あの街の素顔

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[前編]

ここ数年、新潟で若者たちが始めたお店のウワサを耳にするようになった。一つは、東京で人気のコーヒースタンドを経て独立した、注目のコーヒーストアだ。昔ながらの風情が残される新潟市で名産のお米でも地酒でも魚でもなく、自分たちのスタイルでお店をスタートさせた彼らを通じて、新しい風が吹き込む今の新潟をすこしだけのぞいてみた。

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(写真・文 = 草深早希)

「dAb COFFEE STORE」で日々のコーヒーを

新潟に降り立って早々、頰にあたる冷たい空気と自分の吐く息の白さに日本海沿岸部ならではの気候が身にしみる。そんな道のりを駅から西へ歩くこと約10分。大通り沿いに広がる水島町の住宅街の一角に、この街に溶け込むような1軒のコーヒー屋さんがたたずんでいる。

新潟市「dAb COFFEE STORE」外観

「dAb COFFEE STORE(ダブコーヒーストア)」は、高品質のコーヒー豆にこだわったスペシャリティーコーヒーをゆっくり味わえる場所として、店主の小林大地さんと妻・玲子さんが2018年12月にオープン。もともと、濱田大介さん率いる東京・代々木八幡の人気店「Little Nap COFFEE STAND(リトルナップ コーヒースタンド)」のコーヒーが好きで、実際にお店で4年間バリスタの経験を積んできた大地さんは、2年前に地元・新潟市へ戻ることを決意。

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[前編]

手前が店主でバリスタの小林大地さん、奥がペストリーを作る妻の玲子さん

「自分のお店をやるんだったら地元がいいってずっと思っていたんです」と大地さん。ちょうどいい広さの物件を見つけるのに半年以上、DIYで壁を塗り始めてから、完成までにかけた時間は全部で1年ほど。コーヒー屋さんでありながら、“自分の遊び場のような自由な場所を作りたい”という思いをそのままカタチにしたような愛着のわくお店ができあがった。

新潟市「dAb COFFEE STORE」店内

ここで提供されるコーヒーは基本、東京・富ケ谷にある先述の系列店「Little Nap COFFEE ROASTERS」で焙煎(ばいせん)されたコーヒー豆を使用。カフェラテやカプチーノ、エスプレッソ、マキアートなどコーヒーを十分楽しめるメニューの中で、特にドリップコーヒーは、大地さんが1杯ずつハンドドリップで丁寧にいれる。そんな至福の1杯を、レコードプレーヤーから心地よい音楽が流れる空間でゆっくりと味わえるのだ。

「Little Nap COFFEE STAND」のコーヒー豆
「dAb COFFEE STORE(ダブコーヒーストア)」

ドリップコーヒーに使われる豆は、週1回届く「Little Nap COFFEE STAND」の中深煎りのブラジルとグアテマラ、中浅煎りのコロンビアとエチオピアの4種類、半年前から不定期で取り扱いを始めた京都「STYLE COFFEE」の浅煎りの2種類、シングルオリジンだけであるときは6種類もそろう豊富なラインナップ。どれにしようか迷ったら、たわいないコミュニケーションを通じてその時の気分に合うコーヒー豆の香りや味わいなどを気さくに教えてくれるのもこのお店のいいところ。

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[前編]

ドリップコーヒーのエチオピア(470円)は、華やかで果実感があり、毎日でも飲めるバランスの取れた味わい。「浅煎りのコーヒーは本当にコーヒーが好きな人しか好んで飲まないと思うんですけど、そういったコーヒーの魅力をこれから伝えていきたいですね」

入り口すぐのカウンターのショーケースには、タルトやスコーン、クッキー、アップルパイ、バナナブレッドなど手作りのペストリーがずらりと並ぶ。「いつも自分の好きな味で作っています」と話す玲子さんは、実は松島大介さん率いる東京・幡ヶ谷の人気店「PADDLERS COFFEE(パドラーズコーヒー)」出身。訪れた日はカヌレやタルトを仕込んでいたように日々お店で丁寧に焼き上げるペストリーを、ぜひコーヒーとともに味わってもらいたい。

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[前編]

寒い時季にぴったりのクリーミーなカフェラテ(ホット500円)には、ラムがほんのり香るカヌレ(350円)を

もともと水島町は、昔からこの地域に住んでいるご高齢の方が多いエリアなんだとか。大地さんは、「よく、『こんな格好でお店に来てごめんね』って言われるんですけど、別にうちのお店は特別な場所じゃないんですよ(笑)。気楽に使ってもらえることのほうがうれしいので、近所のおじいちゃん、おばあちゃんにも気軽に立ち寄ってもらいたいですね。イベントをはじめ、地元の人たちと一緒に何かをやるっていうことにこれから取り組んでいきたいです」。

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[前編]

お店の奥は、テーブル席が二つある広々とした開放的なスペース。これまでに、アパレルウェアのポップアップショップやワークショップ、音楽ライブ、アーティストの作品展などさまざまなイベントを不定期で開催。イベントのたび、地域住民の集いの場に

dAb COFFEE STORE
https://www.instagram.com/dabcoffeestore/

大地さんに聞く、新潟市内でおすすめのお店とは?

そんな大地さんに、ここ新潟市内でおすすめのお店を教えてもらった。それは、新潟市で知る人ぞ知る1973年創業の名喫茶「シャモニー上大川前本店」だ。新潟市内で4店舗展開する「シャモニー」の上大川前本店では、世界各国から厳選したコーヒー豆の個性を生かしながら自家焙煎。創業から変わらないサイホン式コーヒーをレトロな空間で味わえるのが魅力。

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[前編]

「シャモニー上大川前本店」の赤いベルベットが昔懐かしいソファ席。コーヒーのほかに朝7時〜のモーニングも好評

後編]は、長屋を生かした、新生「沼垂(ぬったり)テラス商店街」へ。

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 草深早希

    編集者・ライター。1983年東京生まれ。2005年よりキャリアをスタートし、カルチャー誌『TOKION』、ライフスタイル誌『ecocolo』、ファッション誌『菊池亜希子ムック マッシュ』などの編集を経てフリーランス。現在は、広告の編集から音楽や映画などの文化系の執筆まで、ジャンルを問わず活動中。好きなものは、おいしいごはん。

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