あの街の素顔

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[後編]

新潟市内に新風を吹かせる、“新たな食”をめぐる旅。[前編]では「dAb COFFEE STORE」を訪れたけれど、[後編]では新旧が交錯する「沼垂(ぬったり)テラス商店街」で2019年夏にオープンしたばかりの「mountain△grocery(マウンテン△グローサリー)」へ。ここでは、雪国・新潟のたくましい自然が育む地場野菜と作る人の個性が生きた、スタイルのある料理に出あうことができた。

(写真・文 = 草深早希)

長屋を生かした、新生「沼垂テラス商店街」

新潟駅から歩くこと約20分。信濃川河口近くに広がる「沼垂テラス商店街(以下、沼垂テラス)」は、元港町の沼垂で「沼垂市場」としてかつてにぎわっていた長屋を改装し、2015年春に再スタートを切った新潟市内で注目されるスポット。実は2010年ごろから少しずつお店のオープンが始まり、今では、居酒屋やカフェ、ダイニングのほかに、雑貨店や古書店、ギャラリー、そしてコワーキングスペースなども含めて約30店舗が所属する立派な商店街に成長した。

「沼垂テラス商店街」

地場食材で伝えるビーガンフード「mountain△grocery」

そんな「沼垂テラス」に、東京を拠点に「VEGEしょくどう」という屋号でケータリングやイベント出店、雑誌で料理のスタイリングなどをしてきた料理家yoyo.さん初めての実店舗となるカフェ「mountain△grocery」が2019年8月にオープン。yoyo.さんは、実家のある東京で育ち、パリへ5年間留学。帰国後、東京のアパレルブランドでの経験を経て、屋号に「VEGEしょくどう」を掲げるきっかけとなる菜食主義の南インド料理と出あうことに。

「mountain△grocery(マウンテン△グローサリー)」外観

もともと家族のルーツが新潟にあるyoyo.さんは、開口一番に「新潟市が好き」と屈託ない笑顔でひと言。もし自分のお店を持つなら新潟市がいいと思っていた矢先、タイミングよく出店につながる縁が舞い込んできたんだとか。yoyo.さんは、「もちろん東京は友人がいっぱいいるし、東京でお店を始めたら一番いい気がするんですけど、自分自身が自然のない場所にずっといられないタイプで……。田舎でも都会でもなく、ほどよい新潟市は、はじめてお店を持つのにはちょうどいい場所だと思いました」。

「mountain△grocery」のメニュー

今のところランチ営業のみの「mountain△grocery」では、新潟市近郊で収穫された季節の野菜をふんだんに使った「ファラフェルサンドプレート」を提供。ファラフェルとは、潰したひよこ豆やそら豆にスパイスを混ぜ合わせたコロッケで、ピタと呼ばれるパンに挟んで食べる中東のビーガンフードのこと。そんなファラフェルと一緒にピタに挟み込むメニューは、新潟市のオーガニックマーケット「おひさま日曜市」を主宰する「自然栽培研究会」に所属した市内の生産者と、市内の農家が手売りする昔ながらの「山ノ下市場」の野菜を使うという徹底したこだわりようだ。

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[後編]

季節の「ファラフェルサンドプレート」(スープ、ピタパンつき1,200円)。この日は、プレート左からファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)、ビーツのフムス、「越の丸茄子(ナス)」マリネ、ニンジンと「焼山しいたけ」のクミンソテー、「芋のバクラヴァ風」、紫キャベツとカブと菊の花のピクルス、豆乳チーズのソース。好きなものをギュッとピタに詰め込み、両手でしっかりサンドしたまま頰張る絶品メニュー

さらにこだわりは野菜だけでなく、野菜を詰め込むピタパンも自家製というから驚く。国産の小麦粉と市内の「宮尾農園」で自然栽培される米粉をブレンドし、有機レーズンで起こした自家製酵母によって発酵させるピタパンは、毎朝一枚いちまい焼き上げる。それだけ丁寧に作られているからこそ、ピタパンにありがちな小麦の臭みが一切なく、舌触りがなめらかでモチモチの食感を味わえるのだ。

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[後編]

この日のビーガンケーキは、「人参(ニンジン)とバナナのケーキ ナッツフロスティング添え」(350円)。生地に使われた濃厚なバナナと、カシューナッツのフロスティングが予想以上になめらかで、これがビーガンフードであることを忘れさせる一品。ブレンドコーヒー(400円)は、新潟のロースター「HOSHINO koffee & Labo.(ホシノコーヒーアンドラボ)」のもので、深煎りでまろやかな味わい

基本お店ではビーガンメニューを提供しているが、不定期で営業する外部出店では、地元で獲れるイノシシを使った料理を提供することも。食材に恵まれた新潟で提供するメニューをありのままに決める、そんな食の神髄を「同じものを食べたとしても、その土地のものをその土地で食べるのが絶対においしいと思うんです」と、yoyo.さんらしい言葉で語ってくれた。

mountain△grocery
https://www.instagram.com/vegeshokudo/

yoyo.さんに聞く、「沼垂テラス」でおすすめのお店とは?

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[後編]

「mountain△grocery」の店主でシェフのyoyo.さん

そんなyoyo.さんに、ここ「沼垂テラス」でおすすめのお店を教えてもらった。それは、商店街から歩いて2~3分のところにある「沼垂テラス」初のサテライト店で、時計店の跡地を引き継いだ写真専門の書店「BOOKS f3(ブックス エフサン)」。新刊・古書の写真集を独自の審美眼でセレクトしているだけでなく、定期的に写真家による作品展示やイベントなども積極的に開催する、新潟市内でもエッジの利いたお店なんだとか。

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[後編]

「BOOKS f3」には、さまざまなジャンルにわたり、センスの良さを感じる写真集が所狭しと並んでいる。店内ではドリンクも販売

そして最後に、もし時間に余裕があれば、「沼垂テラス」で1965年から営業を続ける名酒場「大佐渡たむら」で〆の一杯を。毎朝、新潟市内の市場へ足を運び、店主自らの目利きで厳選した旬の魚介と季節の野菜を使った小皿料理とおいしい地酒をリーズナブルに提供。新潟ならではの食の醍醐(だいご)味をぜいたくなまでに楽しめる場所だ。

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[後編]

つい長居したくなる「大佐渡たむら」のカウンター。鮮魚の刺し身はもちろん、「dAb COFFEE STORE」小林さんも「mountain△grocery」yoyo.さんも太鼓判の「鰤(ブリ)しゃぶ」がこの時季のおすすめ。人気なのでブリがなくなってしまうことも

[前編]はこちら

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 草深早希

    編集者・ライター。1983年東京生まれ。2005年よりキャリアをスタートし、カルチャー誌『TOKION』、ライフスタイル誌『ecocolo』、ファッション誌『菊池亜希子ムック マッシュ』などの編集を経てフリーランス。現在は、広告の編集から音楽や映画などの文化系の執筆まで、ジャンルを問わず活動中。好きなものは、おいしいごはん。

新潟市内、“新たな食”をめぐる旅[前編]

一覧へ戻る

ドイツ屈指の観光地ポツダム プロイセン王国の宮廷文化を知る史跡7選

RECOMMENDおすすめの記事