盆糖を使いきるまで、何回も干菓子が作れます。その場で食べることも、箱に入れて持ち帰ることもできます。オリジナルのおみやげができました。

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持ち帰りもできます

阿波藍の繁栄を物語る「うだつ」を上げた商家の町並みが残る美馬市脇町


藍染めの青色は、日本を代表する色の一つですが、この藍染めのもととなる染料「すくも」の全国シェアの大半を占めているのが徳島県です。徳島で作るすくもを「阿波藍」とよびます。美馬市の脇町には、かつての藍商人の屋敷などが連なる「うだつの町並み」が残り、繁栄の歴史を伝えています。

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思わずカメラを向けてしまう美しい町並みです

脇町は古くから街道が交わる交通の要所であり、脇城の城下町として発展してきました。「江戸時代に徳島藩が阿波藍の生産を奨励すると、吉野川が作り出す肥沃(ひよく)な土地を生かした藍の一大生産地として、また吉野川の舟運(しゅううん)を利用した藍の集散地として大いに栄えました」とガイドさんが説明してくれます。脇町の町歩きは、ボランティアガイドさんを頼むとよりいっそう楽しめます。

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ガイドさんの説明があるとより理解が深まります

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各家の梁(はり)上に豪華な「うだつ」が見られます

約430メートル続く通りには、江戸時代から明治、大正、昭和にかけて建てた、梁上に短柱の防火壁「うだつ」を上げた商家が並んでいます。鬼瓦や虫籠窓(むしこまど)、出格子など、うだつ以外にも凝った意匠が目を引きます。

「大屋根が下に向かって丸みを帯びているのは、『商売人は常に頭を下げる』ということを表しています」とガイドさん。重厚な中に商人町らしい明るさを感じる見ごたえのある町並みです。

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虫籠窓や丸みのある屋根で町並みがやわらかな印象に

デザインも色の濃さも自由に。大人も子どもも夢中になれる藍染め体験

町並みの一角にある美馬市観光交流センター内の「藍染め工房」では、阿波藍のすくもを使った藍染め体験(要予約、1回1200円~)ができます。

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美馬市観光交流センター

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この日は原料のタデアイが見られました

まずは藍染めの方法について学びました。

藍染めはタデアイという植物を収穫して3カ月ほど寝かせ、発酵させて「すくも」を作ります。この「すくも」を水や石灰、酒、灰汁(あく)などと藍甕(がめ)というかめに入れ、攪拌(かくはん)して発酵させることで藍染め液ができます。染め液を作る工程を「藍建て」というそうです。

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スタッフの方が詳しく説明してくれます。右手前が藍甕(がめ)

この日はハンカチの藍染めに挑戦。できあがりの柄(がら)を想像し、白っぽく残したいところをビー玉や輪ゴムを使ってしばります。手で握っただけでも模様になるそう。大人はもちろん、子どもも夢中になりそうな体験です。

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くしゃくしゃと手で丸めただけでも素敵な模様になります

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時間を忘れて夢中になりました

しばったハンカチを藍甕の中に静かに入れて1~2分ひたし、上げたら液をしぼって酸素にあてます。これを何回か繰り返す途中、しばった部分の一部をほどくと、少し濃さの違った青色になります。

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水洗いをすると鮮やかな模様が

水洗いをすると、鮮やかな模様が現れて感激。人それぞれ、まったく違ったデザインになるのも魅力です。できあがったハンカチは自然でやさしい色合い。徳島の旅の良い記念になりました。

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さまざまなデザインができました

【問い合わせ】
・和三盆専門店「わんさんぼん」
https://wansanbon.theshop.jp/

・服部製糖所
https://www.awawasanbon.com/

・美馬観光ビューロー(うだつの町並み)
https://www.mimakankou.com

・美馬市観光交流センター(藍染め工房)
www.city.mima.lg.jp/kankou/kankouannai/miru/kouryu-center.html

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PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

「ふわり」という名の農家レストラン 世界農業遺産で注目の「にし阿波」

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